私の一枚

高校時代、借金して買った中古ギターが原点に 押尾コータローさん

  • 2016年11月28日

2004年11月。ポートランドのジョン・グレーベン氏の工房にて。それから彼との交流は続き、今度日本でグレーベンのオリジナルブランドが立ち上がることになったそうだ。ギターの要ともいえるトップ板はグレーベンが手がけ、あとは日本で製作することに。「プロトタイプを弾かせてもらったのですが、ちゃんとグレーベンの音がしました」。Made in Japanのグレーベンギター押尾モデルが出るのも間近=相川浩二撮影

写真:アコースティックギター一本で、音楽シーンを駆け抜けている押尾コータローさん アコースティックギター一本で、音楽シーンを駆け抜けている押尾コータローさん

写真:押尾さんのアルバム「KTR×GTR」。DVD付きの初回限定版3333円(税別)、通常版2963円(税別) 押尾さんのアルバム「KTR×GTR」。DVD付きの初回限定版3333円(税別)、通常版2963円(税別)

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 これはデビュー3年目の2004年、愛用のギターの作り手ジョン・グレーベン氏に会いに、米国ポートランドの工房に出かけた時の写真です。今もほとんどグレーベンのギターで演奏していますが、当時は高校時代に中古で買って以来大事に使っていたものと、30歳で買い足したDタイプのグレーベン2本がメインでした。

 訪問の目的は、グレーベンのギターを長年使い、メジャーで活動するようになり、そのうれしい気持ちを直接伝えたかったから。新しいほうのDタイプのギターと、それでレコーディングしたアルバムを持っていきました。デビューアルバムのCDジャケットには1本目のグレーベンの写真を使っていたので、とても喜んでくれました。また日本から「押尾と同じ型のギターがほしい」との注文もあったようで、グレーベンさんは僕の名前を知ってくれていて、「遠いところからよくきたな」と大歓迎してくれたんです。

 この写真は、ギターに使う木を見せてくれている瞬間です。現在は入手困難といわれる「ハカランダ」という木のストックも工房にはたくさんありました。新しく作ったギターも次々見せてくれ、それを弾かせてもらっていると「写真を撮っていいか?」と、嬉々として撮影するなど、天才職人の素の部分も見られて、本当に楽しかったです。

 僕がグレーベンのギターを使い続ける理由は、それが僕の演奏のすべてを余すところなく表現できるからです。ボディにタッピングを行う激しい弾き方にも応えてくれるし、温かい音も重低音もきれいに出してくれる。

 グレーベンのギターを初めて手にしたのは、高校3年生の時。当時の師匠であり、憧れのギタリスト中川イサトさんが、「いいギターが入ったよ」と一緒にお店に行ってくれまして。それはイサトさんも使っていたグレーベンの中古品でした。25万円ととても高かったけど、師匠に勧めてもらったギターを断りたくなく、母に無理をいって借金して買いました。今思えば、そのギターを手にしたことで「これで世に出る」と決意したような気がします。ギターが大好きだったし、若さゆえのパワーもあって、毎日ひたすらギターに向かいましたが、弾けば弾くほど自分になじみ、最高の相棒となっていきました。

 アコースティックギター一本の演奏で34歳でメジャーデビューするまで、不思議と焦りはなかったですね。でも音楽も音楽以外のバイトも目の前の仕事はなんでもハングリーにやっていました。メジャーデビューが決まると、作品作りにスタッフからいろいろな意見をいただくようになりましたが、それを変に拒むことなく、受け入れてよりよい音楽を作っていこうと思えたのも、遅咲きだったからこそと思うんです。若い時だったら自分の好きなようにやりたいと突っ張ったかもしれませんし、年齢がいっていたからこそ、せっかくの機会を大切にできた気がします。

 気が付いたら14年。今は40本ほどのギターを持っていますが、やはりメインで使うのはグレーベン。そして僕は今もギターが大好きです。コンサートが終わった直後でさえ、「さて、ギターでも弾くか!」と手にとってしまうほど(笑)。年を重ねても、ギター少年の心を忘れず「アコースティックギターはカッコいい」ことを世の中に伝えるため、これからもメジャーの舞台でがんばりたいですね。

    ◇

おしお・こーたろー アコースティック・ギタリスト 1968年大阪生まれ。2002年メジャーデビューし、同年10月全米でメジャーデビューを果たす。スイスの「モントルー・ジャズフェスティバル」へは02年から3年間連続出場。その色鮮やかで温かい演奏は世代と国境を越え多くの人に支持され、意欲的にライブ活動を行っている。

◆11月9日にリリースされた、押尾さんのニューアルバム「KTR×GTR」。来年メジャーデビュー15周年を迎える押尾さんのメジャー通算14枚目のアルバムだ。本人出演の三菱電機カーナビゲーションシステムのCMテーマ曲「Together!!!」、MBSラジオお天気のお知らせテーマ曲「Magical Beautiful Seasons」、今年2月に公開されたアニメ『同級生』メインテーマなど全16曲。また来年2月からは全国47都道府県をめぐる15周年のライブツアーも予定している。詳しくは押尾コータローオフィシャルサイト(www.kotaro-oshio.com)で。

「タイトルは僕の名前のコータローと、ギターの表記が似ていることに気づき、『一心同体』という意味でつけました。来年15周年を迎えますが、ギター一本でやってきてさまざまな出会いがありましたが、まだまだギターで伝えられることがある喜びを感じています。今回はいろんな意味で「押尾コータローここにあり」というアルバムになったと思います。歌がないギターだけの演奏は、聴く人の気分によって、明るい曲が悲しく聞こえたり、その逆もあったりなど、聞こえ方が異なるのが面白いところ。ぜひご自分の感情で色合いの変わるギター演奏を自由に楽しんでください」

(聞き手:田中亜紀子)

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