小川フミオのモーターカー

世界の名車<第144回>小さいけれど本格派「マツダ・キャロル」

  • 文 小川フミオ
  • 2016年12月19日

全長2980ミリの車体でフロントは荷室になっている

写真:キャロル360の4ドアは1963年に登場 キャロル360の4ドアは1963年に登場

写真:リアエンジンのため冷却用スリットが特徴 リアエンジンのため冷却用スリットが特徴

写真:リアクオーターピラーのデザインが個性的 リアクオーターピラーのデザインが個性的

写真:アルミニウム多用に加え半球形燃焼室にクロスフローと凝った設計の水冷4気筒エンジン アルミニウム多用に加え半球形燃焼室にクロスフローと凝った設計の水冷4気筒エンジン

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 いまはスポーツカーメーカーとしても定評のあるマツダだが、乗用車の原点は軽自動車だった。まだ東洋工業という社名だった1962年に発売されたキャロルは当時世界最小といわれた水冷直列4気筒エンジンを搭載。初期型は358ccの排気量から18馬力の最高出力と2.1kgmの最大トルクを発生した。現在の軽自動車、たとえばダイハツ・タントは658ccの排気量から58馬力、6.6kgmだから数値をみると隔世の感がある。

 凝った設計のエンジンだったが初代は当時から“パワー不足”と言わたため、63年にははやくも20馬力となった。2.4kgmの最大トルクの発生回転数も初期型の5000rpmから3000rpmへと設定が変えられ、日常生活での使い勝手はうんと向上した。いっぽうリアに搭載されたエンジンは、おそらく走行性能にとって重要な重量バランスを考えて軽量のアルミニウム製だった。パワーはともかく、基本設計をみると、マツダは当初からスポーティーなクルマづくりを目指していたといえる。

 キャロルはキャビンの形状がユニークだった。側面からみるとリアクオーターパネルが一般とは異なり逆ぞり。当時はフォード・アングリア105E(59年)やシトロエン・アミ6(61年)など大衆車に多かったスタイルである。ルーフの前後長がとれるので後席乗員のヘッドルームが広くなるとか機能的な理由づけをあげる向きもあるが、実際は車体が大きく見えるというマーケティング上のメリットが重視されたのではないだろうか。

 キャロル360は62年から70年まで2ドアと4ドアが作られ、並行して62年から66年まで28馬力のキャロル600も販売されていた。いっぽう64年には782ccの初代ファミリアが、67年にはファミリア1000がデビュー。さらに67年にはコスモスポーツ、68年には100馬力のファミリア・ロータリークーペとこの頃のマツダ車はものすごい勢いで車種拡充していた。

 キャロルはコンパクトにまとめたスタイルがいまも魅力的だけれど、高性能化に忙しかったマツダはキャロルのコンセプトを継続発展させるのに情熱を持てなかったようだ。70年に生産を打ち切り後継車種はつくらなかった。72年にシャンテなる軽自動車を発売したがそれも75年には生産中止。次にキャロルの名とともに軽自動車を手がけようになるのは89年である。こちらは“ほらカワイイでしょう?”とちょっと狙いすぎ。軽自動車だけれど本格的な自動車をつくりたいという初代キャロルの理想主義に通じるものは感じられなかった。

PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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