小川フミオのモーターカー

世界の名車<第11回>ホンダ Sシリーズ

  • 文 小川フミオ
  • 2013年7月1日
1963年発表のS500

写真:S800の本格的なコクピット(1968年)S800の本格的なコクピット(1968年)

写真:S800にはクーペモデルも(1966年)S800にはクーペモデルも(1966年)

写真:今も人気が高いNSX(1990年)今も人気が高いNSX(1990年)

写真:ミッドシップの軽自動車、ビート(1991年)ミッドシップの軽自動車、ビート(1991年)

写真:本格的スポーツカー、S2000(1999年)本格的スポーツカー、S2000(1999年)

 ホンダは創業以来、スポーティーなクルマをつくる企業というイメージが強かったが、1990年代後半からは、ミニバンと軽自動車とハイブリッドのラインナップを強化。ファミリーカー路線を突っ走るかと思いきや、2015年からマクラーレンF1チームへのエンジン供給を発表した。

 本田宗一郎によって本田技研工業が創設されたのは1948年。ホンダの二輪は、世界のレースで好成績を残し、その名を知らしめるようになった。そして、クルマのスタートはスポーツカーだった。2013年に50周年を迎えるS500という、コンパクトな2座オープンスポーツカーがホンダの量産車第1号である。

 S500は、531ccの高回転型4気筒DOHCエンジンを搭載した、小粋なスタイリングのクルマだった。メカニズムに凝っているのも、二輪で頭角を表したホンダらしく、たとえば駆動は一般的なシャフトではなく、まるで二輪のようにチェーンで行っていた。

 S500の全長は3300mm、全幅は1430mm。衝突安全基準などで大型化が進む現代の水準からすると小型な寸法だが、よく回るエンジンやしっかりしたサスペンションを持ち、軽快な走りと特徴的なスタイリングには今もファンが多い。64年には排気量をアップしてS600に、さらに66年には791ccエンジンのS800へと発展した。S800ではチェーン駆動ではなくシャフト駆動となり、ホンダの乗用車生産はこのあたりから世界を視野に入れて本格化していくのである。

 ホンダはSシリーズと並行して、モータースポーツにも積極的だった。64年にはF1にも自社製のマシンで参戦し、68年に撤退するまで2回優勝した。オイルショックに見舞われた70年代後半は、多くの自動車メーカー同様、暗黒ともいえる時代だったが、厳しい燃費規制をCVCCという独自のエンジン技術でクリアしたのは、世界でホンダだけだった。80年代には数々の技術革新で長いトンネルを抜けると、85年に再びF1に復帰した。まずはウィリアムズに、その後87年からはマクラーレンにエンジンを供給。後者は特に、天才アイルトン・セナがドライバーだったこともあり、ホンダにとってももうひとつの黄金期となった。

 80年代のホンダは、シティ、シビック、CR-X、プレリュードなどユニークなコンセプトでヒットを飛ばし続ける。90年に高性能V6エンジンを搭載したスポーツカー、NSXでスポーツカー市場へと返り咲いた。続く91年には、軽自動車規格でありながら、本格的なミッドシップ・スポーツ、ビートを送り出し、S500以来の伝統でもある“ホンダは若者のメーカー”というイメージをよみがえらせたのだった。

 99年には、本田技研工業創立50周年企画として本格的な操縦性能を有するフロントエンジン/後輪駆動のフルオープン2シーター、S2000を発表。オーストリアの専門メーカーに開発を依頼したエンジンは、まるでレースカーのように繊細だった。操縦性もしかり。

 今、日本では手軽に乗れるスポーツカーはあまりない。ホンダはスポーツカー・メーカーだと信じているファンのためにも、また魅力的なモデルをつくってほしい。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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