中高生に爆発的人気を誇る音楽ユニット「YOASOBI」 そのクリエイティビティーの源泉とは

「小説を音楽にする」という独自のコンセプトで活動する2人組みの音楽ユニット「YOASOBI」。2019年11月にファーストシングル「夜に駆ける」を公開すると、「Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100” 」で3週連続の総合首位を獲得、YouTubeではミュージックビデオが3,400万回以上(2020年7月時点)再生されるなど、爆発的なヒットを飛ばしている。

外出自粛のなか、音楽を演奏したりイラストを描いたりした作品をYouTubeやSNSで発信する若者も増えている。そんな若者のカリスマ的存在であるYOASOBIのAyaseさん(26)、ikuraさん(19)にお話をうかがい、クリエイティビティーの源泉を探った。

ikuraさん(左) Ayaseさん(右)

小説をもとにつくられた「夜に駆ける」

YOASOBIが結成されたきっかけは、小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」のコンテストで、大賞に選ばれた小説「タナトスの誘惑」を楽曲化するプロジェクトだった。「夜に駆ける」はこの小説のストーリーをもとに、楽曲とミュージックビデオとして制作された。小説・音楽・映像という多様な切り口で、一つの作品を楽しめる仕掛けになっている。

【MV】YOASOBI/夜に駆ける

作曲を担当したAyaseさんは、中高生に人気があるボーカロイド(コンピューターで歌声を合成する手法)を活用した楽曲のプロデューサー(以下、ボカロP)でもある。このことが、若者に支持が広がった背景にもなっている。ボーカルを務めているのが、ikuraさんだ。

インスタグラムで見いだされた歌声

――お二人が組むことになった経緯は?

Ayase 「monogatary.com」のスタッフから、小説を音楽にする企画があるので、曲をつくってほしいと声をかけてもらいました。僕はボカロPとして活動していますが、この企画は人の歌声で楽曲制作したいと思い、インスタグラムで見つけたikuraに声をかけました。ikuraはすごくいい歌声でした。

ikura シンガーソングライターとして活動をしているので、自分じゃない人がつくった曲を歌うことに最初は迷いもありました。でも、どんな形であれ歌を磨いていきたいと思っていましたし、Ayaseさんの曲を聴いたらぜひ一緒にやりたいなという思いがわきました。

Ayaseさんがikuraさんに声をかけるきっかけとなった投稿

「お金をかけなくても音楽はつくれる」

――どのようにして楽曲を制作しているのでしょうか?

Ayase 僕はPCと楽曲制作ソフトだけでつくっています。周りの人にはもっと機材をそろえた方がいいと驚かれます。去年まではバイトしながら楽曲制作していたくらいで、お金がありませんでした。買いたい機材はあるけど買えない。だから、あるもので何とかするしかないと思って曲づくりをしていました。でも、お金をかけなくても頑張れば意外と音楽はつくれるとは思います。

ikura 私は基本的にアコースティックギターを弾きながらつくります。ただ、ギターのコード進行が最初に決まっていると、同じようなメロディーになることも多く、最近は楽器を持たずに鼻歌などメロディーだけを録音し、後からコードをつけたりもします。

YOASOBIでは、Ayaseさんが楽曲をつくってくださるので、送られてきた音源に合わせて歌い、ボイスメモに記録して送っています。歌い方の表現についてはAyaseさんと相談し合いながら進めています。

コンピューターが広げる表現の幅

――楽曲制作する上で、アナログとデジタルの違いは。

Ayase 日常の中で、いいフレーズやメロディー、リズムをふと思いついて、それをコンピューターのソフト内にいったん落とし込むプロセスがあるんです。なので、感覚的に音楽をつくりやすいのはアナログだと思います。

一方で、デジタルは、可能性の幅を広げられることがメリットです。楽器を使用しながら音楽をつくると、同じような曲ばかりできてしまう。持ち球でしか勝負できなくなってしまうのですが、コンピューターやソフトウェアを使用して楽曲制作すると、いくらでもどんな風にでも表現ができるように感じます。だから、アナログ、デジタルのバランスを上手く取って制作するのが理想的かと思います。

ikura アコースティックギターでつくった曲は流れるように歌えると思います。歌い上げるという感覚です。でも、AyaseさんがつくるYOAOSBIの曲はリズム感がとても大切です。リズムに合わせて言葉を刻んでいくといいますか、流れに無駄がない感じがします。デジタルでの曲づくりは、波形として音を見ることができるので、音を視覚的にとらえられるのは便利ですね。

祖母、父の影響で始めた音楽

――いつ頃から音楽を始めたのでしょうか。

Ayase ピアノの先生だった祖母の影響で、3、4歳からピアノを始めました。物心ついたときから当たり前のように家にピアノが置いてあり、祖母と一緒に遊び感覚でピアノを弾いていた感じでした。小学生になってからは本気でピアノをやりたいと思い、本格的なピアノ教室に通い始めました。中学生くらいまではずっとピアノをやっていましたね。

ikura 私も物心ついたときにはすでに、リビングで父がアコースティックギターを使って弾き語りしていました。父が自分でつくった曲やカントリーミュージックをギターでぽろぽろ弾きながら歌っていたのを聴いていました。気づいたときには、自分も一緒に歌っていましたね。

常に大切な誰かに向けて

――自ら楽曲制作するようになったのは?

Ayase 16歳でバンド活動を始めたタイミングです。ボーカル兼バンドリーダーだったので、曲づくりをするのは自分だと思っていましたし、つくりたい意思もありました。

小学校高学年のとき、親がクリスマスプレゼントにアコースティックギターを買ってくれて、そのギターで椎名林檎さんの曲を練習しました。そして、その曲のコード進行に合うメロディーを自分でつけてみたのが一番最初につくった曲です。ちなみに、そのあとギターを全く練習していないので、いまだにそのコードしか弾けません(笑)。

ikura 私は小学6年生の時に、離れ離れになってしまう友人へ、ギターを弾きながら曲をつくったのが最初です。

そもそも自分で曲をつくりたいと思ったのは、バレンタインのとき。父が母に「曲をつくりたいから歌詞を書いてほしい」とお願いし、ホワイトデーのお返しとして、母が書いた歌詞に父が曲をつけてプレゼントしたことがきっかけです。その曲を聞いたときにすごく感動して、自分たちで紡いだ歌詞とメロディーだからこそ伝わることがあるんだなぁと思いました。父と母のエピソードに影響されて、常に大切な誰かに向けて曲をつくっています。

Ayase ご両親すごいね……!

家族の応援が活動の支えに

――音楽を生業にしたいと思ったのは?

Ayase 中学2年生くらいのときです。EXILEさんやaikoさんなど、J-POPの最前線を走る人たちの音楽を聴いて、歌がすごく好きだと気づき、歌手になりたい、音楽でご飯を食べていきたいと思うようになりました。思い返してみると、小さい頃からピアノの課題曲や流行っている曲、自分で思いついたメロディーをずーっと歌っていました。周りからも「ずっと歌ってるね」と言われていたくらいです。

16歳でバンド活動を始め9年間続けました。そのバンドでの活動が休止したタイミングでボーカロイドに出会い、2018年からボカロPとして活動を始めた、という経緯です。

ikura 小さいときからずっと歌手になりたいと思っていました。3歳までは父の転勤でアメリカに住んでいて、ずっと洋楽を聴いて歌っていました。小学3年のときにはディズニーチャンネルで観た「ハイスクール・ミュージカル」に影響され、より音楽へ没頭するようになりました。サウンドトラックを買って、一日中見よう見まねで歌を歌っていましたね(笑)。そのときはもう歌手になりたいと思っていたので、「ハイスクール・ミュージカル」を見ながらずっと歌の練習していました。

そして中学3年のとき、歌手になる夢を叶えるためにいくつかオーディションを受けました。

――ご家族から反対されることはなかったのでしょうか?

Ayase 14歳のとき両親に歌手になりたいと伝えました。親には反対されるというより「勉強しなさい! 学校に行きなさい!」と言われていました。なぜかというと当時、僕は分かりやすくグレていまして(笑)。“本気で音楽がやりたい”と“グレて学校に行きたくない”という気持ちが重なり、「音楽やるから勉強なんて必要ない! 」と思っていました。音楽を学校に行かない理由に使っていた部分もあったと思います。

そして、バンド活動をするから学校に行く暇がない、行く必要もないと言って、高校1年生のときに学校をやめました。実際は、学校に通いながらもバンド活動できるのに。だから、両親も僕が本気で音楽の道に進もうと思っているのかを疑っていたと思います。でも、16歳のときにバンド活動を始めて曲をつくり、毎月3~4本ライブしていたので、真剣さが徐々に伝わり、自然と応援してくれるようになりました。

もちろん不安はあったと思います。それでも、基本的にはずっと応援してくれていますね。いまも楽曲がチャートで1位になったとか、再生回数が何万回突破したとか、僕が親に伝えるよりも先に、向こうから連絡が来ることもあるので、とてもいい環境で音楽をやらせてもらっていると思っています。

ikura 私も小さいときからずっと歌手になりたいと家族に伝え続けていたので、歌手の道へ進む姿は家族にとって自然な流れだったと思います。だから、止められることはなかったんです。ただ、中学生のときに受けたオーディションで、SNS上に顔出しで発信する必要があり、承諾書を書かなければなりませんでした。承諾書をリビングのテーブルに広げて、「さあどうする!」という感じで兄姉も含め、家族全員で話し合いました。

インターネットで発信することへの覚悟

――ご家族とどんなお話をされたんですか。

ikura 個人情報をインターネットで発信することの怖さ、学校生活に支障が出る可能性、家族への影響など、父が中学生の私に分かるように教えてくれて。「その覚悟があって歌手になるんだよね?」という話をしました。いまでも、契約の話は父に相談して決めています。母からも「消したくなるようなものを出さないように」「本当に世に出してもいい動画なんだよね?」と心配されました。中学生でインターネットに顔を出して歌を投稿することをとても心配していたと思います。

ただ、家族みんな音楽が大好きだったので、いまは「我が家から音楽家が出たぞ!」とすごく応援してくれています。

ミュージシャンが一発撮りでパフォーマンスするYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」のコンテンツ「THE HOME TAKE」上で「夜に駆ける」を歌うikuraさん

音感を養えたピアノ

――楽曲制作のため、身につけるべきことは?

Ayase 音感ですかね。ピアノを習っていたおかげで、どの音同士が合うかが自然と分かります。いまも自分の気持ちいいと思う音をパズルのように配置して楽曲制作しています。なので、みなさんピアノをやるのがいいんじゃないでしょうか(笑)。

ikura Ayaseさんと同じですね。私も小学生から中学2年生までピアノを習っていて、音感を持っていたからできたのかなと。現在、大学で音楽理論や作曲の授業を受けているのですが、自分で曲をつくってみると気づくことが出てくるので、考えて学ぶことが必要だと感じます。

自分がカッコいいと思える環境を

――楽曲制作のクリエーティビティーを培っていくヒントは?

Ayase 自分が最もテンションの上がる作業環境をつくることだと思います。部屋にいる自分を俯瞰的に見て、カッコいいと酔えるくらいの設備にする。そのためには、作業場というか制作環境にどんどんお金を投資した方がいい、と数年前に読んだ雑誌で中田ヤスタカさんが言われていました。この言葉に影響を受けて僕自身も投資は惜しまないようにしています。

どれだけ音楽が好きでも、仕事にしていると「やらなきゃいけない」と思う瞬間があります。同時に、音楽をつくる作業場に行かなきゃ、というように考えるようになってしまいます。でも、自分がカッコいいと思える環境であれば自然とそこに居続けられるんですよね。アイデアは心に余裕が生まれるときに思い浮かんできます。

ikura 小説を読んでいるとき、いいなと思った言葉や自分の頭の辞書になかった言葉を一つひとつ用紙に書きます。本の中には、普段生活している中で使わない比喩表現や、難しくて口にしたことはないけど素敵な言葉や漢字がたくさんあるので、自分の頭の辞書に少しでも入れたくてメモするようにしています。曲づくりをするときは、その書いた言葉の素材を常に目に入るよう机の上に並べておくと、作業が進むんです。

――クリエーターを目指す子どもたちへのメッセージをお願いします。

Ayase とにかく楽しくやっていくことが一番だと思います。いくら好きなことでも”作業”に感じてしまう瞬間はどうしてもあるのですが、その瞬間が多くなるほど音楽が死んでしまう。だから、楽しくつくる余裕を持ってほしいです。あ、あと外に出た方がいい!(笑)

ikura (笑)。

Ayase クリエーターって家の中で作業するので、どうしても引きこもる時間が増えて、日光を浴びなくなるんです。そんな中で作業に追われると精神的に疲弊して元気がなくなってしまう。精神的に不安定な状態ではいい音楽は生まれないと思います。この状況ではなかなか難しいと思いますが、おうちで作業するからこそ、ちょっとコンビニに行くとか散歩に行くとか、とにかく外を歩きましょう!

ikura ジャンル問わずいろいろな音楽をたくさん聴いてほしいなと思います。私自身、幼い頃は洋楽を聴いていましたが、ロックバンドやカントリーミュージックなどいろいろな曲に触れてきました。ジャンルを問わず音楽を聴いて、その中から自分が気に入った音楽を選んでいけたらいいですし、音楽をつくる上で引き出しが増えるんじゃないかなと思います。

PROFILE

Ayase

2018年12月にVOCALOID楽曲を投稿開始。 切なさと哀愁を帯びたメロディ、考察意欲を掻き立てる歌詞で人気を博し、2019年4月に発表した「ラストリゾート」はYouTube 500万再生突破。 同年11月リリースの初EP「幽霊東京」は即売、通販共に即完。 ボカロ楽曲を自身が歌唱するセルフカバーにも定評があり、「幽霊東京」は500万、「夜撫でるメノウ」は300万再生を突破。 ボカロPの枠を超えて2020年最も注目されるアーティストの1人である。

ikura

シンガーソングライター・幾田りらとして活動するかたわら、シンガー・ソングライター(SSW)たちによるアコースティック・セッション・ユニット“ぷらそにか”にも参加。 2019年11月におこなわれた原宿ストロボカフェでの1stワンマンライブのチケットは完売。 話題を呼んだ“東京海上日動あんしん生命”CMでの歌唱など、一度聴いたら耳を離れないその歌声が注目を集めている。

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