マッキー牧元 エロいはうまい

<3>眠りし野生がうずく、ロゼ色のステーキ/エル ビステッカーロ デイ マニャッチョーニ

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2016年3月7日

Tボーンステーキ

  • Tボーンステーキ

  • 前菜盛り合わせ

  • スパゲッティ カルボナーラ

  • オックステールのローマ風煮込み

  • 牛肉のタリアータ

 肉だ。肉が食いたい。

 ある日突然、どうしようもなく肉が恋しくなる。居てもたってもいられずに、今すぐ肉にかじりつきたい時がある。こういう気分をおさめるには、鳥や豚というわけにはいかない。牛肉である。

 それもステーキがいい。ナイフとフォークを手にして、ステーキを切ろうとしている光景を思い浮かべて、胃袋が鳴る。よだれが出る。

 ただしステーキなら、なんでもいいというわけにはいかない。A5だとか神戸牛だとかにこだわるわけではないが、肉焼き名人が焼いた肉を喰らいたい。それも500g以上のステーキとお目見えしたい。そう思うのである。

 ならば銀座を目指そう。銀座でステーキを食べる。この大それた行為は、今までは金持ちオジサンの特権であった。しかしその特権をなんなく、解放してくれる店が去年できた。我々にもっと肉を! という欲望を叶えてくれる店である。

 店名がいい。「食いしん坊達のお腹を満たすステーキ職人」。なんと素敵な名前だろう。店主は言う。「肉が大好きなんです。イタリアでは、しょっちゅう、一人で1キロのビステッカを食べていました。でも日本は高い。同じものを同じ値段で食べようとすれば、少ししか食べることができない」。そのために山崎夏紀シェフは、この店を作った。

 サーロインとフィレが合体したTボーンステーキ、「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」が、1kg約8千円である。3人くらいで食べるのがちょうどいいが、男なら一人で食べろ。

 見よ、この美しきお姿を。高温と低温のオーブンを駆使し、高温で表面を焼いてから、低温で休ませながら焼いた肉の表面は、1mm以下の焼き色がつけられ、中は一面ロゼ色で濡れている。肉が「食べて。早く食べて」と誘っている。たまらずかじりつけば、歯が肉にめり込んで、肉汁があふれ出す。噛むほどに、牛のエキスが口の中を満たしていく。

 きっちりと振られた塩が、肉の甘みを持ち上げ、噛むことによるコーフンが、鼻息を荒くし、体を上気させる。体に眠りし野生がうずいて、「噛め、噛め、噛んで、噛み締めろ。赤身肉のエキスと脂を噛み締めろ」と煽ってくる。

 これはある意味、牛肉とのエッチなのかもしれない。

 そして僕らは叫ぶ。「これが人生だ! 愛だ! 宇宙だ!」と。

    ◇

エル ビステッカーロ デイ マニャッチョーニ (Er bisteccaro dei magnaccioni)
東京都中央区銀座3-9-5 伊勢半ビルB1F
電話:03-6264-0457
http://bisteccaro.tokyo/

肉焼き名人山崎シェフの手による、優れたステーキとローマ料理に出会える店。味わいが優しく、食材の味が活きた、盛りだくさんの前菜盛り合わせのアンティパストミスト。グアンチャーレとペコリーノロマーナを使った、正統「カルボナーラ」。穏やかな滋味に富む、「牛テールの煮込み リガトーニ」などパスタ料理も素晴らしい。ミントの香りが効いた「トリッパのトラステヴェレ風煮込み」。シナモン、クローブ、セロリ、黒胡椒、松の実、甘くないチョコレートを使った、「オックステールの煮込み」もおすすめ。またランチのステーキ1500円もお値打ち。

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PROFILE

マッキー牧元

マッキー牧元(まっきー・まきもと)

タベアルキスト&味の手帖編集顧問。1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋社)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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