関口一喜 イチ押し週刊誌

「下流化」が急速に広がっているお坊さんの世界

  • 文 関口一喜
  • 2015年10月14日

写真:覆面住職座談会「あぁ、坊主は辛いよ」 覆面住職座談会「あぁ、坊主は辛いよ」

写真:      僧侶向け雑誌『月刊住職』

写真:      浄土宗の機関誌『宗報』

写真:      週刊ポスト(小学館)2015年10月16・23日号

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 「地方では檀家(だんか)さんでもある農家からのコメや野菜の『いただきもの』でなんとかやりくりしている」(臨済宗の住職)

 昨今はお坊さんの世界にも「下流化」が急速に広がっている。僧侶向け雑誌『月刊住職』によると、全国の寺院の3割が年収100万円以下、浄土宗の機関誌『宗報』に掲載された過疎地の寺へのアンケート結果では、兼業住職が5割以上にのぼるという。

 『週刊ポスト』(10月16・23日号)の特集<覆面住職座談会「あぁ、坊主は辛いよ」>で「坊主丸儲(もう)け」なんてどこの話だというような厳しい現状を各宗派の住職や副住職が明かしている。収入減を補てんするために副業は当たり前。浄土宗の副住職は「昔は幼稚園や保育園の経営とお寺を兼業することも多かったのですが、最近では自らがガイド役を務める仏閣を巡るツアーを企画する旅行代理店業や、卒塔婆に文字を印刷する印刷会社を営むお坊さんもいます」と話す。

 お寺の収入はどうなっているのか。「葬儀や法事の際にいただく『お布施』と『お墓の管理料』、それ以外に寺の維持・管理のために檀家の方々からいただく『護持会費』です。護持会費は地方で年間5000円から1万円、都市部なら3万円程度といわれ……」(曹洞宗住職)

 その檀家も減っている。しかも、収入はすべて寺に入るわけではない。一部は総本山に寄進しなければならないし、葬儀で葬祭業者が入ると仲介手数料として2~3割、多いところでは5割ぐらいが「中抜き」されてしまうのだ。戒名料も「浄土真宗の場合は戒名ではなく法名というのですが、本山に申請するものであり、お寺は取り次ぐだけで儲けになりません」(浄土真宗住職)

 住職の高齢化も深刻である。現役住職でもある『月刊住職』の矢澤澄道編集長はこう話す。「これまで“住職は終身”とされていたが、高齢化で“住職の引退”が当たり前になった。最近は引退後に住職が迎える第二の人生や、死者を送る立場の住職が自身のがんなどとどう向き合うかなど、切実なテーマを積極的に取り上げています」

 臨済宗の住職は「私の寺の地域は『消滅可能性都市』なので、寺どころか地域そのものの存続が危うい状況にあります。もともとお寺は地域のコミュニティーの中心になっていた場所。かつての活気を取り戻して、街ごと元気づけられるように頑張らなきゃいけませんね」と語っている。

 お寺は前を通りがかるだけで、なにかホッとするような、気持ちが落ち着く空間だ。檀家だけでなく、地域社会で上手に維持する知恵はないものか。

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PROFILE

関口一喜(せきぐち・かずのぶ)

1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。

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