私の一枚

オペラ歌手になりたいと決意した芸大2年生 鈴木慶江さん

  • 2016年2月29日

芸大の教授とその門下生で、ローマ、フィレンツェ、ミラノを巡るイタリアの旅に出た時の写真。芸大2年生の時の鈴木慶江さん

写真:メジャーデビュー15周年を迎えた鈴木慶江さん メジャーデビュー15周年を迎えた鈴木慶江さん

写真:3月2日に発売される鈴木さんの15周年記念アルバム「OPERATIC FANTASY」。3月6日には東京・紀尾井ホールにて10周年記念リサイタル「ミモザの日」がおこなわれる。【問】0570-550-799(平日11時~18時/土日10時~18時)
3月2日に発売される鈴木さんの15周年記念アルバム「OPERATIC FANTASY」。3月6日には東京・紀尾井ホールにて10周年記念リサイタル「ミモザの日」がおこなわれる。【問】0570-550-799(平日11時~18時/土日10時~18時)

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 これは私が20歳の頃、ミラノのスカラ座の中にある博物館の、マリア・カラスの肖像画の前で撮影しました。彼女は私の憧れのディーバなので、少々緊張気味です(笑)。

 本場イタリアでのオペラ鑑賞、そしてイタリアの風や空気に触れ、私にとって初めてリアルにオペラを感じられた旅でした。この博物館は当時、スカラ座のバックステージのような暗がりとつながっており、撮影後、博物館から出てそこを歩いている時、マリア・カラスをはじめ、多くのオペラ歌手がこの空気の中にいたと思ったら鳥肌が立つほど感動しました。そして、私もこの空気の中にいられるオペラ歌手になりたいと決意したんです。

 その頃の私は芸大2年生。オペラを学び、オペラ歌手に憧れはあっても、それまでなれると思ったことはありません。もともと私が歌を始めたのは高校時代に音楽の先生に勧められ、単純にオペラの曲に感動し、勉強したいと思ったことから。芸大に入ってもほかの学生とはオペラの学習の年期がまったく違ったので、とにかく図書館でCDやDVDを借り、学生料金のオペラやコンサートに行き、大学時代は自分の耳を作っていました。

 この旅行で夢を持った後はさらに勉強し、一浪して大学院に進学。うちは普通の会社員家庭なので、大学院の浪人など考えられないと、浪人中は音楽の専門学校の講師をしながら受験勉強をしました。そして院の1年の時に、初めて市民オペラに出たことが私にとってのプロの第一歩。そこからとにかく舞台で歌いたい一心で、大学1年生の時から始めていた友人たちとの手作り公演もずっと続けていました。そのせいか学内試験の後に先生から「あなたはテストで聴いてもらうために歌うのではなく、みせることができている」とほめられ大変うれしかったです。

 その後コンクールで優勝し、イタリアに留学。各国の舞台で歌ってきました。私にとってオペラ歌手になり、舞台で歌っていることは神様のギフトのようなありがたいこと。20代はひたすら勉強し、30代は40代になっても声が出るようにテクニックを磨き、40代の今、とても自由に歌え、若い頃より高いソプラノが出るようになり進化を感じています。

 今年は元旦にスカイダイビングで空から降りながら「威風堂々」を歌うという挑戦をしたんですよ。途中すごく怖かったけど、降下が落ち着いた時に歌ってみると自分でも驚くほど声が出て気持ち良かった。空を飛んだら、いろんなものが浄化され、地球のスケール感と共に、自分も地球の一部であると感じられ、さらにパワフルになった気がします。誰もが喉(のど)に持つ声帯という楽器で奏でる「歌」のすばらしさを、今後も届けていきたいですね。

    ◇

すずき・のりえ オペラ歌手。神奈川県横須賀市出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院オペラ科修了。第29回イタリア声楽コンコルソ第1位ミラノ大賞受賞後、イタリアのG.ニコリーニ国立音楽院に推薦留学。以降、数々の受賞を経て2002年ミラノ、東京、大阪でリサイタルデビュー。同年発売のCD「フィオーレ」がクラシック界では異例のヒット。現在も国内外の舞台で活躍中。

◆3月2日にメジャーデビュー15周年を記念したアルバム「OPERATIC FANTASY」が発売される。クラシック、ポップスとジャンルを超えた名曲をオペラの歌姫、鈴木さんが歌う。「カッチーニのアヴェ・マリア」や「トゥーランドット 誰も寝てはならぬ」「ボレロ」、ポップスは「瑠璃色の地球」「宇宙のファンタジー」などを大胆にアレンジされた全13曲を収録。HATSレーベルより3000円(税別)にて発売。

「私はクラシックとは時代の流れの中で残ってきた名曲だと思っています。それをより親しみやすい形で歌ったデビューCDから15年。あれから自分も進化し、さらにチャレンジしたいと今回はジャンルの壁を越えた名曲をセレクト。どの曲にも思い入れがありますが、特に「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、新鮮な切なさと癒やしを感じてもらえるような作品になりました。また「瑠璃色の地球」は、ささやくように始まり、最後は抱きしめるように歌いあげるなど、いろいろな挑戦をしています。ぜひ通しで聴いて、まるで一本の映画を見たような気持ちになる感覚を楽しんでください」

(聞き手:田中亜紀子)

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