丸山タケシアワー ジダンダ劇場

どうかそっとしておいて ホントは苦手な美容院トーク

  • 文 丸山タケシ
  • 2014年6月6日

写真:気の置けない美容師さんと巡り合うって結構大変なことかも 気の置けない美容師さんと巡り合うって結構大変なことかも

 初めて行った美容院の場合、ほぼ100%に近い確率で問われる質問がある。

 「休みの日は何してんスか?」

 髪を切りながら、担当の美容男子はのたまう。「別に」とは言わない。大人として会話は成立させねばならず、「そうですねぇ……犬と散歩したり、パチンコしたり……あぁぁっ(嗚咽〈おえつ〉まじりで)」。すさまじくツマラナイおのれの週末を激白するわけである。

 「へぇ~そうなんスか」

 特にフォローはないまま質問は続く。「家、近所なんスか?」「ご家族は?」「お勤めはどのへんスか?」「買い物とか、どのへんでするんスか?」

 ボクはもう面倒臭くなって、「はぁ……まあ近所スね~」なとどあいまいにあいづちを打って、適当な雑誌に手を伸ばす。話したくないオーラ全開でページをめくっていると、「バイク好きなんスか?」と再び質問。よく見たら、手に取ったのはバイク雑誌であった。好きじゃないけど、その雑誌しかないから手に取ったんスよぉぉぉ(再び嗚咽)。

 まあこの手の質問は一般的なのだが、最近では、身元調査の代わりに「お悩み相談」方式でにじり寄ってくる美容師もいる。

 ●美容師A男「気になる娘がいてぇ、ガチでサッカーの試合誘ったんスよ~。でも彼女は興味ないっつーか? はぁ? みたいな? やっぱスポーツとかに女の子誘っちゃダメなんスかねぇ~」

 ●美容師B子「今度友だちの結婚式があってェ、みんなでお祝い贈ろうってことになってェ。んで友だちはサプライズで食洗器を贈ろうっていうんですけどォ、アタシ的にはほら、本人に直接欲しいもの聞いたほうがいいっていうかァ?」

 美容師もつらい。「指名客を増やすには、コミュニケーションを取ってこそ」といった店からのお達しがあるからであろう。だからしたくもない「身元調査」や「お悩み相談」をするのであって、そのへんは理解したい。

 理解しているからこそ、なるべく親身になってお悩みに答える「フリ」をするのであるが、それでもやっぱり腑(ふ)に落ちない。リラックスするための美容院で、なにゆえ脳ミソを使い、当たり障りのない回答を導き出さねばならぬのか。美容男子および女子よ、このアニキをそっとしておいてはくれまいか。

 いっそ「寝てしまえばいい」とせせら笑う御仁もあろうが、起きて鏡を見たら五分刈りになっていた経験があるから怖くて眠れない。だからといって、寡黙な職人が多そうな理容室に変えることもできない。以前、顔ソリをしてもらった際、顔面血だらけになって卒倒した経験があり、怖くて行けないのである。八方塞がりの今は、諦めの境地で美容師の会話を甘受する日々なのである。

 ところが先日、いつもの美容院でパーマをかけたら、施術後、頭部全体の皮膚がヒリヒリと痛む。そんなことは初めてで、「これはどう考えても異常事態だ!」と慌てて美容院の店長に電話をしたのだった。

 「どうしました? え? 頭部がヒリヒリ……それはよくお電話いただきました~。また何かありましたらご連絡ください(ガチャ)」

 ヒリヒリは十分「何かあった」の域ではないのか。普段は極上の薄っぺらい話をベラベラしゃべり続けるのに、肝心なことは、話さんのかい。

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PROFILE

丸山タケシ

丸山タケシ(まるやま・たけし)

大学卒業後、雑誌編集者を経てフリーに。朝日新聞夕刊紙上にてテレビ評『TV構造改革』を連載後、『TV無法地帯』(週刊新潮)、『バカ親につける薬』(月刊現代)などのコラム、エッセイを執筆。著書に『丸山タケシのテレビメッタ斬り』(SBクリエイティブ)、『2時間ドラマ大事典』(三一書房)など。現在はサラリーマン。


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