トーク

藤原ヒロシ×小川フミオ 男はなぜ一流のクルマに乗りたがるのか?<後編>

  • 新年特別対談
  • 2016年1月15日

小川フミオさん(左)と藤原ヒロシさん(右)

写真:「フェラーリを買った時、七宝焼きのエンブレムを付けなかったんです。ディーラーからは『付けないと売る時に後悔しますよ』と言われましたが、その通りでした。ブランドというものの意味を思い知らされました」と話す藤原さん 「フェラーリを買った時、七宝焼きのエンブレムを付けなかったんです。ディーラーからは『付けないと売る時に後悔しますよ』と言われましたが、その通りでした。ブランドというものの意味を思い知らされました」と話す藤原さん

写真:「全く同じものでもロゴ一つで価値がなくなる。そこがブランドの面白いところですね」と話す小川さん 「全く同じものでもロゴ一つで価値がなくなる。そこがブランドの面白いところですね」と話す小川さん

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 「朝日新聞デジタル &M」の連載筆者がゲストを招き「一流の条件」をテーマに対談する新年特別対談企画。第2回は、一流のクルマを知り尽くすモータージャーナリストの小川フミオさんが、アーティストの藤原ヒロシさんと語り合う。

<前編>はこちら

藤原ヒロシ(以下、藤原):僕はフェラーリを買った時、七宝焼きのエンブレムを付けなかったんです。どうもあまり好きではなくて。ディーラーからは「付けないと売る時に後悔しますよ」と言われましたが、その通りでした。ブランドというものの意味を思い知らされました(笑)。

小川フミオ(以下、小川):全く同じものでもロゴ一つで価値がなくなる。そこがブランドの面白いところですね。

藤原:以前、ドイツに行くとAMGによく遊びに行っていたんです。戦車のようなクルマやシャンデリアが付いたクルマが並んでいる。アラブからの注文が多かったようです。クルマも洋服のように、気軽にカスタマイズできると面白い。

小川:カスタムカーの世界は奥が深いですね。電気自動車やPHVはまだ一流が確立されていませんが、今後、テスラなどがどんなクルマを出してくるのか。アメリカの企業は、新しい価値をどんどんつくろうとしていて目が離せません。

藤原:アップルもクルマに参入するといっていますしね。日本のメーカーもかつては「日本製で世界をあっといわせるクルマをつくりたい」という志があった気がします。

小川:トヨタなどは、すごいクルマをつくれる会社です。

藤原:以前、海外の友達が「高く売れるからホンダのシティを探して買いたい」と言っていました。僕はナイキの過去モデルのリバイバルに携わったことがありますが、日本車も過去のアーカイブを再発するといいのではないでしょうか。

小川:10年以上前、イギリス人が「こんなクルマはヨーロッパにはない」と大喜びしながら、Be-1やフィガロを輸入していました。

藤原:クルマも洋服も、結局は自分の感性を信じて、自分がいいと思うもの、自分に似合うものを選ぶのが一番です。

小川:白いTシャツにジーンズで軽自動車に乗っていても、その姿が格好良ければいい。スタイルを持つことこそ、何より一流だと思います。

藤原:エルメスのバーキンだって、大切にしまっているだけでは意味がない。若い子が今風のファッショに合わせて持つ姿が格好良かったりもする。クルマも同じで、使い方が一流かどうかってありますね。

小川:映画『男と女』に主演したフランス人俳優、ジャン=ルイ・トランティニャンは、最高の例かもしれません。田舎の家の納屋にランボルギーニ・ミウラを無造作に突っ込んでいて、ラフに乗り回していました。おじさんは戦前のグランプリドライバーだし、本人も運転がうまい。自分のスタイルで、クルマに乗ることを心底楽しんでいるのが分かります。一流のクルマ乗りだと思いました。ずっと後になって『歌え! ジャニス★ジョプリンのように』というフランス映画でも、ジャン=ルイは一流のクルマ乗りとして、いいこと言っています。必見の映画です。

藤原:一流というとトラディショナルなものを想像しがちですが、例えば、ナポレオンがプロポーズしたという由緒あるパリのレストラン「ルドワイヤン」は、料理がすごく前衛的です。

小川:彼らは本家本元という自信があるから変えられるのでしょう。日本人が変えると、しょせん日本風フランス料理ととらえられてしまう。フェラーリがかつて大胆にスタイリングを変えていたのは、スポーツカーは自分たちだ、という自負があったからです。

藤原:ヨーロッパのように階級や権威がある社会は、ある面でうらやましい。権威があるからこそ、それを崩す面白さもあるわけですから。そういった意味では、クルマもファッションも、一流は一流としてきちんと君臨していてほしい。

小川:今はどの分野も、オーソリティーがどんどんなくなってきています。

藤原:ネットで誰もが意見を発信するようになり、色々なものが世論調査結果的なものになっていると思います。

小川:クルマも一般消費者のニーズに応え過ぎていると、どんどんつまらないものになる。日本がクルマ文化の一流国になるために、行政にもお願いしたいことがあるのです。日本の道路は線や表示がやたらとあり過ぎです。それと、運転しながらいい店を見つければ店先に停め、買い物をしたり、お茶をする。そんな自由さがクルマの良さだったのですが、今はそれがほとんど許されません。もう少しクルマ文化に寛容な国になってほしいですね。(構成 ライター・関川隆、写真 スケガワケンイチ)

    ◇

藤原ヒロシ(ふじわら・ひろし) 1980年代よりクラブDJを始め、高木完とTINNIE PUNXを結成。日本のヒップホップ黎明(れいめい)期に活躍する。90年代からは音楽プロデュース、作曲家、アレンジャーとしても活動。2011年より真心ブラザーズの倉持陽一とAOEQを結成し、バンドスタイルでの演奏活動を始める。ファッションの分野でも若者に絶大なる影響力を持ち、14年には自身がディレクションするコンセプトストア「ザ・プール青山」をオープン。15年11月より、新旧にこだわらず、自らが見たい、読みたい、知りたい情報をグローバルに発信するデジタルメディア「Ring Of Colour」を始めた。

小川フミオ(おがわ・ふみお) クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。この冬は、雪上での試乗会に盛んに参加。レクサス、日産、マツダ、ランドローバーなど、4WDの性能は素晴らしいと感心中。

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