安藤俊介のアンガーマネジメント

「腹が立つことは見ない」は道徳・倫理と相いれないことも

  • 文 安藤俊介
  • 2016年12月12日

写真:     

[PR]

 アンガーマネジメントの上達を目指す時、多くの人がぶつかる壁があります。それはアンガーマネジメントの立場に立てるかということです。これができるようになると、怒りのコントロールが飛躍的に上手になるのですが、簡単ではありません。

 例えば、電車の中でマナー違反する人を見かけたとしましょう。アンガーマネジメントの立場からすると、もしそれを見ていてイラッとするなら、多くの場合、それは見なければいいという話になります。ところがここで疑問が浮かびます。悪いことをしている人がいるのに放っておいていいのかということです。

 その疑問が浮かぶ人は、「道徳・倫理」という立場で考えています。道徳・倫理という立場なら、確かにマナー違反をしている人を放っておくのは良くないことかもしれません。

 では、この問題を弁護士に聞いてみたらどうなるでしょうか。弁護士はきっと「そうですね、でもこれが法律に抵触しているかと言われれば、どの法律に該当するかということですよね」という話になります。いやいや、だって悪いことをしている人がいるのだから、法律で裁けるのではないですか?と聞けば、法律で裁くためには裁判が開かれなければいけないので、マナー違反を見た時点でどうこうするというのはなかなか難しいですねという回答になるでしょう。これは弁護士が「法律」という立場にあるので、このような回答になります。

 でも、そうは言っても見ていて気分のよいものではないし、こんな人が世の中にいてはいけないと思うんですよと怒ったとしたら、それは「感情」という立場に立っているということです。もしあなたがそれを見て、気分が良くない、イラッとするのであれば、見ない努力をすることでイライラの感情は小さくなるか、なくなりますよと考えるのがアンガーマネジメントの立場です。

 物事は様々な立場から見ることができ、考えることができます。アンガーマネジメントという立場に立つことは、時に道徳・倫理という立場、感情という立場などと相いれないことがあります。そうした立場の違いを受け入れ、切り離して考えられるようになるとアンガーマネジメントはとても上手になります。

 どの立場からものを見て、考え、意見を言っているか。それを意識してみましょう。

PROFILE

安藤俊介

安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。怒りの感情のプロフェッショナルとして、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナーなどを行い、社会にある怒りの課題解決に取り組む。著書に「怒りに負ける人、怒りを生かす人」(朝日新聞出版)、「『怒り』のマネジメント術」(同)、「アンガーマネジメント入門」(同)など。日本アンガーマネジメント協会公式HP:https://www.angermanagement.co.jp

&Mの最新情報をチェック


&Mの最新情報をチェック

Shopping