本音のマイホーム

一戸建てよりマンションが寒くなる逆転現象

  • 文 山下伸介
  • 2016年12月21日

写真:     

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 マンションは一戸建てに比べて暖かいというのが、一般的な認識だろう。おおむねその認識に間違いはないが、実は時と場合によってマンションのほうがむしろ底冷えがするといったことが起こる。冬でも暖かいはずのマンションが、まるで冷蔵庫の中にでもいるかのように寒く、暖房がなかなか効かない。そんな実際にあった筆者の体験談を紹介しよう。

 それは十数年前の冬休み中の出来事だ。その年は年末年始を実家で過ごすため、1週間ほど当時の自宅マンションを留守にした。実家は古い一戸建てで、隙間風は入るし断熱性もよくない。自宅マンションと比べてかなり寒く感じる数日をすごし、ようやく暖かいわが家に帰ってきたはずだった。ところが、安堵(あんど)して玄関ドアを開けると、意外にも室内から冷気が流れてきたのだ。それこそ冷蔵庫のドアを開けた直後のような。

 留守中は暖房がついていないとはいえ、さすがに真冬の外気と比べれば暖かさを感じるはず。そう体が勝手に期待していただけに、「窓を閉め忘れたか?」と一瞬焦ったのだが、実際は戸締まりに問題はなかった。床も壁も氷のように冷え切っていて即座に暖房を全開にしたが空間全体が暖まりきらず、どこか底冷えがする状態が翌日まで続いたのだ。正直、実家のほうがまだマシだというくらい寒かった。

 わが家のマンションに何が起きたのか。実は、マンションが冬に暖かい最大の要因は、コンクリートの蓄熱性にある。蓄熱性とは、文字通り熱を蓄える性質のことだ。冬は各住戸が恒常的に暖房をつけることで建物のコンクリートが全体的に温められる。一度温まったコンクリートは熱を蓄えてなかなか冷めない。コンクリートの壁や床や柱は室内から直接は見えないが、輻射(ふくしゃ)熱で空間を温める効果があるのだ。

 話を戻そう。わが家は1週間ほどマンションを留守にしたが、時期が年末年始だけに他にも留守にした家庭が多かったようだ。つまり、まとまった期間、暖房をつけない住戸が多く重なったことで、建物全体のコンクリートが冷え切ってしまったと考えられる。そして蓄熱性は冷える場合も同様の効果を発揮するため、冷たい輻射熱で氷室のような室内になり、かつ一度冷えるとなかなか温まらない。それがわが家のマンションに起きたことだ。

 カラクリがわかってしまえば、なんてことのない話ではある。しかし「マンションは暖かいもの」と高をくくっていると、冷え切ったマンションはどこかに欠陥があるんじゃないかと不安になるほど寒い。当時の私は、まだ住宅業界に携わる前で、コンクリートの蓄熱性など知る由もなく、まさに寒くて不安な一夜をすごすはめになった。

 現在マンションに住んでいる当コラム読者は、今後自室が底冷えするようなことがあっても心配無用だ。「同じマンションの人がたくさん出かけてるんだ」と、おおらかに受け止めていただければと思う。

PROFILE

山下伸介

山下伸介(やました・しんすけ)

エディター&ライター。京都大学工学部卒。株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「スーモ新築マンション」の編集長を10年半務める。これまで優に1000名を超える住宅購入者、検討者の実例を見てきた経験から、損得では語れない住まい選びの勘所に詳しい。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。一般財団法人住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー運営委員(2005~2014年)も務めた。ブログはこちら

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