てんらん・はくらん

「自在龍」が宙を舞う! まさに「驚きの明治工藝」展

  • 文・写真 森山葉月
  • 2016年9月29日

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空中を飛ぶのは、《自在龍》宗義(明治~昭和時代)。そのリアルさはまさに驚きだ

  • 《蝉》竹江(明治時代)。その羽根は本物と言われてもわからない!

  • 展覧会カタログから、《自在蛇》 宗義。とぐろを巻き、いまにも蛇行しそうな勢いを感じる

  • 展覧会カタログ「驚きの明治工藝」はA5変型判。216ページと充実の中身

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 一つ一つの作品から「どうだ!」という職人の誇らしげな声が聞こえてきそうな展覧会、「驚きの明治工藝」が東京藝術大学大学美術館で開かれている。本物そっくりの伊勢海老(いせえび)、繊細な七宝の壺(つぼ)など、江戸後期から昭和初期の工芸品が展示され、とことん技を追求する日本の職人魂が伝わってくる。

 入り口で迎えてくれるのが、宙を舞う体長3mの《自在龍》だ。世界最大の自在置物だという。自在置物とは、龍、蛇、昆虫などを鉄や銀で写実的に表した立体のことで、いくつものパーツをつなぎ合わせて作られ、動きまで再現されている。蛇ならとぐろを巻いたり、口を開けたり、うねうね蛇行したり姿が再現されているのだ。自在置物を触ることはできないが、蛇を動かした様子が映像で紹介されている。

 高度な金属加工の技術が求められるこの自在置物は、もともと江戸時代の甲冑(かっちゅう)師が作り始めたという。江戸時代も終わりに近づくと甲冑の注文は減少する。これは他の工芸品も同じで、時代が明治になると大名や幕府の仕事はなくなり、職人たちは代わりに海外輸出という明治政府の方針に沿った製品を作るようになった。そしてウィーンやパリの万国博覧会に出品され、盛んに輸出された。

 そんなわけで明治時代の工芸品は多くの作品が海外にあるため、日本ではあまり知られていなかったが、近年は展覧会で紹介される機会が増えた。そのため自在置物にも注目が集まっている。今回の展覧会には自在置物だけで鯉(こい)、ヤドカリ、カマキリなど20点以上が出品されている。

 自在置物の次に驚いたのは、色まで再現された実物大の《蝉》。木にとまっていたら見分けがつかない。羽、胴体、脚が別々の素材で作られている。それが何かはクイズになっているので、答えはぜひ会場にて。牛の角に彩色した《塩鮭》も、皮のしなびた感じがあまりにリアルで見入ってしまう。

 この展覧会の出品作は台湾で漢方の薬剤師をしている宋培安氏のコレクションだ。宋氏は20年以上前に友人から日本の工芸品を見せられて感動し、集め始めた。宋氏の収集品が日本に里帰りするのはこれが初めてだという。金工、彫刻、陶磁、漆工、染織など、約130点が展示されている。

 もう少しだけ作品を紹介すると、諏訪蘇山の《紅魚文鉢》は青磁の鉢の見込みにメダカのような小さな魚がピュンピュンと元気に泳いでいる。青磁の色が水を思わせ、水を注ぎたくなる衝動を察してか、水を張ったときの写真が添えられていた。

 涛川惣助の《月に梅図盆》は水墨画を七宝で表現した。惣助は七宝でぼかしたやわらかい線を出す技法を開発し、赤坂迎賓館の花鳥画も手がけた。こうした有名作家から無名の職人まで、磨かれた技がモノづくりの国のDNAを感じさせてくれる。

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 この展覧会のカタログ「驚きの明治工藝」は、朝日新聞SHOPで販売中です。

 台湾の「宋培安コレクション」から「驚きの明治工藝」展に出品される日本の工芸作品の名品全131点を美しいカラー写真で完全収録するほか、日本での展覧会に出品されない象牙彫刻10点も参考図版として収録し、「宋培安コレクション」の精髄を紹介します。A5変型のコンパクトなサイズです。

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「驚きの明治工藝」

東京藝術大学大学美術館(東京・上野公園):2016年9月7日(水)-10月30日(日)

細見美術館(京都市左京区):2016年11月12日(土)-12月25日(日)

川越市立美術館(埼玉):2017年4月22日(土)-6月11日(日)(予定)

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