今日からランナー

練習なしでマラソンに臨んだらどうなる?

  • 文 山口一臣
  • 2017年1月6日

  

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 アテネ五輪の金メダリスト、野口みずきさんの名言に「走った距離は裏切らない」というのがある。マラソンというスポーツは努力が結果に結びつきやすいということを端的に表した言葉だと思う。とくに我々おやじランナーレベルでは、「才能」よりも「努力」が大事だ。努力(練習)をすればするほど、ほぼ確実に結果(記録)が得られる。では逆に、練習なし、ほぼぶっつけ本番でレースに臨んだらどうなるか? 実験してみた。12月11日に宮崎市で行われた第30回青島太平洋マラソンでだ。結果は予想通り、惨憺(さんたん)たるものだった。以下、その報告である。

 私ゴトで恐縮だが、11月30日付で朝日新聞社を早期退職した。いまは「おやじベンチャー」と称して起業準備中の身だ。そんな事情もあって、この数カ月はほとんど練習ができなかった。とくに10月、11月は連日の送別会での暴飲暴食、体重管理もできなかった。連載2回目で書いたボストンマラソンの時と比べて、なんとプラス6kgというとんでもない事態になっていた。一瞬、棄権も考えたが、そうだ! この連載のネタになるし、実験として走ってみようと思い直した。そこで改めて思い知らされたのが、マラソンの神様はしっかり練習したランナーにはすてきなご褒美を与えるけれど、怠け者のランナーには苦難の道を授けるのだということだった。

 マラソンはスタートラインに立った時点で結果が見えるといわれている。それまでにどれだけ練習を積んできたかがすべてで、当日の「結果オーライ」はあり得ない。では、今回の私のようにほとんど練習ができていない人はどうなるのか? 2月の東京マラソンでは3時間41分19秒で自己ベストを記録した自分がどこまで落ちるか。「あおたい」の呼称で親しまれている青島太平洋マラソンの制限時間は6時間。スタート時点での目標はとにかくその時間内で完走すること。体重が増えていたので、もしかしたら歩いてしまうかもとの予感はあったが、ゆっくり走れば大丈夫だろうと考えていた。そこでキロ6分半~7分というスローペースを設定し、歩かず走り切れれば5時間は切れるとのもくろみを立てた。走り始めは順調だった。

 ところが、12km付近でマンホールの段差につまずいてまさかの転倒。右ヒザを擦りむき、胸を強打した。もうダメかと思ったが、立ち上がってペースを復活させるも25km~26kmにかけての緩い上り坂でペースがだんだん落ち始める。同時に脚の痙攣(けいれん)が始まった。しかし、ここで歩いたら5時間は切れない。脚をだましつつ、さらにペースダウンして引っ張った。給水所では立ち止まって屈伸もした。とにかくゆっくりでいいから歩かず走り切りたい。だが、そんな願いもむなしく30km付近の下り坂で突然、脚がビクンとつった。「キタッ~」って感じ。

 ここで、5時間切りの薄い望みが絶たれた。

 立ち止まってストレッチをして走り出すと、再びつりそうになる。過去に脚がつって歩いたレースはオーバーペースが原因だった。こんなにゆっくり走っているのに脚が持たなかったのは初めてだ。しかも、ゴールまでまだ10kmもある。ちょっと走っては歩き、ちょっと歩いては走るを繰り返したが、走ろうとするとすぐに脚が痙攣を始める。これではラチがあかないと判断して、“速く歩く”戦法に切り替える。キロ12分~13分で計算すると、5時間半くらいでフィニッシュできそうだった。さらに歩く速度を上げてガーミン(時計)を見ると、キロ9分台で歩けていた。歩いている限り、脚の痙攣はこなかった。そこから先は競歩のようにズンズン歩いた。ゆっくり歩いている人を何人も抜いた。自分より遅い人がいるのは励みになる。ただ、キロ9分台で歩き続けるのはかなりシンドイ。こんな辛いレースは初めてだ。やっぱり練習しないとダメだなぁ。

 残り2km弱のところで恐る恐る走ってみたら、なんとかイケそうだった。ゆっくりとしたジョギングペースで、なんとかゴールまで到達した。満身創痍(そうい)のヘロヘロだったが、ネット5時間15分47秒で過去のワースト記録(5時間26分)を更新することはなかった。よかった。そしてマラソンの神様に誓った。次はこんなことがないよう、しっかり練習してまた来ます、と。

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