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小舟に揺られてお堀めぐり 郷愁誘う穏やかな時間

  • 柳川川下り
  • 2016年11月10日
江戸時代に造られた掘割が縦横に走り、独特の景観を持つ水郷・福岡県柳川市。
船頭が1本の長い竿(さお)を操り、のんびりと進んでいく様子をフォトギャラリーからも、どうぞ。

 かすむ岸辺に柳の緑 もえてうれしや気もそぞろ――。のんびりと掘割を行くどんこ舟をさお1本で巧みに操りながら、船頭がよく通る声を辺りに響かせる。なまこ壁の土蔵や柳が揺れる遊歩道、長い歳月を刻んできた木製の素朴な橋……。郷愁を誘う穏やかな景色がゆっくりと流れていく。

柳川川下り

客を乗せたどんこ舟が次々に出発する。ここはまだ掘割ではなく、有明海に注ぐ矢部川の支流だ

柳川川下り

水門橋の幅はどんこ舟がぎりぎり通過できる程度。ちょっとドキドキ

 江戸時代に立花藩の城下町として栄えた福岡県柳川市。城を囲むようにして縦横にめぐらされた掘割が今も残り、風情ゆたかな水郷として知られる。柳川出身の詩人、北原白秋は郷里の情景に強い思い入れをもち、「この水の柳河こそは、我が詩歌の母体である。」(「水の構図」より)と書き記している。

 かつては飲料や洗濯などにも使われ、現在も防火・農業用水として人々の生活に寄り添う掘割は、戦後に始まった「お堀めぐり(川下り)」によって多くの観光客に親しまれるようになった。堀端には複数の事業者の乗船場が点在。気軽に乗れる乗合船が頻繁に行き交い、細長い小舟に揺られながら柳川の街並みを眺めることができる。  

柳川川下り

舟を巧みに操りながら乗客も盛り上げる船頭の堤浩章さん。小さな橋をくぐるときは、「みなさん狭いので気を付けてくださいね。でもそう言っている船頭が消えていることがあるんですよ」

 1961年に初めて川下り観光を始めた柳川観光開発は、西鉄柳川駅に近い松月乗船場から外堀を経由して内堀を進む約4.5キロ、70分のコースを運航。最近では韓国や台湾、香港などアジアを中心とした外国人客が乗客全体の約3割を占めている。

 「ようこそ柳川へ。Welcome to Yanagawa! みなさんはどちらからいらっしゃいましたか?」。舟がゆっくりと乗船場を離れると、ベテラン船頭の堤浩章さんが15人ほどの乗客に呼びかけた。台湾から来た女性が乗船しているとわかると、柳川の歴史や名所を案内するかたわら、時折中国語を話題に盛り込みつつ軽妙なトークで船内を和ませる。

 進路には、こんなところをくぐり抜けられるのかと思うような小さな橋がたびたび現れる。「狭いから気をつけてくださいね」と堤さんが日本語と中国語で声をかけ、みんなで頭をぐっと低くしてやりすごす。ちょっとスリリングで楽しいひと時だ。

 外国人客の増加にともない、柳川観光開発の船頭たちは毎朝の朝礼で韓国語、中国語、英語でのあいさつと、安全上の注意を呼び掛ける言葉を練習しているそうだが、それ以外の「フリートーク」は各自の腕次第。堤さんは北原白秋が作詞した童謡「あめふり」や、テレサ・テンも歌った「夜来香」を日本語と中国語で披露し、台湾の女性は楽しそうに聴いていた。

 「外国人客にはリピーターが多く、40回くらい来ている顔なじみの韓国人の男性もいます。疲れると柳川の景色を見たくなるそうですよ」と同社営業部長の亀崎博司さんは話す。家族3人で一度来て気に入り、半年後に親族を引き連れて約20人で再訪した台湾人もいるそうだ。

 

 水上からノスタルジックな柳川の景色を楽しむ時間に魅力を感じるのは外国人も同じ。それゆえ、言語別に便を分けてすべての案内をきっちり外国語対応にしたりするようなことは考えていない。「たまたま乗り合わせた人たちの間に一体の空気が生まれるのが乗合船のよさ。安全にかかわる基本的な情報は各国語で伝えて、あとは外国の方にも一緒に『日本の時間』をゆったりと味わってもらえればと思っています」

(文・写真 谷口絵美)


場所名:柳川観光開発 松月乗船場
住所:福岡県柳川市三橋町高畑329
アクセス:西鉄柳川駅から徒歩5分
電話:0944・72・6177
ホームページ:http://www.yanagawakk.co.jp
メモ:川下りは毎日運航。乗合船は予約不要で乗船できる。出発時刻は午前9時~午後4時台の毎時10分・40分と、5時。10分前までに受け付けを済ませる。雨天催行(雨具貸し出し)。1600円、6~11歳800円。乗船券と西鉄の乗車券などがセットになったお得な切符も各種用意されている。

マウスホイールのスクロールでも見ることができます
(Windows IE6以降・Mac Safari3以降推奨)
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