安藤俊介のアンガーマネジメント

「逃げるは恥だが役に立つ」は立派な退却戦略

  • 文 安藤俊介
  • 2016年12月19日

写真:     

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 TBS系ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が好調のようです。筆者はドラマを見たことはないのですが、この「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉は、もともとはハンガリーのことわざで「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことの方が大切」という意味のようですが、実にアンガーマネジメント的に含蓄のある言葉だなと思っています。今回はアンガーマネジメント的な視点から「逃げるは恥だが役に立つ」を考えてみます。

 恥は社会的な感情とも言われています。社会的な感情とは、平たく言えば社会に暮らしているから感じる感情であり、仮に無人島で暮らしていれば感じることがないであろう感情ということになります。またそれは人との比較の中で生まれる感情です。

 例えば、カラオケが下手だったとして、誰も見ていなかったら、恥をかくということはありません。極端な話、歌がうまいとか、下手とかという尺度がなければ恥という概念は生まれません。上手か下手かを評価するのは社会的な尺度になります。

 恥の効用としては、恥をかきたくないから上手になろう、社会から外れるのを防ごうというものがありますが、それがもし行き過ぎていて、自分の人生を生きづらいものにしているのであれば、その恥は捨てた方が良いものと言えるでしょう。

 「逃げること」は日本では恥、ひきょうなこととしてとらえられることが多いと思います。アメリカでアンガーマネジメントを教わる時、実は最初に習うことが「逃げろ!」という言葉です。英語では「RUN!」です。「走れ!」という意味ですが、転じて「逃げろ!」という意味で使われています。

 トラブルに巻き込まれたり、自分にとって望まないことがあれば、すぐにその場から逃げろと教えています。怒りの感情にとらわれてしまった時、その場から離れることはひきょうでも何でもありません。アメリカのアンガーマネジメントでは退却戦略として一つの立派な手段と考えています。

 「君子危うきに近寄らず」ということわざもあります。その場に居続けることは必ずしも最善の選択ではありません。逃げることも人生には必要ですし、逃げないことでイライラしたり、人生に悪影響があるのであれば問題です。

 もしかしたら私たちは本当は恥ずかしくないことを恥ずかしいと思っているのかもしれません。社会的に見たら恥ずかしいと思えるようなことでも、自分の人生の尺度で恥ずかしいと思わなくてもいいことなら、その恥は手放してしまいましょう。そのことで今よりもイライラすることや、怒りの感情を持つことは格段に減るでしょう。

 あなたが恥だと思っていることが、本当にあなたの価値観によるものなのか、それとも社会から押し付けられたものなのか、ぜひ一度振り返って考えてみてください。

PROFILE

安藤俊介

安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。怒りの感情のプロフェッショナルとして、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナーなどを行い、社会にある怒りの課題解決に取り組む。著書に「怒りに負ける人、怒りを生かす人」(朝日新聞出版)、「『怒り』のマネジメント術」(同)、「アンガーマネジメント入門」(同)など。日本アンガーマネジメント協会公式HP:https://www.angermanagement.co.jp

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