京都古文化特集

長建寺ルポ 水運の地・中書島で信仰されてきた弁財天

  • 文 渡部せつ子(フリーライター)
  • 2013年4月15日

写真:長建寺にて=撮影・小林勝彦長建寺にて=撮影・小林勝彦

〈2013年(平成25年)の、春の京都非公開文化財特別公開は終了しました。新しい情報は「古都 京の文化」ページで、ごらん下さい。【古都 京の文化】

 恒例の京都春季非公開文化財特別公開が、今年も4月26日(金)から5月6日(月・休)まで、公開対象社寺と公益財団法人 京都古文化保存協会の主催で開かれます。同協会常務理事で事務局長の後藤由美子さんに、事前に現地(西方寺・長建寺・石清水八幡宮・得浄明院)を案内してもらい、ふだん見ることができない秘仏やお宝に出会ってきました。第2回は珍しい弁財天を本尊に祀る真言宗醍醐派の長建寺です。

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◆中書島の歴史と長建寺の起こり

 私事ですが、30数年前、地方から出てきた筆者が最初に住んだ町が京都市伏見区でした。京阪電車で通勤途中、中書島駅で三条方面に乗り換えるのですが「ちゅうしょじま〜」と間延びして聞こえるアナウンスも可笑しく、変わった地名もあるものだと不思議に思ったものです。今回訪れる長建寺が「中書島駅から東へ徒歩3分」と聞いて、にわかに当時の記憶がよみがえり、取材の下調べも兼ねて図書館へ…。やっと謎が解けました!

 『京都市の地名』(平凡社)によれば「中書島は豊臣秀吉による伏見城築城時、脇坂中務大輔(なかつかさたゆう)安治の邸宅にちなむもので、中務大輔の唐名『中書』が地名に定着」したと。脇坂安治といえば、ご存じ、秀吉の「賤ケ岳七本槍」の一人。しかし徳川の世になり脇坂邸が荒れてしまったので、御香宮の氏子たちが「元禄12年9月2日中書島の新地開発願書を伏見奉行所に提出」し再開発がスタート。淀川を往来する三十石船や十石船の乗組員や客を相手にする「柳町・泥町の両遊郭を元禄13年に中書島に移し」とあります。

 今回の特別公開用に京都古文化保存協会が作成した「拝観の手引き」にも再開発に伴い「元禄12(1699)年、伏見奉行の建部内匠頭政宇が深草大亀谷即成院から塔頭(たっちゅう)の多聞院を分離して弘法大師聖作との伝説のある弁財天を遷し奉り、中書島に長建寺を興した」と。いったいどんな弁財天様なのか、想像するだけでもワクワクしてきました。

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◆イケメンの弘法大師像と神秘的な美しさの八臂弁財天

 私たちを乗せたタクシーは長建寺の赤い塀の前に着きました。竜宮門と呼ばれる中国風の山門をくぐると、まだ3月下旬というのに満開の枝垂桜が目に飛び込んできました。「これは桜守として有名な佐野藤右衛門さんゆかりの桜で、京都でいちばんに満開になるといわれます。秋の紅葉も有名ですよ」と後藤さん。石畳の参道のそばには、船頭や遊女らに時刻を知らせたという大きな梵鐘が置かれています。その先に伏見の名水・閼伽水(あかすい)があり、手と口を清めて本堂へ。住職の岡田豊禅さんに案内してもらいました。

 本堂の天井に飾られているのは「十二天」。岡田さんは「十二天は東西南北八方と天地、日月を守る守護神です。これは室町時代の十二天の複製と考えられ、こんな小さな寺にあるのは珍しいんです。仏具も東寺にあるような立派なものばかりです」と話します。本堂の左手には、真言宗を開いた弘法大師(空海)像が。後藤さんは「こちらのお大師さんは若くてイケメン。何でも悩みを受け止めてくださるような優しいお顔立ちです」。確かに10代の少年のようにキリッとした表情です。

 最後に岡田さんの手が中央の秘仏のお厨子にかけられました。お経を唱えながら扉が開かれると、そこには白蛇がとぐろを巻いた姿の翁「宇賀神将」、奥には「八臂弁財天」が安置されていました。なんとも神秘的で美しい像です!

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◆空・風・火・水・地を大事にせよ

 弁財天とは原名をサラスヴァティ(Sarasvati)といい、インドに起源を持ち、中国を経て弘法大師が日本に伝えたそうです。「弁財天は水の神様とされ、淀川の水運の中継地点である中書島での信仰はとりわけ篤かったといえますね」と後藤さん。“臂”とは肘のことで、8本の腕でそれぞれ弓、矢、刀、矛、斧、長杵、鉄輪、羂索(投げ縄)を持っています。岡田さんは「“八臂”の弁財天は平安時代の特徴とされ、衣の切り金にも平安時代の特徴が出ていると研究者に聞いています。弁財天を始め“天”のつく神さんは幸福と子孫を生み出してくださる豊穣の神さん。こういう時代だからこそ、空・風・火・水・地(くう・ふう・か・すい・ち=五大)を大事にせよという、お大師さんの密教の心に学んでほしい」と語り、話題は密教から子育てや社会問題にも及びました。

 長建寺は芸能人とのつながりも深いといいます。歌手でタレント、版画家としても知られるジュディ・オングさんが長建寺の竜宮門をモティーフに制作、寄進した作品や、日本画家・竹内栖鳳の「白蛇」なども展示されます。岡田さんは「ちょっとエロティックな弁天さんですが」と前置きをして、著名な落語家が寄進したという「二臂弁財天」も見せてくれました。2本の腕で琵琶を抱えた姿で、ふくよかな女性らしさが特徴です。

 桜、竜宮門、秘仏、ちょっぴり艶かしい歴史、岡田住職の名調子…と、みどころいっぱいの長建寺探訪でした。

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    ◇

【真言宗醍醐派 東光山 辨財天長建寺】京都市伏見区東柳町511
電話:075−611−1039
地図:http://goo.gl/maps/4WIV7

【京都非公開文化財特別公開】4月26日〜5月6日(百万遍知恩寺のみ4月27日〜)
【時間】午前9時〜午後4時(拝観受付)
【拝観料/1カ所につき】大人800円、中高生400円(東寺のみ高校生700円、中学生以下500円)
【主催】京都古文化保存協会および公開社寺
【特別協力】朝日新聞社
【問い合わせ】協会075・561・1795
【協会ホームページ】http://www.kobunka.com/hikoukai2013har.html

【朝日新聞デジタル特設ページ】http://www.asahi.com/koto/


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