複線型のすすめ

3つのNPOで代表や理事 笑っている父親(11)

  • 文 松崎幸治
  • 2013年9月17日

写真:川島さんが設立したNPO法人「コヂカラ・ニッポン」の<a href="http://www.kodikara.org/" target="_blank" class="Blank" title="別ウインドウで開きます" rel="nofollow">ホームページ</a>川島さんが設立したNPO法人「コヂカラ・ニッポン」のホームページ

写真:川島さんが理事を務める「アスバシ教育基金」の<a href="http://asubashi.jp/" target="_blank" class="Blank" title="別ウインドウで開きます" rel="nofollow">ホームページ</a>。アスバシとは、「明日の社会と若者の今にかける橋」という意味川島さんが理事を務める「アスバシ教育基金」のホームページ。アスバシとは、「明日の社会と若者の今にかける橋」という意味

 巨額の資産を運用する会社の社長を務めながら、川島高之さん(49)は、子どもの教育と企業や地域などを結びつけて日本を元気にしたいと、自らNPO法人を運営しているほか、2つのNPO法人の理事も務めている。こうした活動の原点は、小学生から大学生にいたるまで、自発的に様々な活動に取り組んできた自身の体験がある。

笑っている父親(10)はこちら

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<2012年6月、資産運用会社の社長に就任した。>

 不動産投資信託事業は、順調に立ち上がり、上場を果たしました。現在、投資家様から預かった資産の運用で日々、胃に穴があきそうな思いをしていますが、やりがい十分の仕事に満足しています。 

<川島さんは子どもの頃からリーダー的存在だった。小学生の時、少年野球チームを作って監督に、中学生では生徒会長になり、大学ではツアーの会社を作った。>

 父親は送風機の部品などを製作する零細企業を経営していました。孫請け的企業ですが、それでも社長。その影響なのでしょうか、私は大人になるまでずっと、「この指とまれ」と言って仲間を集めては、何かをしていました。

 小学生時代、友達を集めて野球チームを作りました。地区内の監督会議には他チームの大人の監督に交じって、小学生ながら私も監督として出席しました。練習はもちろん、会計から役所への申請まで大半を子どもだけで完結させ、しかもチームは地区予選で「優勝」しました。

 中学では生徒会長をやり、生徒だけでチャリティーイベントを行い、先生たちが驚くほどの収益をあげました。高校生の時、貸しレコード屋の雇われ店長として店を仕切ったこともあります。大学では仲間数人と、スキーや海へ行くツアー会社を作り、アルバイトを雇いながら経営をしていました。

<子どものチカラを借りて企業や地域を活性化させ、子どもには実社会で役立つことを通じて成長してもらう。そんな狙いで「コヂカラ・ニッポン」というNPOを昨年5月に立ち上げた。>

 私自身は、子どものころから自らの意思で面白そうなことに手を出し、実社会に接することで多くのことを学び、人生を主体的に生きる術を身につけ、その結果、今の「仕事もプライベートも充実した幸せな大人生活」を送ることが出来ていると思っています。

 一方、PTAや地域活動を通じて感じているのは、大人からの一方的な指示で動き、学校と塾と家の往復で疲れ果て、実社会との接点が少ない子どもが、あまりにも多いということです。これでは、社会で生きていくための力を得られず、幸せな人生を送れるようにはならないでしょう。そんな子ども達が、本来持っているチカラを取り戻し、自立した社会人に成長していくための一つの手段が、実社会に参画し役に立つという機会、つまり「実社会との接点」を持つことです。

 仕事を通じて感じているのは、発想力の乏しい組織、元気のない企業、弱体化していく地域があまりにも多いということです。そんな企業や地域が、活気づき成長するための一つの手段として、「子どもと接点」を持つことが考えられます。既成概念に捕われない斬新な発想力や、純粋な視点、あり余るエネルギーといった子どもならではのチカラを貸してもらえばいいのです。

 そこで、子どもと企業や地域をつなぎ、互いに成長していくプロジェクトを全国で展開しようと、NPO法人「コヂカラ・ニッポン」を2012年に立ち上げました。

<東京・杉並区内の小学校で、「コヂカラ体験セミナー」と銘打ったビジネスセミナーを開催。この7月からは、千葉県の小学生が考えた米粉菓子が老舗洋菓子メーカーから売り出された。>

 会社で働いている大人5人が順番に、杉並区内の小学生約30人に対して、自分の仕事について説明。続いて、児童らは興味を持った大人の周りに集まり、さらに詳しく質問したりして、理解した内容を1枚の「新聞」にまとめて発表するというプログラムでした。10歳前後の子どもにもわかるよう説明することで、大人たちは改めて自分の仕事を見つめ直したり、コミュニケーションの難しさを学びました。子どもたちからは「仕事は深くて面白そう」といった感想も出て、いい「職業体験」になったと思います。

 千葉県の小学生は、「食糧自給率を高める」というテーマで2年間、米の消費量を増やすために米粉菓子を開発し、地元商店街で販売してきましたが、ほんの少し売れるだけで終わっていました。この話をシュークリームの全国ブランド「ヒロタ」の社長に相談したところ、学校を訪ねて子どもたちからプレゼンを受けてくれました。その後、子どもたちと「ヒロタ」社が会議を重ね、「米(粉)を使ったシューアイス(コメミスコラーレ)」という商品名とパッケージを子どもたちが考案し、レシピも開発した商品は、7月6日に全国での販売が始まり、いきなり「爆発的」な売上げを達成しています。

 子どもたちのアイデアやエネルギーを、ビジネスの本業に活用する好例になりました。同時に、商品化までのプロセスで子ども達は試行錯誤する能力を養い、実際に商品が爆発的に売れているという事実によって、自尊心が満たされ、達成感が得られたことでしょう。つまり、子どもと大人(企業)の共同事業は、互いに得ることが大きかったということです。

<「コヂカラ・ニッポン」以外にも、父親の子育てを支援するNPO「ファザーリング・ジャパン」と、若者にインターンシップを体験させるための資金を集める「アスバシ教育基金」の理事も務めている。>

 この連載を読んでいただいている方に、2つメッセージがあります。1つは、得意なことを活かして、仕事以外にも多くの“名刺”を持とうということです。そうすることで、人生の楽しさが何倍にもなるのと同時に、仕事自体の能力も高まります。

 たまたま私は「この指とまれ」が得意なので、会社の社長、PTAの会長、NPOの代表など複数の「長」を担い、またスポーツが趣味で子どもが好きなので、少年野球のコーチをやるなど、我が子に限らず地域の子育てにも積極的に参画してきました。裏方のサポートが得意だったり、音楽が好きだったり、細かい作業を得手としたり、人それぞれですが、それらを仕事だけではなく、地域活動やNPO、そして子育てなどプライベートでも活かすことで、仕事とライフの相乗効果が、必ず生まれます。

 もう1つは、企業や地域という実社会は、子どもを受け入れ、子どもの発想や視点を取り入れれば入れるほど、必ず組織は活性化し、業績も向上する、ということです。子どもの方も、実社会での「本番体験」をすることで、自立心、自尊心、コミュニケーション能力、そして達成感を必ず得ることができます。

 代表や理事を担っている3つのNPOはいずれも、異なる角度から「仕事とプライベートのシナジー」、「子どもと大人の相互補完」ということを、日本社会で浸透させることを目的にしており、私のライフワークにしたいと考えています。ワークに対する報酬は、「子どもたちの笑顔」ですかね。

 (「笑っている父親」の「川島高之さん」のシリーズは今回が最後です。次回からは株式会社「ソラーレ」代表の東浩司さんを紹介します。9月24日に配信する予定です。)

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PROFILE

松崎幸治(まつざき・こうじ)

1957年、香川県生まれ。1982年、朝日新聞社入社。86年から大阪本社・社会部で裁判などを担当、『AERA』編集部、東京本社・社会部を経て成田支局長に。「成田空港問題」を連載して出版。99年から電子電波メディア局で「朝日新聞デジタル」の前身「asahi.com」の編集。知的財産センターなどを経て2012年からデジタル事業本部へ。現在、「朝日新聞デジタル」内の新ウェブマガジン「&M」担当。2001年から1年間育児休業取得。

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