小川フミオのモーターカー

世界の名車<第27回>“本気と遊び”を組み合わせた「ルノー5ターボ」

  • 文 小川フミオ
  • 2014年4月15日
ベースは大衆車だが、実は速かった

写真:大きく張り出したリアフェンダー 大きく張り出したリアフェンダー

写真:欧州では人気のラリー選手権でも活躍した 欧州では人気のラリー選手権でも活躍した

 このクルマをご存じの方がどれくらいいるだろうか。ルノーが1978年に発表した5(サンク)ターボという。クルマに対して日本人はコンサバすぎると、この迫力ある形を見るたびに思うのだ。

 ルノー5ターボは、本来、日産でいえばマーチのような大衆車、ルノー5をベースに、後席をつぶしてそこにターボエンジンを載せた2人乗りのスポーツカーだ。ラリーで活躍し、市販車のセールスに結び付けるために開発したクルマだが、実際に成績もよかった。

 大きく張り出したリアフェンダーは太いタイヤを収めるためで、市販車は160ps、レース仕様は250ps超という、当時としては高出力のエンジンへ冷却気を送りこむスリットが切られている点も大きく目をひいた。

 市販車もまた別の意味でよかった。とりわけ、台数限定で生産されたシリーズ1は、内装をイタリア人工業デザイナーのマリオ・ベリーニが手掛けており、ブロックを積んだような意匠のダッシュボードと、目が覚めるような赤色などを用いたカラースキームには、なかなかのセンスだと感心するばかりだった。

 しかし、背後からのエンジンの轟音(ごうおん)に加え、クーラーが装備されていなかったので、特に夏場は暑かった。そしてハンドルは重く、急なカーブでは注意して運転しないと、トルクに負けて思った通りのラインを走ってくれないこともあった。要するに、昔のスポーツカーである。

 ルノー5ターボのような本気(ラリーでの勝利と販売促進)と遊び(スタイリング)を見事に組み合わせたモデルは、クルマの世界を楽しくしてくれる。フランスは、このような世界をつくりあげることが得意なようだ。お国柄というものがクルマにもある。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。


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