てんらん・はくらん

現代に密接につながる特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」

  • 文・森山葉月
  • 2016年6月23日

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開幕した特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」で、アルテミス像(中央)を鑑賞する人たち=6月21日午前、東京・上野の東京国立博物館、(c)朝日新聞社

  • 第2章「ミノス文明」で紹介しているイラクリオン考古学博物館蔵の《海洋様式の葡萄酒甕》=撮影・森山葉月

  • アテネ、古代アゴラ博物館所蔵の《クレロテリオン(抽選器)の断片[複製]》と名前の刻まれた陶片=撮影・森山葉月

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  • カタログの一部をご紹介。《ギンバイカの金冠》(左ページ)と《蔦花文様を表わしたディアデマ(冠)》(右ページ)。ともにテッサロニキ考古学博物館所蔵

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  • カタログの表紙は、テラ先史博物館所蔵の《漁夫のフレスコ画》

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 特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」は、紀元前7千年の新石器時代からローマ時代の西暦330年ごろまでを、ギリシャ国内の博物館、美術館の所蔵品でたどっていく。

 古代ギリシャにさほど関心はなかったが、公式サイトで東京国立博物館の白井克也考古室長によるギリシャ出張リポートを読み、アクロポリスやオリンピアの遺跡の写真を見るうちに興味がわいてきた。

 展示室では目を引くものが次々に現れた。クレタ島の宮殿跡から出土した《海洋様式の葡萄酒甕》には8本の足を伸ばしたおちゃめなタコが描かれ、陽気な宴会を想像させる。

 同じくエーゲ海の島、テラ(サントリーニ島)で見つかった《漁夫のフレスコ画》は漁の仲間入りをした青年がモチーフになっている。頭についているタコのようなものは髪の毛の房で、残りの部分はそりあげているそうだ。魚の青色がきれいに残っている。そして《ギンバイカの金冠》などの繊細な金細工にも鑑賞者が集まっていた。

 物自体の魅力に加え、もう一つ面白いのは古代ギリシャと現代のつながりを感じられること。たとえば、紀元前8世紀に始まった古代オリンピックのコーナーが設けられていた。《赤像式パナテナイア小型アンフォラ ボクシング》は粘土の壺(つぼ)に闘う2人の男が描かれている。2人とも裸で手に革ひもを巻き、殴られている男はギブアップの印に人さし指を挙げている。

 オリンピックのコーナーには《ストレンギス(垢掻きヘラ)》という珍妙な道具もあった。30~40cmの湾曲した青銅製のヘラで、運動後に汚れた体をきれいにするためのもの。運動前に体に塗った油や砂ぼこりをかき落とすという。女性が脱毛用の軟膏(なんこう)を取り除くためにも使われた。紀元前の女性も脱毛していたのだ。

 民主政治が始まったのも古代ギリシャだった。名前が刻まれた陶片は、アテネで「陶片追放」に使われた。これは民主政を脅かしそうな政治的な有力者を毎年1人、都市から追放する制度。その人物の名前を陶片に刻んで投票した。ほかにも市民から裁判員を選ぶ抽選器の複製などが紹介されている。

 博物館らしい体系的な展示はわかりやすく見応え十分。一日で古代ギリシャの全体像をつかんだ気になれる展覧会だ。

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 本展のカタログ「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」は、朝日新聞SHOPで販売中です。

 ギリシャ国内40カ所以上の国立博物館群から厳選された325件の貴重な作品を展示する、日本でかつてない規模の試みを記録しています。青きエーゲ海の美しい島々からはじまるギリシャ最古のエーゲ海文明や、ヘレニズム時代など、西洋文化の源である古代ギリシャ文明の黎明から最盛期に至るその壮大な歴史の流れを総合的に紹介しています。

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特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」

東京国立博物館 平成館(東京・上野公園):2016年6月21日(火)-9月19日(月・祝)

※月曜、7月19日(火)は休館。ただし7月18日(月・祝)、8月15日(月)、9月19日(月・祝)は開館

公式サイトはこちら

今後は、長崎県美術館(10月14日-12月11日)、神戸市立博物館(12月23日-2017年4月2日)を巡回する予定。

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