〈2013年(平成25年)の、春の京都非公開文化財特別公開は終了しました。新しい情報は「古都 京の文化」ページで、ごらん下さい。【古都 京の文化】〉
春の「京都非公開文化財特別公開」が4月26日から、京都市と京都府八幡市の19社寺で始まりました。主催の公益財団法人 京都古文化保存協会の後藤由美子さんに案内していただき、仁和寺と御香宮(ごこうのみや)神社を参詣しました。今回の仁和寺での特別公開では、宮廷と寺院の建築が融合した金堂、お経を入れた768の引き出しを持つ巨大な輪蔵などを見ることができます。世界遺産・仁和寺で、神聖な空気に浸ってみませんか?
◆天皇家ゆかりのお寺さん
京都市の北西、右京区にある仁和寺は、真言宗御室派の総本山。平安前期の888年、宇多天皇が完成させたこの寺院は、その後30代ずっと、皇族関係者が住職をつとめてきました。天皇家から一人でも住職として入寺した人がいる寺は「門跡寺院」という名称が与えられますが、仁和寺ほど長く天皇家の人々が継承してきたところは他にないそうです。そのことから仁和寺は「筆頭門跡寺院」と格付けられています。
それだけ格式高い寺であることは、建造物からも見て取れます。「仁和寺は、天皇家ゆかりのお寺が多い京都の中でも一番。建築材料も技術も、当時の最高級のものが使われています。庶民のものではないですから。その結果、多くの文化財が指定を受けています」と後藤さんは言います。
◆八角形の巨大な書庫を納める経蔵 まるで宇宙空間のよう
うららかな春の日、参道の脇には遅咲きの桜が咲いていました。今回の取材のガイドをしてくださったのは、仁和寺の財務部管財課、書記の幡山益聖さん。境内の庭の管理も行う幡山さんは、敷地内に5本ある珍しい桜を紹介してくれました。それは黄緑色の花びらの「御衣黄(ぎょいこう)」という八重桜。「今が満開で見ごろですよ」。咲き誇るみどり色の桜に、取材していた全員がカメラマン化してしまいました。
中門を越え、参道をまっすぐ進むと、今回公開される金堂と経蔵が並び立っています。まずは経蔵(重要文化財)へ。江戸時代、1640年代に建てられたこの建物では、中にある輪蔵に注目。八面体の書架の造りの輪蔵には全部で768箱の引き出しがあり、箱の中にはそれぞれ、一切経というお釈迦様の教えが納められています。輪蔵を一回転させると、中のお経をすべて読んだのと同じ功徳を得られると言われています。
人の英知を記したお経を納める巨大な八角形の書庫。箱の一つ一つを星にたとえるなら、輪蔵は無数の星を一つにまとめながら回ってゆく銀河系。そして、仏像や絵画で輪蔵を包み込む経蔵の空間は、宇宙空間そのもの。そんな思いがしてきました。
経蔵の正面入り口には、菩薩とお釈迦様の弟子の像が六体。思わず手を合わせます。その背後に、まるで巨木のようにどっしりと構えているのが、輪蔵です。鮮やかな彩色、細やかな彫刻が随所に散りばめられたこの文化遺産は、芸術品としても見応えたっぷり。それにしても、こんな大きなものをどうやって動かすのだろうと思っていたら、引き出しの下に、ちょうど手で握れるぐらいの大きさの取っ手が付いていました。「こうやって動かすのでしょう」と幡山さん。左右の手をそれぞれ、取っ手の上下に添えて、前に体重をかけるように押していくポーズをとります。これを動かすには、祭りで山車を後ろから押すような気合がいりそうです。幡山さんは「輪蔵の中には一本の棒が入っていて、本体は吊っているような状態です」と説明。たしかに下部は1センチほど浮き上がっていて、ノートが差し込めるほどのスペースがありました。
ですが現在は、回す行為はしていないとの事。幡山さん自身も回したことがないそうです。「基本的には動かすことがないのですが、5、6年前、掃除で経蔵に入ったときに、一区間だけ動かしたことがあります」と幡山さんは言います。当時の感触については「あ、動くんだと思いました」とコメント。「本来は3人ぐらいで動かせるものですが、その時は7人ほどで動かしました。最初から動くというイメージを持っていたら、重たく感じたかもしれませんが、そのときは本当に動くのかと疑問に思っていましたので」。
◆宮廷とお寺の融合が魅力、御所の紫宸殿を移築した金堂
次は金堂(国宝)へと移動します。所々に金の細工が施された木造の大型建築は、見た目も厳かな印象。中に入ると、外の世界とは異質の神聖な空気が漂っています。正面には阿弥陀三尊像。毎朝ここでお勤めが行われ、仏様を迎え入れているとの事。その場に身を置き、ここで空気を吸っていること自体が尊く、心が浄化されるような感じです。
現在の金堂は、江戸時代に徳川幕府によって再建されたものです。その背景について、幡山さんはこう説明します。「この金堂は、もとは徳川家康が京都御所に寄進したものです。それを三代将軍・徳川家光が、仁和寺の再興の際に、京都御所とのつながりを深くしたいからと、御所にあった天皇元服などの儀式が行われる紫宸殿(ししんでん)をここに移築し、本尊を安置する金堂としました。元々、家康が建てたものを動かしてきていますので、この辺りで家康が謁見などをしていたこともあったでしょうね」。その話を聞いて改めて辺りを見渡すと、過去から現在への時間の流れが、この空間で合流しているようにも感じられます。
また金堂の魅力について、後藤さんがこう付け加えました。「ここは現存する最古の紫宸殿です。御所からの紫宸殿をそのまま移築して、寺院風にアレンジ。宮廷の建築とお寺の建築が融合されているというのが、すごく貴重です」。たとえば、細かい目で組まれた蔀(しとみ)という格子状の戸や、細部の極彩色の彫刻などは、宮廷の名残です。また、往生際と呼ばれるラインを境に、一般人が立ち入れる場所(外陣)と、仏様を迎え入れる場所(内陣)とを分けているのは、お寺としての改造になります。
お寺を出たあとも、まるでタイムトラベルをしてきたかのような余韻がしばらく続きました。風薫る季節、日常から飛び出して、歴史を感じに行ってみるのもいいかもしれません。
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【仁和寺】京都府京都市右京区御室大内33
電話:075−461−1155
地図:http://goo.gl/maps/HO2oF
【京都非公開文化財特別公開】4月26日〜5月6日(百万遍知恩寺のみ4月27日〜)
【時間】午前9時〜午後4時(拝観受付)
【拝観料/1カ所につき】大人800円、中高生400円(東寺のみ高校生700円、中学生以下500円)
【主催】京都古文化保存協会および公開社寺
【特別協力】朝日新聞社
【問い合わせ】協会075・561・1795
【協会ホームページ】http://www.kobunka.com/hikoukai2013har.html
【朝日新聞デジタル特設ページ】http://www.asahi.com/koto/
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