私の一枚

2世の葛藤を経て父・河島英五と再び向き合う 河島亜奈睦さん

  • 2016年9月5日

名前の「亜奈睦」は亜細亜からと、シルクロードの最終地点である奈良からとり、世界との架け橋になれるようにという意味をこめて名付けられた

写真:このたび、故・河島英五さんとの共演を果たす河島亜奈睦さん
このたび、故・河島英五さんとの共演を果たす河島亜奈睦さん

写真:河島英吾&河島亜奈睦「スペシャルコンサート2016~生きてりゃいいさ~」。9月10日、新宿FACEにて17時開演。全席指定5千円。問い合わせ/キョードー東京TEL0570-550-799 河島英吾&河島亜奈睦「スペシャルコンサート2016~生きてりゃいいさ~」。9月10日、新宿FACEにて17時開演。全席指定5千円。問い合わせ/キョードー東京TEL0570-550-799

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 これは、私が生後6日目。父、河島英五と共に撮影した写真です。「くじけるな」という添え書きは、女ながら4千グラムもある大きな赤ん坊で、体毛が濃かった私を見て、父はこれから先この子はいろいろあるだろうと心配したのかもしれません(笑)。

 父はいつもコンサートの出演や曲作りのための放浪で家にいなかったので、小さい私には時々くる怖いおじさんでした(笑)。一方、コンサートの河島英五は本当にかっこよくて。私は5歳の頃からライブに参加し、ファンの方と一緒に「英五~~!!」と叫ぶ熱狂的ファンだったんですよ。でも「カッコいい!」と思うと同時に、当時から私の中で「この人にはかなわん」という気持ちがあったんです。そんなプレッシャーからか早めの思春期で10歳の頃からやんちゃをいろいろして、父母にもひどく反抗するようになりました。

 今思うと、父に見放されてしまいたい。でも本当は見放されるのが怖いという複雑な気持ちで、そんな形でしか関われなかったんでしょう。実は見放される寸前でした。中1の時、自分の好きなバンドのBAKUの「ぞうきん」という曲を私が家で見よう見まねで弾き語りしていたら、父が「どこでギターを覚えたん?」と聞いてきたことがありました。この曲が好きな理由を「何にでも命が宿っている気がして」と答えたら、「こいつの目はまだ曇っていない」と見放すのをやめたそうです。

 この頃は作曲していても、父と比べられることが怖く縮こまっていました。それを見て、父はすぐ自分のバックバンドに参加させたんです。うれしかったけど難しくて、現場で父に反抗しつつ鍛えられましたね。その後、高校の同級生とバンドを組みました。これまでの鬱屈(うっくつ)した思いをすべて曲に注ぎ込み、河島の名前を伏せ、アナム&マキという名で路上パフォーマンスの時期を経てデビュー。父はすごく喜び「まず土俵にのらないと何もできないから、のれてよかったな」と。なのにその後、すぐ父は亡くなってしまうのです。

 危篤と聞き、病院にかけつけると、まだ意識のあった父が最後のアドバイスをくれました。そのころ、私が自分の心のうちだけを曲にしていたので「それもいいけど、誰かの心を歌にするのもありやから」と。その数時間後に亡くなりました。ずっと見守ってくれると思っていたので、さびしくてさびしくて、つらい気持ちが高まるあまり、早く逝ってしまった父に怒りさえわいて。つらい時期は長く、その間私も母となり、8年後の09年に父の歌を歌いたくてソロ活動を始めました。

 最初は覚悟が足りず、父の曲をほめられれば歌っているのは自分と腹がたち、自分の歌を父よりいいといわれると、父の偉大さを言いたくなり、どうしたらいいかわからず休業もしました。でも昨年、今度こそ父としっかり向き合おうと、父の日記や写真を見たんです。すると偉大だと思っていた父の葛藤や苦悩が見え、「父も普通の人間だった」と初めて気づき、自分も頑張れる気がしました。そして父の歌を私が届けたいと改めて思い、父の生前の歌とコラボするアルバムを作ると、私はずっと父と一緒に歌いたかったんだとわかりました。これからは自分の心と誰かの心を歌いながら、父とも一緒に歌い続けていきます。

    ◇

かわしま・あなむ 歌手 河島英五の次女。幼いころから父のステージでバックギター&コーラスとして参加。2000年にアナム&マキとしてデビュー。09年ソロ活動開始。中国、イギリス、フランスなど海外でも演奏活動を行う。現在は6歳の娘とのユニット「かわしまあなむとあいるら」の活動や楽曲提供など活動の場を広げている。

◆河島英五の没後15年。奇跡の親子共演が大阪公演に続き、9月10日に新宿で実現する。生前の英五の歌唱映像と、娘、河島亜奈睦の生の歌唱で親子初デュエット曲「生きてりゃいいさ」を披露。そのほか、今年出たアルバム、河島英五&河島亜奈睦の「セルフ・アンド・カバー2016~生きてりゃいいさ~」から。「酒と泪と男と女」「時代おくれ」など、多くのヒット曲で構成される。スペシャルゲストに、英五にゆかりのあるギタリスト、押尾コータローが出演する。

「新宿は私にとって初の場所なので、コンサート前に乗り込んでみようと、ゴールデン街にギターを持って流しに出かけてみたんです。すると、最初は奇異の目で見られましたが、歌うと、父の曲を聞いて励まされた方や好きだったといってくださる方たちにたくさん出会え、すっかり心強くなっています。『生きてりゃいいさ』は、私が母のおなかに宿ったことをコンサートからの帰宅途中に聞いた父が、新幹線の中で一気に書き上げた曲。なかなか歌えなかったのですが、東日本大震災の後、ラジオで歌って以来、大切に歌っています。今回のコンサートは父と同世代の方や、父の歌が好きだった方、そして私世代の方にも興味を持っていただき、ぜひ来てほしいですね」 

(聞き手:田中亜紀子)

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