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築90年、富士塚付きの古民家にバックパッカーが集まるワケ

  • 古民家ゲストハウスtoco.
  • 2016年2月18日
縁側のある昔ながらの日本家屋を改装したゲストハウスは、東京で暮らしていても
泊まりに行きたくなる宿。その様子はフォトギャラリーから、ご覧ください。

 浅草にほど近い東京の下町、入谷。奇跡的に戦災を免れたエリアでもあり、今も細い路地や風情ある古民家が点在する。そんな中でひっそりとたたずむ「古民家ゲストハウスtoco.」は、築90年の古民家を改装した人気の安宿だ。毎日、世界中のバックパッカーたちが大きな荷物を背負ってやって来る。

古民家ゲストハウスtoco.

「ゲストハウスtoco.」の入り口はまるでカフェのよう。もともと眼鏡屋だった建物を改築し、共有ルームとした

古民家ゲストハウスtoco.

江戸時代に築山された富士塚「下谷坂本富士」が庭の半分を占めるが、ここは裏にある神社の境内になっている

 入り口は、併設する別の建物から入る。バーカウンターのある、カフェのような共有スペースを抜けて奥の引き戸をあけると、目の前に突然、日本庭園付きの趣ある家屋が現れた。通り沿いから一切見えない「隠れ古民家」に外国人ゲストは「アメイジング!」と目を丸くする。庭の奥を見て驚愕(きょうがく)した。どーんと構える高さ5メートルの石の山は、国の重要有形民俗文化財の富士塚だ。古民家のとなりにある小野照崎神社の境内にあり、ここから見る姿は「裏側」にあたる。「ふだんは入れないけれど、年に一度だけ神社で山開きがあるんです」と教えてくれたスタッフの前で、野良猫がひょいひょいと登頂していった。

 古民家を改装したのは2010年のこと。当時25歳だった若者4人が会社を立ち上げ、「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」というコンセプトのもと、1泊2800円の素泊まりの宿を始めた。大正時代に建てられたといわれている木造二階建ての日本家屋にキッチンとシャワー室を加え、畳の部屋やベランダ付きのドミトリー(相部屋)を用意した。きしきしと音がなる縁側の廊下には柔らかな日が差し込み、古いガラス窓や建具のデザインなど、細部が美しい。日本の昔ながらの風情が味わえるとあって予約はすぐ埋まるが、人気の理由はそれだけじゃない。  

古民家ゲストハウスtoco.

夜のバータイム、宿泊客にはウエルカムドリンクがある。常連客らと宿泊客が一緒にお酒を飲む場面も

 夜7時になると、共有スペースはバー&ラウンジになり、地元の人と世界中から訪れた旅行者が混じり合う。仕事帰りのサラリーマンや英会話の勉強になる、と浅草から通う男性、千葉の松戸から来る80近い女性も常連客だ。夜のひととき、年齢も性別も人種も超えて、一期一会を楽しむ風景はあたたかい。オーストラリアから訪れた女性は常連客と日本映画について語りながら梅酒を飲んでいた。「日本にはリラックスするために来ているので、ここはとても気に入りました。FUJIZUKAはとても神秘的だし、畳の部屋は美しい。次もまたここを選びます」

 立ち上げメンバーの宮嶌智子さんは「『ただいま』『おかえり』と言い合える空間を作りたい」と話す。オープン前、「ゲスト目線」を経験するため世界21か国を旅し、ゲストハウスを見てまわった。「知っている人が宿にいるという安心感はすごく大事だなと思ったんです。名前で呼ばれると認識されていると思ってホッとする。その地に根がはっていない不安感をフォローできるよう、積極的に話しかけることを心がけています」

 1人の外国人男性が大きな荷物を持って入って来た。アルゼンチンから来たという。「ご飯はもう食べた?」「ニックネームはなに? 私はメグ」と20代のスタッフが流暢(りゅうちょう)な英語で話しかける。1人で異国の土地に来たとき、ようやくたどり着いた宿でこんな笑顔が待っていたら、どれだけホッとするだろうかと思う。カウンターでビールを飲んでいた常連客が振り返り、「これからよろしくね」と日本語で握手すると、男性が笑顔を見せた。

 

  ホテルでもカプセルホテルでもなく、ゲストハウスを選んで来るのはコミュニケーションをとれる場でもあるからだ。そんなゲストがまた帰ってくる場所でありたい。それが宮嶌さんらスタッフの願いだ。「そのためには、長く続けること。長く続けるためには、その町に開かれた場所であることが大事だと思っています」。4人で始めたゲストハウスは3店舗を展開し、スタッフは60人以上になった。

   

(文 塩見圭)
(写真 塩見圭/古民家ゲストハウスtoco.)


場所名:古民家ゲストハウスtoco.
住所:東京都台東区下谷2-13-21
アクセス:日比谷線入谷駅から徒歩3分
電話:03-6458-1686
ホームページ:http://backpackersjapan.co.jp/
メモ:宿泊はドミトリー(相部屋)2800~3200円。クレジットカード不可。宿泊は7歳以上。女性専用ドミトリーあり。シャワー・トイレ共同。チェックイン時間は16時~23時、チェックアウト時間は11時まで。東京・蔵前に姉妹店のホステル「Nui.」、京都には三号店「Len」がオープン。

マウスホイールのスクロールでも見ることができます
(Windows IE6以降・Mac Safari3以降推奨)
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