小川フミオのモーターカー

世界の名車<第132回>史上最短時間で高級車になった「セルシオ」

  • 文 小川フミオ
  • 2016年9月12日

全長4995mm×全幅1820mm×全高1400mmと堂々たる車体

写真:外板のプレス機の精度も上げ歪(ゆが)みのない面を実現 外板のプレス機の精度も上げ歪(ゆが)みのない面を実現

写真:サスペンションの仕様により金属バネのA仕様からエアサスペンションのC仕様までの設定があった サスペンションの仕様により金属バネのA仕様からエアサスペンションのC仕様までの設定があった

写真:アメリカではドライバーズカーとして使われたため4ライトで、後席ドアの背後にウィンドウをもたない アメリカではドライバーズカーとして使われたため4ライトで、後席ドアの背後にウィンドウをもたない

写真:下から見ても美しく左右対称にすべてが配されている 下から見ても美しく左右対称にすべてが配されている

写真:4リッターV8エンジンは280psの最高出力、36.0mkgの最大トルクを発生して後輪を駆動 4リッターV8エンジンは280psの最高出力、36.0mkgの最大トルクを発生して後輪を駆動

写真:アメリカでもヨーロッパでもない独自の高級感を追求した内装 アメリカでもヨーロッパでもない独自の高級感を追求した内装

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 いわゆるバブル期に隆盛を誇り、日本車を代表するトヨタ・セルシオ。日本では1989年10月の発売だが、主市場のひとつであるアメリカでは、同年1月に「レクサス」ブランドとともに発表されていた。価格や性能でも、キャデラックやメルセデス・ベンツの牙城(がじょう)に迫る日本車として話題になった。

 セルシオ(レクサスLS400)開発の背景には、対米輸出自主規制がある。80年に、アメリカで販売される日本車がアメリカ車の台数を抜いたため、政府が課徴金や輸出規制をほのめかしたのだ。結局、台数が限られたため利益率の高いクルマで利潤を追求しようと、日本メーカーは高価格路線を選択した。同時に、製品開発力で力をつけ、トップクラスの欧米メーカーと勝負する気概を見せたかったのだ。それがセルシオの開発を後押しした。

 セルシオは新開発の4リッターV8エンジンを搭載。エンジンの加工精度を上げたり、エンジンから後輪までのドライブトレインを一直線に配置して振動を抑えるなど、徹底的に制震対策を施した。トヨタは当時、それを「源流主義」と呼んでいた。ボンネットにクープグラスでタワーをつくり、エンジンをかけても倒れない様子を映したビデオも話題になった。

 力のあるV8エンジンや電子制御サスペンションによる走りは、新しい時代の高級車とはかくあるべしというマニフェストともいえ、欧米の高級車メーカーに大きな影響を与えた。「史上最短時間で“高級車”になったブランド」とも評された。志と誇りがつくり上げた、世界に通用する高級ブランドのスタートだった。

PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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