在宅介護に用いることを前提に開発された「和夢(なごむ) 彩(さい)」。ベッドで過ごす時間の長い利用者の安心や快適さへの配慮はもちろんのこと、介護が長引きがちな介助者の負担軽減につながる工夫も随所に施されている。開発にあたっては、ユーザーが既存の介護用ベッドに感じていた不便や不満、不都合な点から、その一つひとつを改善していくことで「在宅介護用ベッドはこうあるべき」と提案できる姿を追求したという。
あらゆる角度からの検討の結果、重点課題は三つに絞られた。一つは、ベッド上での飲食に際して生じやすい誤嚥(ごえん)を防ぐこと。これには、ベッドの背もたれを起き上がらせる通常の背上げ機能に「ヘッドレスト機能」を追加し、頭部をさらに30度前方へ起こす新構造を採用。飲食時の姿勢が改善されることで誤嚥リスクが低減すると共に、口腔ケアなどが行いやすく、水こぼれなども起きにくいといった利便性の向上も果たした。
二つ目は、介助者の腰への負担を軽くすること。ベッド上での着替えやおむつ交換などを介助する際、腰の曲げ伸ばしが少なくてすむように、ベッドの最高床高を業界最高水準の67.5センチに設定。一方、最低床高は25センチと低くしてベッドへの乗り降りを容易かつ安全にした。また、ベッド自体に「エアスルーボトム構造」を採用して通気性を向上させ、就寝中の蒸れによる不快さや褥瘡(じょくそう)リスクの軽減につなげている。
三つ目は、認知症対応も視野に入れて誤作動防止に万全を期すこと。これには2種類の「手元スイッチロック機能」を搭載することで、スイッチの誤操作による事故発生を防ぐ。これらの課題解決に加えて、ベッドの設置場所や設置作業への配慮も検討された。必ずしも広くない居室への設置を念頭に、外観のフラット化や省スペース設計を貫く一方、ベッドの搬入や設置作業が一人で行える簡便化も図られているという。
卓越性や優位点から得られる「在宅介護用ベッドのあるべき姿」について、開発を担当したデザイナーは次のように述べている。
「外観デザインではフレーム部分が見えにくいように工夫するなどして、介護用ベッドのネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)したいと考えました。そうした心理面での細やかな配慮も、このベッドを毎日使われる方の『自立した生活をしたい』という前向きな意欲を喚起する、大事なファクターだと思います」
シーホネンス http://www.seahonence.co.jp/
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