女子アスリート応援団

期待の新星は元マーメイド ポールスポーツ・谷口栞奈さん

  • 2016年9月6日

谷口栞奈さん(フォトギャラリーはこちら

 垂直に設置された金属製のポールに右太ももをからませ、体を大きくのけぞらせてそのままキープ。足一本で全体重を支える大変さはおくびにも出さず、涼しい顔で視線ははるか遠くを見据える。つま先から指先一本一本まで意識した優雅な動きと体のラインの美しさは、まるで全身が芸術品であるかのような輝きを放っていた。

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 官能的な表現で知られるポールダンスに、アクロバティックな力強さを加えた競技・ポールスポーツの愛好者は世界に100万人いるとされ、新体操やフィギュアスケートのように技の難易度や正確さ、表現力で点数を競う。4分間に11種の技を流れるように繰り出す様には、圧倒されるばかりだ。

 高校2年生、17歳の谷口栞奈(かんな)さんは、競技を始めてまだ1年あまり。日は浅いが、4月の全日本選手権で優勝し、7月にイギリスで行われた世界大会では6位と好成績を修め、ジュニア界のホープとして期待されている。

プールからポールへ

 趣味の習いごとにすぎなかったポールスポーツの大会に出てみることにしたのは、素質を見込んだ先生の勧めがあったから。実は谷口さん、ポールスポーツを始めるまでの6年間は、主に水中にいた。シンクロナイズド・スイミングに取り組んでいたのだ。モチベーションを保てなくなって辞めることにしたが、陸に上がって出合ったポールスポーツは、シンクロ仕込みの「魅了する」表現力と柔軟性、一つ一つの技における丁寧さが生かせるため、自身の大きな武器になっている。

 初エントリーで初優勝という両親もびっくりの華やかな成果を手にしても決して舞い上がらず、練習は黙々と忍耐強くやるタイプ。手足に磁石がついているんじゃないかと思われるくらいのわずかな接面で体勢を保つほど美しさは映えるが、そのためには全身の筋肉がバランスよくついていなければならず、ポールを使った地道な練習の繰り返しが必要だ。

 「始めたころは全身あざだらけでしたが、耐性がついてきたので今はそんなに……。だけど太ももだけは毎回ポールに登るたびに圧がかかるので消えないままなんです」。右内ももに水たまりのように広がる青あざが、練習に費やしてきた時間を物語る。

 ただ、練習すればするほどできることは増えていくし、これから覚えたい技も山ほどある。吸収できることがいっぱいある今が、競技をしていて一番楽しい時期なのかもしれないと感じている。頭の中は常にポールでいっぱいで、「道を歩いていても道路標識の棒が目に入ると、『あの棒、登りやすそうだな』って思っちゃいます」と、アメリカ人の父譲りのグレーがかった澄んだ目を細めて笑顔を見せた。

最高難度の技を目指して

 あこがれているのは、フランス人選手のマリオン・クランぺ。左脇でポールをホールドし、逆立ちの状態になってから両足を180度開脚する様がまるで虹がかかったように見えることから名付けられた『レインボー』は彼女の得意技で、柔軟系最高難度とされる。「いつかは自分も」。谷口さんは夢を膨らませる。

 練習と勉強の両立も大変。神奈川の自宅から東京のスタジオに通うのも大変。演技構成を考えるのも大変。でも、そんなたくさんの大変を全部吹き飛ばすのが、「もっとうまくなりたい」という純粋な気持ち。その情熱が、青あざだらけの期待の新星を今日もポールに向かわせる。

(文・渡部麻衣子、写真・黒澤義教)

    ◇

谷口栞奈(たにぐち・かんな) ポールスポーツ選手。1999年8月生まれ。神奈川県出身。スタジオEye Candy所属

 撮影時に着用していた大会用の衣装は、母親の手作り。「シンクロの時からずっと、衣装は母が作ってくれています。3着ありますが、色は全部青。青が好きなんです」。水中のシンクロと陸上のポール。一番の違いを聞くと、「演技中に審査員と目が合うことです。水の中だと目は合わないですから」。それもあって、ポールの大会の方が少し緊張するという。

>谷口栞奈さんの写真特集

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