安藤俊介のアンガーマネジメント

人はネガティブ思考になりやすい!?

  • 文 安藤俊介
  • 2016年8月22日

写真:     

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 今回はいきなり質問からはじめましょう。人は快楽を追求するのと、苦痛から逃げるのではどちらが得意でしょうか?

 答えは、苦痛から逃げるです。これは人間の進化の歴史に関係しています。その昔、人は目の前のりんごを採ることよりも、目の前の猛獣から逃げることを優先させた方が生き延びる確率は高かったです。りんごを採ることは失敗しても大丈夫ですが、猛獣から逃げ損ねれば命に関わります。苦痛から逃れるための学習には猶予がありません。すぐにその経験や危険だということを学習してしまわないといけないのです。人は快楽については失敗することができても、苦痛についてはできるだけ失敗しないようにプログラムされているのです。

 一般的に言って私たちは快楽を求めることよりも、苦痛から逃げることの方が学習しやすいという特徴を持っています。これを脳のネガティブ・バイアス(ネガティブ偏向)と言います。この特徴は生物として生き残るためには都合が良いのですが、社会の中で感情をコントロールしながら生きていく上では不都合になることが多々あります。

 ネガティブなことの方が学習しやすいということは、例えば両親に怒られた、友達と絶交した、裏切られたといったような人間関係でのネガティブな経験の方が記憶に残りやすいということです。でもネガティブなことばかり記憶していたら、人間関係は辛いものになるし、イライラしたり、不安になったりと、後ろ向きな感情に支配されることが多くなってしまいます。

 ただ、脳は変化するという特徴も持っています。これを少し難しい言葉で言うと、神経可塑(かそ)性と言います。最新の脳科学でわかってきたのは、脳は自分の思考に合わせて変化していくということです。もし思考がネガティブな傾向にある人は、脳はよりネガティブに思考しやすくなります。逆にポジティブに考えられる人は、よりポジティブに考えやすいように脳が変化します。

 では自分の感情と上手に付き合い、より良い人生を歩めるようにするにはどうすればよいか。そのためにはできるだけ、誰かの楽しい、うれしい、幸せ、ポジティブな経験や話を聞くことが、良いトレーニングになります。人の幸せ話を聞いても、ひがんだり、うらやましがったりしては意味がありません。誰かの話を聞く時のコツは、できるだけその人が話している経験を五感を使って同じように感じるということです。すると、相手の話を自分の幸せな体験のように感じることができます。それを繰り返すことで、脳がポジティブな思考をしやすいように変化していきます。

 実は出来事にはポジティブもネガティブもなく、あるのは事実のみです。その出来事をポジティブなものと捉えるのか、ネガティブなものとして捉えるのかは本人次第です。物事のポジティブな面をより多く見られるようになれば、あなたの人生はより生きやすいものになります。ぜひ、そんな風に誰かの話を聞く練習をしてみてください。

PROFILE

安藤俊介

安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。怒りの感情のプロフェッショナルとして、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナーなどを行い、社会にある怒りの課題解決に取り組む。著書に「怒りに負ける人、怒りを生かす人」(朝日新聞出版)、「『怒り』のマネジメント術」(同)など。日本アンガーマネジメント協会公式HP:https://www.angermanagement.co.jp

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