てんらん・はくらん

「素朴派」がおもしろい!ポンピドゥー・センター傑作展

  • 文・森山葉月
  • 2016年6月16日

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6月11日に開幕した「ポンピドゥー・センター傑作展」。アンリ・マティスの「大きな赤い室内」の前では、多くの来場者が足を止めた=6月11日午前、東京都台東区、朝日新聞社・池永牧子撮影

  • 展覧会カタログより。シャガール、ピカソ、マティスなどの巨匠の絵画から、カルティエ=ブレッソンやアヴェドンらの写真、プルーヴェの椅子など、多彩なジャンルの傑作を紹介している

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  • 展覧会の特設ショップでは、カタログをはじめとする本展ならではのグッズが多数販売されている

  • 展覧会の最後には、ポンピドゥー・センターとゆかりのあるリサとガスパールのパネルがお見送り

  • 特製ビニールカバーをはずすと、出品作の全作家のポートレートが!カタログは展覧会をより深く理解し、楽しめる構成になっている

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 東京都美術館(東京・上野公園)で9月22日まで開催中の「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ・マティス・デュシャンからクリストまで―」は、1906年から77年までを1年1作家1作品でたどる展覧会だ。

 なかでも印象に残ったのが29年のセラフィーヌ・ルイ《楽園の樹》だった。

 大きなキャンバスに色とりどりの葉をつけた樹(き)が描かれている。色使いは激しく、一枚一枚の葉は植物というより鳥の羽根を思わせる。あふれ出るものを画面に写していながら、どこか控えめ。

 作者のセラフィーヌ・ルイは幼いときに両親を亡くし、姉に育てられたという。羊飼い、修道院の住み込みとして働き、家政婦をしていた30代後半になって独学で絵を始めた。アンリ・ルソーを見いだしたことで知られる、批評家で画商のヴィルヘルム・ウーデの目に留まり、支援されて世に出るが、後に関係は破綻(はたん)し、精神を病んでしまう。

 絵には彼女のこんな言葉が添えられていた。

 「私は絵を描きます。でもとても難しいです。私は絵のことをあまりよく知らない年老いた初心者です」

 2008年には彼女の半生を描いた映画「セラフィーヌの庭」が制作され、セザール賞では作品賞をはじめ数々の賞を受けている。

 1年1点ずつを展示するこの展覧会では、彼女の絵が選ばれた翌30年も、美術教育を受けていない「素朴派」のカミーユ・ボンボワ《旅芸人のアスリート》が紹介されている。

 こちらは筋肉ムキムキの旅芸人が巨大なダンベルを片手で軽々と持ち上げている絵。しかし、どういうわけか見物人は一人残らず無表情で、画面のこちら側にいる我々を見つめている。

 ボンボワは川舟の船頭の息子で、体格がよく、力持ちだったことから、サーカスでレスリングや重量挙げをしていた。パリに出てから、地下鉄の工員、新聞印刷工場の夜勤などをしながら絵を描いた。

 「日曜日にはモンマルトルを歩いたものだ。そこには沢山(たくさん)の絵描きがいて、それが面白くて、私も絵を始めた」

 この展覧会は写真家に注目しても面白い。マン・レイは星形に刈られたデュシャンの頭髪にカメラを向け、アンドレ・ケルテスは物語が始まりそうな夜のカフェを撮った。アンリ・カルティエ=ブレッソンの名作《サン=ラザール駅裏》もあるし、リチャード・アヴェドンによるシャネルのポートレートは恐ろしいほどに彼女の内面を映し出す。

 初来日したピカソの《ミューズ》、マティスが79歳のとき描いた《大きな赤い室内》など、著名な作家の作品も多く、自分の好きな角度から切り取って見られる展覧会だ。

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 本展のカタログ「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―」は、朝日新聞SHOPで販売中です。

 世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥー・センターから、1906年~1977年の1年ごとに1作家の1作品を厳選し、71作品でフランスの20世紀美術をタイムラインでたどる展覧会。その全出品作品と作家ポートレート、作家自身の言葉(日本語・英語)を見開きページで紹介しています。

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「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―」

東京都美術館(東京・上野公園):2016年6月11日(土)-9月22日(木・祝)

※月曜、7月19日(火)は休室。ただし7月18日(月・祝)、9月19日(月・祝)は開室

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