小川フミオのモーターカー

世界の名車<第10回>アストンマーティン

  • 文 小川フミオ
  • 2013年6月17日
DB4(1958年)は3.7リッター6気筒搭載

写真:DB5(63年)はリアデザイン変更と4リッターが特徴DB5(63年)はリアデザイン変更と4リッターが特徴

写真:DBR1は56年にルマンでデビューした後、3年間活躍DBR1は56年にルマンでデビューした後、3年間活躍

写真:V12バンティッジS(2013年)は573psの史上最速アストンV12バンティッジS(2013年)は573psの史上最速アストン

写真:ラピードS(13年)は09年のラピードを上回る558psラピードS(13年)は09年のラピードを上回る558ps

写真:バンティッジGTEで13年のルマン24時間レース参戦バンティッジGTEで13年のルマン24時間レース参戦

写真:CC100は6リッター12気筒搭載のコンセプトモデルCC100は6リッター12気筒搭載のコンセプトモデル

 スポーツカーといえば、イタリアのフェラーリ、ランボルギーニ、ドイツのポルシェ、そして英国のアストンマーティンが挙がることが多い。アストンマーティンは1913年に、ライオネル・マーティンとロバート・バムフォードが英国で設立したメーカーで、戦前は、ヒルクライム、サーキット、耐久レースと数々のレースで優秀な成績を残した。それによって名声が確立した。

 資金不足で悩んだアストンマーティンが新しいオーナー、英国人の実業家、デイビッド・ブラウンを迎えたのは47年。このときから伝統的な車名「DB」が使われるようになった。そして48年にはDB1、50年にDB2、58年には美しい軽合金ボディーのDB4、63年にDB5が発売され、世界の富裕層のあいだでアストンマーティンの人気は定着した。

 並行してレース活動にも寄与した。52年に発表された戦後初のレーシングモデルは、市販車に連なるDB3の名称を与えられていたことから、アストンマーティンが、レースをマーケティングの重要なツールととらえていたことが分かる。続いて56年にはDBRが登場して、欧米のスポーツカーレースで活躍した。

 アストンマーティンは大規模なメーカーではなく、戦後はフェラーリのようにレースで大活躍したわけでもないが、その名がよく知られているのは、007シリーズ(『ゴールドフィンガー』」)の恩恵もあるだろう。実際のクルマはというと、80年代前半までは大排気量を武器にした大味な運転感覚だった。しかし、87年にフォード傘下に入ってから、素晴らしいエンジンとスポーティーなハンドリングと、美しいボディーを持つリアル・スポーツカーとして再生を果たす。

 8気筒エンジンと12気筒エンジンを持っていることも強みで、最新モデルは、シャープに吹き上がる12気筒をフロントに搭載したV12バンティッジSだ。快適なドライブを求める人はDB9やV8を、スポーティー志向の人は、8気筒エンジン搭載のV8バンティッジを。また4人乗りが好みの人は4ドアのラピードをと、ラインナップは豊富に用意されている。

 アストンマーティンのクルマとしての出来のよさは誰しもが認めるところだが、もうひとつ、世のクルマ好きを魅了するのは、再生のストーリーの背後にある、ドイツ人のドクター・ウルリッヒ・ベツの情熱だ。ポルシェやBMWにも籍を置いた優秀なエンジニアであるドクター・ベツは現在、CEOとしてアストンマーティンを牽引している。

 ドクター・ベツの貢献は、高額な新型車開発のための資金の調達にはじまり、苛烈なルマン24時間レースなど耐久レースへの継続的な挑戦と好成績、さらに水素/ガソリンハイブリッドのスポーツカーでの耐久レース参戦など、将来を見据えた技術開発にも余念がないという全方位の目配りとして高く評価できる。

かつてロールスロイス・ファントムなども手がけた英国生まれのデザイン・ディレクター、マレック・レイクマンによるスタイリングは、新しい時代のアストンマーティンの位置づけが明確で、エレガントさとアグレッシブさがほどよくブレンドされている。ボディーラインはロジカルに整理され、万人受けのするデザインだ。

 一方、2013年に100周年を記念してデザインされたコンセプトモデル、CC100は、かつてレーシングカーでも使っていたイエローのラインをグラフィカルに配することで躍動感を生む手法を用いて新鮮だ。5月にイタリア・コモ湖畔のビラデステで開催された『コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ』(ヒストリックカーのエレガンス・コンクール)にも、プロトタイプクラスで出展し、凝ったディテールがクルマ好きの関心を呼んでいた。その場に現れたドクター・ベツが嬉しそうに乗車している姿を目撃することも出来た。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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