関口一喜 イチ押し週刊誌

「便移植」で肥満を抑えることも可能に

  • 文 関口一喜
  • 2014年9月24日

写真:100グラムの便を生理食塩水に溶かして撹拌し、フィルターで濾過して注射器に入れて大腸内視鏡で注入する(写真はイメージ) 100グラムの便を生理食塩水に溶かして撹拌し、フィルターで濾過して注射器に入れて大腸内視鏡で注入する(写真はイメージ)

写真:サンデー毎日(毎日新聞社)2014年9月28日号 サンデー毎日(毎日新聞社)2014年9月28日号

 食事中の方は後でお読みください。便の話です。先日、iPS細胞を使った網膜移植手術が行われたが、こちらは健康な人の便を難治性腸疾患の患者に移植する治療法だ。えっ、便を移植?! と驚くが、すでに臨床試験が始まっている。『サンデー毎日』(9月28日号)が<健康人の便を移植するという試み>と伝えていて、試験を進めている慶應義塾大学医学部内科学(消化器)の金子隆典教授はこう解説する。

 「抗生物質で悪い菌をたたくより、正常な腸内細菌叢(そう)を植え付けたほうが明らかに治療効果が高かったのです」「もしかすると抗生物質より安全で理にかなった治療ではないか、と思えてきたのです」

 難治性の腸疾患では、細菌の種類や数が少なかったり細菌叢のバランスが崩れている。その腸に健常者の正常な細菌叢をそのまま導入して、細菌叢のバランスを正常に戻す。慶大での1例目は今年3月に、潰瘍(かいよう)性大腸炎の40代男性に行われたという。どのような手順なのか。

 「移植するのは、健康な人の便100グラムです。食べ物のカスなども含まれますが、便はほとんど細菌の固まり。乳酸菌飲料1本に入っている乳酸菌は100億個程度ですが、ヒトの糞便(ふんべん)100グラムには、その1000倍、約10兆個の菌が含まれます」(金子教授)

 100グラムの便を生理食塩水に溶かして撹拌(かくはん)し、フィルターで濾過(ろか)して注射器に入れて大腸内視鏡で注入する。さすがに、便をそのまま入れるわけではないのだ。

 「(移植に要する時間は)通常の大腸内視鏡検査と同じか、5~10分程度長いくらいです。ドナー便採取から終了まで、世界標準では6時間以内ですが、私たちは約3時間以内で行っています」(金子教授)

 やはり新鮮な方がいいのだそうだ。この便の移植治療は、腸疾患に限らず、糖尿病、慢性疲労症候群、不眠症などでも臨床試験が始まっている。さらに、痩せた人と太った人とでは腸内細菌叢が異なっていることが明らかになっており「便移植」で肥満を抑えることも可能になるかもしれないという。

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PROFILE

関口一喜(せきぐち・かずのぶ)

1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。


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