てんらん・はくらん

サザエさん、いじわるばあさん、エプロンおばさんまで勢ぞろい!

  • 文・森山葉月
  • 2016年9月15日

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単行本になったサザエさんの数々。表紙がずらりと並ぶさまは圧巻だ

  • 長谷川町子がデビューからまもなく手がけた雑誌の仕事を紹介

  • 姉妹社の絵本「ワカメちゃんとおとぎのくに号」は鮮やかなカラー

  • 展覧会カタログ「サザエさん生誕70年記念 よりぬき長谷川町子展」は、B5版判フルカラーの344ページと大充実の一冊

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 サザエさん一家にいじわるばあさん、エプロンおばさんまで勢ぞろいして笑わせてくれる展覧会、「サザエさん生誕70年記念 よりぬき長谷川町子展」が東京の板橋区立美術館で開かれている。漫画の原画を中心に、10代のころのスケッチ、自伝的な漫画エッセー「サザエさんうちあけ話」の原画などが展示され、町子の生涯をたどることができる。

 まずデビューが15歳と早い。1920年に佐賀県で生まれ、福岡県で育った町子は、13歳のとき父が病死したため、国会議員の叔父を頼って母と姉妹と上京する。「のらくろ」が大人気となっていた田河水泡に弟子入りし、15歳で雑誌「少女倶楽部」に「狸の面」を発表してデビューした。「狸の面」は女の子がタヌキに扮して山賊からお金を取り返すという話。作風は後のものとはずいぶん違っていて、師匠の水泡の影響の大きさに驚く。

 町子は日本の女性プロ漫画家第1号となった。終戦後の46年には26歳の若さで福岡の夕刊紙「夕刊フクニチ」で「サザエさん」の連載を始め、ここから一気に人気漫画家への階段を駆け上がっていく。戦時中に疎開していた福岡の家を売って再び一家で上京し、姉妹社を設立して「サザエさん」の初版本を発行した。

 ファンの間で幻と言われていたこの初版本も今回展示されている。定価15円、B5判の横長のもので、2万部刷ったものの、書店で並べにくい判型だったために返品の山になったという。そこで翌年、判型を一般的な縦長のB6判に変えて出したところ大ヒットした。サザエさんの連載も49年に全国紙の朝日新聞に移り、74年まで休載を挟みながら28年間続いた。朝日新聞だけでも6千回以上になる。

 とにかくサザエさん好きには見どころ満載の展覧会だ。草稿には鉛筆で4コマの流れをくり返し検討したあとが残り、絵文字でつづられた「サザエさんうちあけ話」の原画は切り貼りのていねいさが際立つ。町子の完璧主義は相当なものだったようだ。めずらしいところでは休載・再開の告知記事、町子による自作の採点表もある。採点は「よりぬきサザエさん」に収録する作品を選ぶためとみられ、「大変面白い」に◎、「面白い」に○がつけられている。

 もう一つ、朝日新聞夕刊で「地球防衛家のヒトビト」を連載中のしりあがり寿さんによるオマージュ4コマ漫画も見逃せない。地球防衛家とサザエさん一家がまさに夢の共演を果たした。原画とともに作画中の映像も見られる。写真ではいつも笑っているしりあがりさんの信じられないほど真剣な表情、ペンの動きの速さに圧倒された。いったい町子はどんな表情で、どんな速度でカツオやワカメを描いていたのだろうか。

 新聞連載を終えた後、町子は絵本や漫画旅行記「サザエさん旅あるき」などを手がけ、92年に72歳で亡くなった。展覧会のおしまいには漫画本を読めるスペースも用意されている。この内容で観覧料650円はかなりお得。玄関前では年配の夫婦がサザエさんの立て看板の穴から顔を出して写真撮影を楽しんでいた。ゆっくり訪れたい展覧会だ。

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 この展覧会のカタログ「サザエさん生誕70年記念 よりぬき長谷川町子展」は、朝日新聞SHOPで販売中です。

 30年近く新聞連載された「サザエさん」の7千点超の作品からよりすぐった原画約100点をはじめ、「エプロンおばさん」「いじわるばあさん」といった痛快漫画、エッセー風漫画「サザエさんうちあけ話」、書籍化されていない幻の初期作品までを網羅。漫画家・長谷川町子のまなざしと業績を丹念に迫った一冊です。

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「サザエさん生誕70年記念 よりぬき長谷川町子展」

東京・板橋区立美術館:2016年8月27日(土)―10月10日(月・祝)

名古屋・松坂屋美術館:2017年4月29日(土)―5月24日(水)

公式サイトはこちら

(c)長谷川町子美術館

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