山口一臣 読み比べ週刊誌

週刊誌のバカバカしい努力

  • 文 山口一臣
  • 2013年8月1日

写真:    

写真:週刊現代(講談社)2013年8月10日号週刊現代(講談社)2013年8月10日号

 週刊現代(8月10日号)がちょっと面白いことをやっている。みなさんにとっては「なぁ〜んだ」と思われるかもしれないが、元同業者のわたし的には思わず「ニヤリ」とさせられる。表紙の上段にこんなコピーが刷られていたのだ。

<じぇじぇじぇ! 開けてビックリ[史上初の快挙]「アノ声が出る袋とじ」を作りました>

 こりゃ、スゴイ! 巻末の袋とじを開くとグラビアに出ている女性モデルの「アノ声」が飛び出すのかと思ってドキドキしながら切り開いたら、まあ予想されたことではあるが、何のことはない。中にQRコードが貼ってあって、アクセスするとそのモデルさんが誌面に掲載された官能小説の一節を朗読してくれるという仕掛けだった。

 袋とじを開けながら、9割9分はそんなことだろうと思いつつ、1分は見たこともない何か画期的なアイデアが施されているかもしれない、と思って期待した自分がバカだったことを思い知らされる。でも、こういう「だまし、だまされ」羊頭狗肉ギリギリを味わうのも、実は「正しい週刊誌の楽しみ方」といえるのだ。

 実際にバーコードリーダーをかざすと、発売3日目で再生回数が4491回と出た。せっかくの挑戦も、販売に大きく結びついたとはいえなそうだ。しかも、モデルさんの朗読が平板でイマイチ物足りなかった。ただ、こういう遊び心はおおいに大事にしてもらいたい。

 週刊現代といえばかつて、これも「業界初!」と銘打って「3Dグラビア」を掲載したことがあった。綴じ込んである赤と緑のメガネをつけると、グラビアが飛び出して見えるのだ。石川遼のスイングや浅尾美和の美しい肢体、当時、話題になっていた小向美奈子のヌードなんかも3Dで見せていた。

 かくいう私も週刊朝日の編集長時代にいろいろバカなことを考えたものだ。世間をアッと驚かせたいというのは、編集者の「性」でもある。

 まず、本から本当に音が出せないか? 子どものころに「ソノシート付き雑誌」が流行ったことを思い出して、表紙に音源を刻み込めないかとか、ソノシートをおまけに付けられないかとか(もう、ソノシートを知らない世代も多いんだろうなぁ)。匂いの出る絵本があると聞いて、じゃあ土用のうなぎに合わせて「匂いの出るグラビア」はできないか、とか。

 いずれもアイデア倒れで実現しなかった。定価の安い週刊誌では、かけられるコストが限られているからだ。

 QRコードが出始めたころには、電車の中吊りにQRコードを貼って、特集記事のさわりだけ読めるようにならないか、とか。これはJRに拒否され断念したように記憶している。確かに、満員電車で中吊りにバーコードリーダーをかざすのは危険行為になりかねない。

 実現したけど、結果は失敗だったのが抗菌印刷だ。そんなものあるのかと思われるかもしれないが、あるのである。特殊インクを使うことで、抗菌効果の出る印刷技術が。世の中の清潔ブームに乗じてPRもしてみたが、売り上げにはほとんど結びつかなかった。ちょっとは話題になると思ったんだけどねぇ……。

 週刊誌に限らず雑誌はもちろん内容で勝負するのが王道だが、こういうバカバカしい努力にも気づいていただけるとありがたい。

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

PROFILE

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊朝日の記者として9.11テロを、編集長として3.11大震災を経験する。週刊誌歴3誌27年(週刊ゴルフダイジェスト→朝日ジャーナル→週刊朝日)。2006年11月〜11年3月まで週刊朝日編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。13年4月から有楽町と浜離宮にある朝日ホールの総支配人。

おすすめ

夏に大活躍の「防水デジカメ」。購入するときにチェックするポイントは?

映画も本も!新幹線や飛行機で、暇を持て余してしまう人にぴったりなのは?

観察した天体の動画や画像をPCに取り込んで、あなただけのプラネタリウムを

パソコンやタブレットは人間以上に高温に弱い…

もしも高校時代にこんな本があったら、もっと古典を好きになったかもしれない…

扇風機付き日傘や、満員電車でも首を涼しくしてくれる扇風機…夏の通勤を少しでも快適にしてくれるのは?


Shopping

美人記念日

Columns

  • &THEATER 映画情報

  • 出石尚三の紳士服飾研究

  • 岸田一郎 艶出し講座

  • 男のための逸品

  • 今月のライフスタイル誌編集長

  • 上間常正 @モード

  • おめかしの引力

  • モードな街角

  • シトウレイのHello Dandy!

  • 加賀見商店

  • 男の服飾モノ語り

  • 小川フミオのモーターカー

  • 大人の男の作法

  • 山口一臣 読み比べ週刊誌

  • クリックディープ旅

  • ノジュール 目からウロコの旅プラン満載

  • 中村江里子 パリからあなたへ

  • 親子で読みたい本

  • フォー・ユア・コレクション

  • 競馬ウィークリー

  • 複線型のすすめ

  • 荻原博子の闘う家計術

  • 家庭画報エディターズリポート

  • dancyu 食こそエンターテインメント

  • TOKYOワインバル・クルージング

  • オトコの別腹

  • おんなのイケ麺

  • BOOKランキング

  • 東京の台所

  • シッポ