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京都で異例のロングラン 忍者も芸者もいない「日本的」なショーって?

  • エンターテインメントショー『ギア-GEAR-』
  • 2016年9月29日
せりふを使わない「ノンバーバル パフォーマンス」。その様子はフォトギャラリーからも、どうぞ。

 舞台は、近未来の廃工場。人間が去ったあとも働き続ける人間型ロボットたちの前に、かつてこのおもちゃ工場で作られた1体の「ドール」が現れて――。

『ギア-GEAR-』

フランス人家族など欧米人を多く見かけた。最近は事前予約しない外国人が入れないほど、日本人のリピーターが増えている

『ギア-GEAR-』

総勢24人いるキャストのうち、毎回5人が日替わりで登場するため、組み合わせの妙もリピーターが増える理由のひとつ

 京都市の三条通にあるレトロな建物の3階。100席しかない小劇場で、来月1500回を突破する異例のロングラン公演が始まった。客席とステージの間は手を伸ばせば届きそうな距離。電気が消え、工場を模したセットが光の線で縁取られていく「プロジェクションマッピング」に興奮度は一気に急上昇。4人のパフォーマーがロボットダンスで登場すると、あっという間に引き込まれた。

 京都観光といえば神社仏閣のイメージだが、知的好奇心の高い外国人観光客たちが口コミで広めたものは一味ちがった。2012年から始まった京都発のエンターテインメントショー『ギア-GEAR-』だ。パントマイム俳優、ダンサー、マジシャン、ジャグラーの4人のパフォーマーと、「ドール」役の女優の計5人のキャストが出演し、それぞれが世界大会で優勝するようなスゴ技を披露しつつ、息の合った掛け合いで一つの物語を作り上げる。せりふはなく、表情やしぐさもみどころだ。  

『ギア-GEAR-』

別ジャンルのパフォーマーたちが一つの物語を作り上げる。最後にみんなで踊るシーンは、ダンスカンパニー「コンドルズ」の近藤良平氏が振り付けを考えた

 「見た目は全然日本的じゃないけど、コンセプトは『和』なんです」とギアのプロデューサー、小原啓渡さんは語る。最初、外国人を呼び込むには忍者や芸者といった、わかりやすいモチーフを入れるべきだと周りに言われた。でも、20年以上歌舞伎に携わっていた小原さんは「中途半端な日本っぽさ」が許せなかった。それなら、日本文化の本質をアピールしたい。「イエスかノーか、善か悪か。そんな世界の中で、『わかるけどな、まあまあ』っていう第三の道を持っているのが日本人の概念。『ギア』では、パフォーマー一人ひとりの個性が違っても連動できる、調和の『和』の精神を伝えたかった」

 昨年、ロシアの演劇プロデューサーの熱望を受け、『ギア』のモスクワ公演をしたときのこと。脚本や演出、セットは同じだが、現地スタッフと現地キャストが手掛けた「ロシア版」だ。完成品を見て、小原さんは「あれ?」と思った。「技術は抜群に高い。でも、それだけなんですよ。パフォーマーの演技は、ソロ以外はどうでもええという感じで、自分の技を見せるだけのショーになっちゃった」

 例えば、『ギア』では、マジシャンであっても、ダンスをしなければいけない。なぜマジシャンの自分がダンスを練習しないといけないのか。最初は京都でも演者たちにとまどいはあった。でも日本人はちゃんと仕上げてきて、ストーリーに沿って笑いあり涙ありのひとつの舞台になる。「これって実は、日本人にしかできない技なんやないか、と。海外ではパチられへんわ、って思いましたね」

 演出には、歌舞伎の手法を多く取り入れた。中央の舞台装置を回転して場面転換する「廻(まわ)り舞台」、建物が倒れるように見せる「屋台崩し」。それらをプロジェクションマッピングや1600万色のレーザー光線など最新技術と合わせ、臨場感あふれる見たことのない舞台を作り出した。

  ロングランを支えたのは、京都に多く訪れる欧米人を中心とした外国人観光客だった。意外にも「ベリージャパニーズ!(とても日本的)」と絶賛する声が多く、リピーターも増えている。コンパクトな空間でハイテクノロジーと個々の超絶技巧を細かく組み合わせ、言葉がなくても五感で表現するところに日本人の文化を感じとるのかもしれない。

 80分の舞台はめまぐるしく流れていく。ブレークダンスに観客を巻き込んでのマジック、ジャンプした残像が宙に浮かぶCGに遠隔操作で色が変わるLEDドレス。そして、まったく違う動きをしながら、まとまっていく全員のダンス……。京都の小さな劇場は、いつの間にか小宇宙になっていた。

(文 塩見圭)
(写真 塩見圭/ART COMPLEX)


場所名:ギア専用劇場(ART COMPLEX 1928)
住所:京都市中京区三条御幸町角、弁慶石町56の1928ビル3階
アクセス:阪急河原町駅から徒歩8分、京阪三条駅から徒歩8分、地下鉄烏丸御池駅から徒歩10分
電話:075・254・6520(チケット窓口0120・937・882)
ホームページ:http://www.gear.ac/
メモ:原則、月水金の午後2時と7時、土日祝日の正午と5時に公演(臨時休業もあるため、日程はHPで確認を)。前売りはスペシャルエリア4200円、スタンダードエリア3700円、サイドエリア2700円。今は2017年1月末までの公演チケットを、インターネットや電話で発売中。誕生月には特典プラン付き。キャストスケジュールはHPにて不定期で更新している。

マウスホイールのスクロールでも見ることができます
(Windows IE6以降・Mac Safari3以降推奨)
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