てんらん・はくらん

「世界報道写真展2016」レンズがとらえた想像を絶する現実

  • 文・森山葉月
  • 2016年10月6日

商品画像をクリックすると外部サイトへ移動します

地球上で起きているさまざまな問題や決定的なシーンを写した水準の高い作品が一堂に会した「世界報道写真展2016」=東京・恵比寿の東京都写真美術館、朝日新聞社撮影

  • 2016年のカタログの表紙は、オーストラリアのウォーレン・リチャードソン氏による、セルビアとハンガリーの国境でシリア難民の男性と子どもを写した大賞作

[PR]

 日曜の午後、9月にリニューアルオープンした東京都写真美術館の「世界報道写真展2016」に行くと、会場は多くの人と、静かな熱気に満ちていた。それもそのはず、1枚目から絶句するような写真が続く。

 シリアのアブド・ドゥマニーが撮った少女は空爆で傷つき、もう息をしていない。その顔を父親が静かに見つめている。別の女の子は頭に包帯を巻き、泥まみれのまま、ぼうぜんと立ち尽くしていた(「一般ニュース」の部、組写真2位)。

 ロシアのセルゲイ・ポノマレフはハンガリー警察があびせる催涙ガスから逃げる難民の親子を(「一般ニュース」の部、組写真1位)、そしてオーストラリアのウォーレン・リチャードソンはセルビアとハンガリーの国境を越えようとする親子をカメラに収め、世界報道写真大賞を受賞した。

 シリア関連の作品があることは予想していたが、レンズがとらえた現実は想像以上に厳しい。いきなりパンチをくらったかのようだ。ふと周りを見ると、ほかの人も言葉を失ったまま一枚一枚に見入っていた。

 この写真展は毎年開催される「世界報道写真コンテスト」の入賞作、約150点を紹介するもので、アムステルダムで世界報道写真財団が発足した1955年の翌年から続いているという。一般ニュース、スポーツ、自然、長期取材など8部門あり、それぞれ「単写真」と「組写真」に分かれている。世界各国の約6千人から8万点以上の応募があるそうだ。45カ国で350万人が見る、世界最大規模の写真展になっている。

 入賞作には、確かに見応えのある写真が並ぶ。シリアの内戦以外にも、大気汚染、人種対立、テロ、密猟など、この世は問題だらけだ。

 とはいえ、悲惨な現実ばかりではなく、スペインのお祭り、昆虫を捕らえるカメレオンのように、色の鮮やかさに目を奪われる作品や、バスケットボールのシュートが決まった瞬間の写真もある。なぜか撮影が許されているというデイビッド・グッテンフェルダーによる北朝鮮の写真も興味深い(「長期取材」の部、3位)。なんと40回も訪朝しているという。

 写真家が精魂込めて撮った一枚は画面の奥に潜むドラマまで想像させてくれる。何かすごいものを見たというショック状態で会場をあとにした。世界中の秀作をまとめて見られる、年に一度の機会だ。

    ◇

 この展覧会のカタログ「世界報道写真展2016」は、朝日新聞SHOPで販売中です。

 アムステルダムの世界報道写真財団に応募があった、おもに2015年に世界各地で撮影された8万点を超えるドキュメンタリー写真の中から、国際審査員団によって厳選され、8部門ごとに入賞を果たした41人の約150作品を収録しています。

    ◇

「世界報道写真展2016」

東京都写真美術館(東京・恵比寿):2016年9月3日(土)-10月23日(日)

イオンレイクタウンkaze(埼玉・越谷):2016年10月25日(火)-11月6日(日)

公式サイトはこちら

&BAZAARの最新情報をチェック

&BAZAARの最新情報をチェック