坂井真紀さん 台湾の野球映画「KANO」で、「球児たちの母」を好演

  • 2015年1月20日
主人公、近藤兵太郎(永瀬正敏)の妻役を好演した坂井真紀さん

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  • ©果子電影

 戦前の1931(昭和6)年、日本統治時代の台湾の代表として甲子園に初出場し、決勝まで勝ち進んだ伝説のチームがあった――。台湾映画「KANO―カノ― 1931海の向こうの甲子園」は、高校野球の名門松山商業の監督だった近藤兵太郎が、台湾南部の嘉義(かぎ)農林学校=嘉農(かのう)=の弱小野球部を育て上げ、台湾代表として甲子園で準優勝を果たした奇跡の実話を描く。守備に長けた日本人、打撃力のある台湾人(漢人)、俊足の台湾原住民という3民族混合チームが、それぞれの長所を生かしながら勝ち進んでいく姿に胸が熱くなる。

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 史実を掘り起こしたのは、「海角七号 君想う、国境の南」や「セデック・バレ」などで知られる魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督。今回彼はプロデューサーを務め、本作が初の長編映画となる馬志翔(マー・ジーシアン)がメガホンを取った。  

1月24日の公開を前に、主人公・近藤兵太郎(永瀬正敏)の妻で、球児たちの母的な役を演じた坂井真紀さんに話を聞いた。

――この映画の出演依頼があった時はどんなお気持ちでしたか。

 すごく驚きました。私は以前から台湾のツァイ・ミンリャン監督やホウ・シャオシェン監督の作品が大好きで。女優として海外作品に出たいという思いはありましたし、どこかで「台湾、台湾」と思うところがあったので、(依頼が)台湾映画であることがものすごくうれしかったです。ただ、この映画の史実、嘉義農林学校野球部のことはまったく知りませんでした。この映画を通して、こんな話があったことを多くの人に知っていただけることをうれしく思っています。

――球児たちを引っ張っていく“鬼監督”を支える妻を演じるにあたって、馬志翔監督から何か注文はありましたか。

 「(子どもたちを伝言役に使って)夫婦で将棋を指すシーンは家庭内のパワーバランスを表している」という説明を受けたくらいでしょうか。私自身大好きなシーンなんですが、そこには生徒たちに厳しく頑固な近藤監督の違う一面や、夫婦のやり取りから時代背景が見えると思いました。妻にとってみれば、あのダンナさんは結構大変だったと思うんですよ(笑)。彼女は良妻賢母であり、すごく強さを持った女性。限られた夫のお給料の中で、野球部員たちに差し入れをしながら家庭を切り盛りできたのは、やっぱり芯が強かったんではないかなと。彼女については少しの資料しかなかったのですが、エピソードを聞き、さらに台本を読んで夫婦関係を理解した上でキャラクターを創造していきました。書かれていないことを埋めていくのが女優の仕事なので。

――永瀬さんとはデビュー以来の共演だそうですね。

 そうなんです。デビュー作は台本もよくわからず何もできなくて、永瀬さんには本当にご迷惑をかけたなという思いがありました。以来もう一度女優として、いつかきちんと共演させていただきたい、というのが目標だったんです。私は永瀬さんの一ファンでもあるので、永瀬さんとの共演と聞いて、この仕事を続けていて良かったとすごくうれしかったんです。

――台湾映画に出演されて、女優としてプラスになったことは。

 最近日本ではモノをつくるのに規制が増えていたり、何かを言われることを気にしなければいけなかったりすることが多いのかなって思います。例えばドラマでも、台本に酔っ払うシーンと書いてあるのに、お酒のスポンサーが入っていると「酔っ払わないでください。お酒のイメージが悪くなりますから」って言われるような。台湾でもそういったことがまったくないわけではないと思いますが、作品にまっすぐに進んで全力でつくって全力でみんなに見せるぞ、というところにブレがない。シンプルで余計なものが混じっていない印象を受けました。そこはうらやましいなと思いましたし、刺激を受けたところですね。日本で規制があったとしてもそんな中で自分に何ができるのか、進み方を考えてみる。純粋に良い作品をつくろうという思いは、役者としてブレずに持っていなくてはいけない。そんなポジティブなパワーをもらいました。

――ところで、野球はもともとお好きなんですか。

 はい。私の子どものころはサッカーよりも野球の時代でした。父が野球が大好きだったので、お夕飯の時はナイター中継がかかっているような家だったんです。父は阪神、私は巨人ファン。兄が少年野球チームに入っていたんですが、私も入りたかったくらい。父とキャッチボールをやってもらうのが大好きでした。当時のドラマに(少年野球をテーマにした)「レッドビッキーズ」シリーズがあったんです。憧れでした。

――高校野球もご覧になっていたんですか。

 人並みに見ていました。私は台東区根岸の生まれなんですが、岩倉高校が甲子園で優勝したことがあったんです(1984年春の選抜)。球児たちが高校に戻って来た時はそこへ見に行きました。89年の日本シリーズ(巨人―近鉄)で巨人が3連敗した後に4連勝して優勝した時は、徹夜でチケットを買いに行って見に行きました(笑)。多摩川の練習場にも行ったことがあります。結構な巨人ファンだったのかな。江川卓さんの初登板も見に行きました(笑)。

――女優として年を重ねていくことについてどう考えていますか。

 30代後半になってやっと女優のお仕事を、年を重ねても続けていける職業かなと思えるようになりました。20代から30代に移ると、ヒロイン的な役からそれこそお母さん役やヒロインの先輩といった役に変わっていく。「私ってダメなのか」とすごくネガティブに感じていた時期がありましたが、初めて劇団☆新感線の舞台『西遊記~PSY U CHIC~』(99年)に立たせてもらった時に、「私、演じることって何もできないんだな」と気づかされた。それからは積極的に舞台に出させてもらい、演じることの楽しさや演技の基本的なことなどを積み重ねるうちに、作品の中の一つに何でもなれる幸せを感じていったんです。立ち止まったり思い悩みながら積み重ねて生きていくことは何も無駄ではない。今、「無駄じゃないな」と生きてられる自分が幸せだと思っています。(聞き手・坂口さゆり 撮影・合田和弘)

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坂井真紀(さかい・まき):1970年5月17日、東京都生まれ。ドラマ「90日間 トテナム・パブ」で女優デビュー。数多くのドラマで人気を博し、「ユーリ」(96)で映画初出演。映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(08)では第18回日本映画批評家大賞助演女優賞、第23回高崎映画祭特別賞を受賞。映画「ノン子36歳(家事手伝い)」「スープ・オペラ」「中学生円山」などのほか、舞台やドラマでも幅広く活躍。ドラマの近作に、昨年秋の連続ドラマ「ごめんね青春!」

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「KANO―カノ― 1931海の向こうの甲子園」
監督:馬志翔(マー・ジーシアン)
出演:永瀬正敏、坂井真紀、曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)、大沢たかおほか
1月24日から全国公開
公式ホームページ http://kano1931.com/

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