とがった美しさ、現代アートのような写真表現 大和田良さん

写真

 もともと中学や高校では、髪の毛をツンツンに逆立て、バンドを組んで音楽活動を行っていた、大和田良さん。大学進学を機に上京した当初は「写真家になりたい」というはっきりした目標があったわけでなかった。

 上京直前にフィルムカメラを買い、まずは日常の中で「美しい」と感じた瞬間を探すことからはじめた。当時、2000年代の中ごろはちょうど、フィルムからデジタルへとカメラの技術が移行していく転換期だった。フィルムをスキャンし、パソコン上でデジタル加工した作品をつくるようになったのは、大学の授業でシュルレアリスムや近現代の美術史を学んだことがきっかけ。「写真で、現代アートのような新しい表現ができないか」と考えるようになり、風景写真を万華鏡のようにデジタル加工した作品「World of ROUND」を制作した。

 同作品はヨーロッパで評価され、2005年にはスイスのエリゼ美術館主催「reGeneration」展で、21世紀初頭を牽引(けんいん)する50人の写真家に選ばれることになった。自身の原点として出版した写真集「prism」(青幻舎・07年)には、大学時代から撮影した何げない日常スナップに加え、「World of ROUND」が掲載されている。スナップにしろ、デジタル処理を施した作品を制作するにしろ、心掛けているのは自分なりの「美意識」と、写真ならではの「偶然性」やその瞬間との「出会い」といった要素を一枚に込めることだ。

 11年に出版した写真集「FORM」(深水社)は、金びょうぶを背景に盆栽を撮影した作品シリーズ。“日本が誇る美=盆栽”を、写真という表現を通して、海外の現代アート市場でも通用する作品に仕上げた。撮影を行う際にはテーマ選びや文化的な背景に関して、徹底したリサーチを常に欠かさない。ただ、「どれだけ計算し尽くしたとしても、計算できない”何か”が写るのが、写真の魅力なんです」と大和田さんは語る。

 18年の9月には、湿板写真(ガラス板を使用したレトロな撮影手法)の写真展をB GALLERY(新宿・BEAMS JAPAN 6F)で企画しているほか、ここ3~4年は東京都内のライブハウスを撮影するシリーズに取り組んでいるという。明確なコンセプトと、とがった美しさを感じる作品たち。「写真でしかできないこと」は何か。ひたむきな挑戦を続ける大和田良のこれからに注目したい。

(文・山田敦士)

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    PROFILE

    大和田良

    東京工芸大学大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイス・エリゼ美術館による「reGeneration: 50 photographers of tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。
    http://www.ryoohwada.com/



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