ノジュール

<第33回>西の吉野と並び称された桜の隠れ里、桜川

  • 文 田村知子(『ノジュール』編集長)
  • 2016年2月29日

桜川の高峯に咲く山桜。(写真 片岡巌)

写真:櫻川磯部稲村神社境内の紀貫之歌碑 櫻川磯部稲村神社境内の紀貫之歌碑

写真:櫻川磯部稲村神社では、11種の山桜が見られる
櫻川磯部稲村神社では、11種の山桜が見られる

写真:お花見の名所・磯辺桜川公園 お花見の名所・磯辺桜川公園

写真:定期購読誌『ノジュール』3月号は発売中。写真は、桜川の高峯に咲き誇る山桜(写真 片岡巌) 定期購読誌『ノジュール』3月号は発売中。写真は、桜川の高峯に咲き誇る山桜(写真 片岡巌)

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 「西の吉野、東の桜川」。初出は不明ですが、江戸時代には桜の名所として謳(うた)われたという桜川。関東でもあまり知られていませんが、茨城県の中西部にある桜の隠れ里です。その歴史は古く『土佐日記』で知られる紀貫之が、天暦期(950年頃)に成立した『後撰和歌集』に、この桜川を詠んでいます。

 桜川市は、2005年に岩瀬町・大和村・真壁町が合併して発足した市で、東北新幹線小山駅からJR水戸線で東へ約40分行ったところにあります。この地は花崗岩質の土壌で水はけがよく、山桜が育つのに適していたといいます。江戸時代には、水戸黄門こと水戸光圀が、桜川の桜を気に入り、水戸城や偕楽園前の河畔に苗を植えて大切に育て、偕楽園前の川を「桜川」と改名したと伝わっています。また、当時の江戸(東京)にも盛んに移植され、八代将軍の徳川吉宗は、玉川上水に吉野の桜と桜川の桜を交互に植えさせたといいます。このように、桜川は江戸における桜の供出地であり、これが冒頭の「西の吉野、東の桜川」として広まった所以(ゆえん)なのです。

 さて、桜川の桜の見ごろですが、山桜はソメイヨシノに比べて開花時期が遅いので、例年4月中旬が見ごろになります。また、この山桜は自生種で1本1本遺伝子が違うため、早咲き・遅咲きなど開花期が異なり、4月上旬から5月上旬までの比較的長い間、お花見を楽しむことができます。

 桜川の桜は広範囲に咲くため、町中で楽しむなら磯辺桜川公園と、そこに隣接する櫻川磯辺稲村神社の境内がおすすめ。この神社の境内では天然記念物指定の11種の山桜すべてを見ることができます。また、栃木との県境にある小さな山・高峯が桜スポットのハイライト。最も高い場所にある第2展望台までは約2.5km、45分ほど登っていくことになりますが、数千本の桜と桜が咲く市街を見渡すことができます。

 観光地化されていない隠れ里ゆえ、交通の便もいいとはいえず、施設やお店も少ないですが、お弁当や飲み物など準備をして、ゆっくりと里の隠れ桜を楽しんでみてはいかがでしょうか。4月2・3・9・10・16・17日のみ「さくら臨時バス」が運行され、岩瀬駅や羽黒駅から桜の名所まで行くことができます。

 『ノジュール』3月号では「西の吉野」の花見観光ガイド、城、鉄道、アートなどのテーマ別の桜スポットガイドほか、来たる3月26日の北海道新幹線開業にあわせ、食でめぐる函館道南なども特集しています。

■ノジュール:鉱物学の専門用語で硬くて丸い石球(団塊)のこと。球の中心にアンモナイトや三葉虫の化石などの“宝物”が入っていることがある。

 

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PROFILE

田村知子(たむら・ともこ)

1995年JTB出版事業局(現・JTBパブリッシング)入社。旅行ガイドブック『るるぶ』の編集ほか、旅行情報サイト「るるぶ.com」などデジタル媒体の企画制作・統括を担当。『るるぶ編集長』を経て、2015年から定期購読専門誌『ノジュール』編集長。

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