異次元酒場

ハッカーがおもてなし 客と店員の「ライブセッション」

  • Hackers Bar
  • 2016年5月24日

六本木のど真ん中の雑居ビルに店はある

写真:ハッカーの浜辺さんがおもむろにキーボードをたたく(写真手前) ハッカーの浜辺さんがおもむろにキーボードをたたく(写真手前)

写真:お客さんもモニターにくぎ付け お客さんもモニターにくぎ付け

写真:コードがプロジェクターに映し出される コードがプロジェクターに映し出される

写真:オリジナルカクテルの「ブルースクリーン」 オリジナルカクテルの「ブルースクリーン」

写真:果たしてどんな映像が出来上がるのか… 果たしてどんな映像が出来上がるのか…

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 カウンターではマスターが黙々とパソコンの画面に向かってキーボードをたたく。正面のプロジェクターには打ち込んだ英数字などの文字が次々と映し出され、客はその画面をうれしそうにのぞき込み、酒を飲む。酔客がカウンターでガヤガヤ騒ぐようなバーや、ダンディーなオジサマがマティーニをたしなむようなバーとは一線を画すデジタル空間「ハッカーズバー」が六本木にある。

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 「異次元酒場」の取材候補店としてラインナップには入れてみたものの、会話の糸口がつかめるだろうか、と不安になったお店でもある。典型的な文系人間が飲みに行っても大丈夫なのか……恐る恐る入り口のドアを開けると、蹄鉄(ていてつ)状のカウンターと大きな画面のプロジェクターが目を引く、いわゆる普通のバーだ。特徴的なのはドリンク類を出す店員以外に「ハッカー」という、カウンターにパソコンを置いて接客する店員がいることだ。

 ハッカーと聞けば省庁や企業のサーバーに忍び込んだり攻撃したりする「悪者」というイメージを持ってしまいがちだが、本来の意味は「コンピューターについて深い知識や技術を持ち、その知識を用いて課題をクリアする人」というもの。事実、ハッカーズバーの店員さんたちは気さくに話を聞き、パソコン上で可能な演出を即興で仕上げてしまう。店員でハッカーの浜辺将太さんはこういう。「酔ったお客さんがカウンターの背後にある柱を指さして『あの柱を爆発させるようなプログラムを作ってよ』と言うんです。思いつきのむちゃぶりでしたが、柱はLEDで光るようになっていたので、爆発音に合わせて赤く光るようにして、爆発したような演出にしました」こんな感じで、店員と客のセッションを楽しむ場所でもある。

 

 どんな人たちがこのお店に集まるのか。ハッカーズバーのオーナーで、ハッカーとして店のカウンターにも立つ中尾彰宏さんはこう話す。

 「60%がIT関連の仕事に就く同業者です。20%が経営者で、新たな商品開発のヒントを得ようと来ている方、残りの20%がよくわからない方たちです。この間は医師4人が飛び込みでお店に来ていました」

 そんな中尾さんも実は医師免許を持つ医師であり、遺伝子検査サービスなどを提供する株式会社ヒメナ・アンド・カンパニーの代表取締役でもある。このようなバーを開こうと思ったきっかけは何だったのか。「もともとITビジネスに興味があり、医学部を卒業した後はIT企業に就職し、ソーシャルネットワークの開発に携わっていました。その後、2013年にアメリカを回っていた際、街に居た大道芸人やパフォーマーの中にバケツをひっくりかえして即興でたたいている『バケツドラマー』を見て、カッコ良いな、と思ったんです。私は音楽はできないけど『コーディング』ならライブのように即興でできるんじゃないかと思い、2014年にこのバーをオープンさせました」

 「コーディング」とはプログラミング言語をパソコンに打ち込み、映像などを動かしたりすることを言う。モニターに映し出される文字の羅列が「ソースコード」と呼ばれ、それを打ち込む作業をコーディングと呼ぶ。「こういうものが欲しい」という要件を伝えると、簡単なものであればその場でソフトウエアを作ってしまう様子は、確かに音楽のライブセッションにも似ている。

 

 ここで出しているドリンクやフードもユニークだ。オリジナルカクテルはIT用語にちなんだもので「ブルースクリーン」(ウィンドウズでエラーが出た際の画面)など、エンジニアなら思わずニヤリとしてしまうネーミング。店で出すおつまみに関しても、ハッカーらしい答えが返ってきた。「キーボードを打つ手を汚さないで食べられるものはないかと思って試行錯誤しているのですが、色々試した結果、宇宙食がいいのかなと思い、メニューに入れるか検討中です」(浜辺さん)

 試作品として買ってきた宇宙食のたこ焼きを試してみた。フリーズドライであることから、つまんでも手が汚れることはない。こんな合理的なサイドメニュー選びもハッカーならではだ。

 著者もいつの間にか「セッション」に参加していた。飲みながら、目を離すことのできない張り込み取材の苦労話をグチっていると「人がある一定の場所を通ると自動で録画するというアプリを作るのはそんなに難しいことではないですよ」との答え。むむむ、この発想は使えるかも。思わぬ会話がとてつもなく便利なツールを生み出すかもしれない。

 (文・写真 白石義行)

    ◇

場所名:Hackers Bar

住所:東京都港区六本木7-12-3-4F

アクセス:地下鉄日比谷線六本木駅7番出口から徒歩1分

電話: 03-6434-9232

ホームページ:http://hackers.bar/

メモ:営業時間は20:00〜25:00 (ラストオーダーは24:30)。定休日は土日祝日で、土曜日はイベント、貸し切り営業としても使用が可能。常時20代~50代のハッカーが店員としてカウンターにおり、ホームページのカレンダーを見れば、その日はどんなハッカーが店員として来ているのかが一目でわかる。

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