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語り尽くせぬキャストパズルの魅力 販売名人の平野さん

  • 2015年7月31日

キャストパズルについて熱く語る平野良明さん(写真特集はこちら

【動画】キャストパズル販売名人・平野良明さんの実演

写真:「キャスト エス&エス」を手に「こんなに使い続けても形が変わらない」と語る平野さん。左は使い続けてめっきがはがれたパズル 「キャスト エス&エス」を手に「こんなに使い続けても形が変わらない」と語る平野さん。左は使い続けてめっきがはがれたパズル

写真:どんなパズルも解いてみせる平野さんの手。持っているのは「キャスト バロック」 どんなパズルも解いてみせる平野さんの手。持っているのは「キャスト バロック」

写真:米国のプログラマーが数学的なコンセプトを採り入れて作ったという「キャスト マーブル」 米国のプログラマーが数学的なコンセプトを採り入れて作ったという「キャスト マーブル」 朝日新聞ショップで詳細を見る

写真:宝石を見るのが趣味のフィンランド人が恋人のために作った指輪が元になったという「キャスト ループ」 宝石を見るのが趣味のフィンランド人が恋人のために作った指輪が元になったという「キャスト ループ」 朝日新聞ショップで詳細を見る

写真:平野さんが6歳のときに出合った「15ゲーム」 平野さんが6歳のときに出合った「15ゲーム」

写真:最も難易度の高い「キャスト エニグマ」。平野さんでも外すのに数十秒かかる。左は市販品、右は原型 最も難易度の高い「キャスト エニグマ」。平野さんでも外すのに数十秒かかる。左は市販品、右は原型

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 「これ、『バロック』といいます。アキオ・ヤマモトさんという石の彫刻家の方が考えたんですよ」。複雑な曲線を描く二つのパーツががっちりと絡み合ったパズルを見せてくれたのは、「パズル販売の名人」と呼ばれる平野良明さん(71)。「バッハの『大フーガ』という曲から生まれたのでこの名前が付いているんですが、これは解いていく過程がとても美しい。リズミカルで感動的な外れ方をするんです。バロック音楽の美しさが、解けた人だけに分かるんですよ」。そう言ってカチャカチャと器用に手先を動かし、ほら、とばらばらにしてみせる。

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キャストパズルの写真特集

 平野さんが手にしているのは「キャストパズル」。いわゆる知恵の輪のようだけれど、より立体的で重厚感がある。原型は19世紀末のイギリスで流行したという金属製のパズルの一種。それをパズル作家の芦ケ原伸之さんがのみの市で見つけ、玩具メーカーのハナヤマがより手になじむ素材と大きさに改良し、難易度やおもしろさも増してリメークした。

 1983年から販売を始めたキャストパズルは、今や56種類に及ぶ。歴史あるパズルのリメークだけでなく、世界各地にいるパズル作家によるオリジナルも多い。彫刻家のヤマモトさんが手がけた「バロック」をはじめ、米国のプログラマーがオリジナルコンセプトを考案し、オランダの科学者がデザインした「マーブル」、宝石を見るのが趣味のフィンランド人が恋人のために作った指輪が元になった「ループ」など。さまざまな職業や国籍、趣味の作家が手がけたキャストパズルには、異なる個性と味わいがある。

 「それぞれ解き味が違うのはもちろん、それを解く人が論理的な思考が得意なタイプか、ひらめきが得意なタイプかによって難しさが変わるので解き方のコツはないです。だから解けたらすばらしい」と平野さん。「考えすぎてしまって、意外と簡単なものができないことがあるんですよ。常識にとらわれない子どもの方がぱっと解いてしまうこともあるんですね。そういう時はいつも学校の宿題ができなくて『こんなのもできないの』と言われていることをそのままお父さん、お母さんに言い返すことができますよ」

 そうほほ笑む平野さんのパズルとの出合いは、6歳の時に祭りで買った「15ゲーム」だという。16マスある枠の中で1~15の番号が振られたピースをスライドさせて数字順に並べるという単純なゲームだが、戦時中で物資が豊富にない時代、遊びは「自分の頭」だけだったと振り返る。「孤独だったのかもしれませんね。次から次へおもちゃを買い集めることもできませんでしたし。パズルなら、一つのもので長く遊ぶことができました」

 大学を卒業後、いったんはサラリーマンを経験するものの、スーパーや駅ビルなどで日用品を販売する商売を始める。ふとしたきっかけで東京・秋葉原駅前の「アキハバラデパート」に店を構えると、土地柄もあってパズルを専門に扱うようになった。2006年の同デパートの閉店とともに平野さんの店もなくなったが、今も週末ごとに全国を巡ってはキャストパズルの魅力を伝えている。

 実演販売の年数は、実に40年以上。「遊びとしてルールが分かりやすいですよね。渡すだけでもう、何をすればいいのかが分かる。こういう遊びは古くならないです。だって、鍵がかかっていれば開けたくなるのが人間ですから」。さあやってみてください、と渡されたキャストパズル。一度手にしたら本能で、とことん向き合うだけだ。(文 加藤千絵)

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