世界美食紀行

ネイチャーリゾートでおこもり旅 タイ(1)

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2016年7月11日

マンゴーづくしの朝ごはん。レストラン内にはタイの屋台風のヌードルステーションがあり、目の前で熱々のヌードルを調理してくれました

 その土地ならではの「食」との出会いは、旅の大きな楽しみ。トラベルライターの江藤詩文さんが、みずからの「舌」と「胃」を駆使して世界をリポートする人気連載「世界美食紀行」が今週から&Travelに登場。おいしい旅のヒントがたっぷり詰まっています。バックナンバーも併せてお楽しみ下さい!

    ◇

 いきなり私事ですが、6月も中旬を過ぎるとそれまで疎遠だった友人・知人から連絡が舞い込みます。例年なら「いま注目の新しいリゾートは?」といった問い合わせなのですが、今年は様相が異なりました。「安全な旅先はどこ?」というのです。最近の世界情勢を見ると、これまでは治安がよいとされていた場所や日本国内でさえ、世界中どこも「絶対に安全」とは言い切れないと思います。とはいえ、せっかくのバカンス、観光旅行ならできるだけリスクを減らしたいですよね。そんなわけでこの夏は「島旅」を選んでみました。

客室と同じくらい広々としたテラス。おやつタイムにはできたてのサンドイッチが届き、冷蔵庫にはビールやシャンパンがキンキンに冷えていました

 やって来たのは、バンコクから国内線に乗り継いで1時間ほどで到着するサムイ島。ここに自然と共生するネイチャーリゾートの老舗「ザ・トンサイベイ」があります。コンセプトは「岩ひとつ動かさない。虫一匹殺さない」。なんだかブータンみたいですが、こちらは宗教上の理由ではなく、主に生態系の維持と環境保護を目的としているそうです。一般的に東南アジアのリゾートホテルは、敷地内の害虫駆除をしているところが多いのですが、「ザ・トンサイベイ」では人間のほうが、天然成分の精油からつくられた蚊が嫌う香りのスプレーをつけて身を守るのです。

美しい独立系ヴィラの本当の主は…!?


私の部屋の主らしき小鳥がやたらと現れたプール。ドリンクを片手にぷかぷかと水とたわむれつつ、この絶景をひとり占めできます

 私が滞在したのは、プライベートプールのついた独立型のヴィラタイプの客室です。夜中はさぞ静かだろうと思いきや、耳を澄ますと遠くに波の音が規則正しく繰り返し、そこに虫の声や、夜行性なのでしょうか、ときどき鳥のさえずりが交じりました。朝起きてテラスに出てみると、黒い羽の鳥がわがもの顔で“私の”プールから水を飲んでいるではありませんか。どうやら鳥にも縄張りがあって、毎朝夕おそらく同じ鳥が飛んで来ては、あたりをパトロールしていました。

客室は明るくて開放的なデザイン。室内はちゃんとエアコンが効いています。東南アジアならではの山盛りのウェルカムフルーツもうれしい

 ちょっと説明が複雑になりますが、ヴィラタイプの客室は、建物の中にリビング兼ベッドルームと、ドレッシングスペースやシャワーブースがあって、屋根つきのテラスに大きなダイニングテーブルと冷蔵庫つきキッチン、バスタブ、プール、デイベッドがあります。プライバシーはしっかり確保されているので、だらしない格好でデイベッドで昼寝をして、暑くなったらプールに入り、そのままダイニングテーブルで冷えたビールを飲んだり、おやつを食べたり。リクエストをすればフラワーバスにもしてもらえるので、昼下がりに長風呂をしたりと、ただひたすら部屋にこもることになりました。

客室と同じくらいおすすめなのがスパ。タイのマッサージ技術は世界屈指のレベルなうえ、ここはスパルームが独立していて、テラスでフットバスができました

料理教室のゲストは小心者の大トカゲ


 しかしここへ来たからには、ひとつだけ外せないアクティビティがありました。それはクッキングクラス。「ザ・トンサイベイ」はネイチャーリゾートらしく、ホテルから車で3分ほどのところにオーガニックファームを所有しています。そういえば朝食時、名物の“フルーツカットレディ”が「今日のマンゴーはこの付近にしか生息していない品種で、ホテルのガーデンで収穫したものだから絶対に食べてね」と、お客さん全員に薦めて回っていたのです。

レストランの入り口にブースを構えて、ゲストひとりひとりにフルーツを薦める名物“フルーツレディ”。タイのフルーツカーヴィング技術はすばらしい

 そのマンゴーが穫(と)れたのが、オーガニックファームというわけです。ガーデンには、タイ料理によく使うミントやバジルといったハーブや野菜が整然と、ではなくジャングルのように育ち、(写真は控えますが)ミミズがうごめくコンポストなどがありました。参加希望者は車での送迎と説明つきでオーガニックファームを見学してから、料理教室に参加することができます。

料理教室では、レモングラスやタマリンドといったタイでよく使われる食材のプレゼンテーションも。タイ人シェフによるレッスンは英語で行われます

 この日一緒に参加したのは、インド系タイ人の男性と、日本に在住経験もあるカナダ人の女性です。タイ料理が大好きだという彼女。いまではタイ料理は、世界的に人気があるような気がします。つくった料理を試食していたら、大トカゲがのそのそとやって来ました。びっくりして思わず息を飲んだら、たぶんあちらはもっと驚いたのでしょう。足早に退散してしまいました。

レストランも開放的。タイの東屋(サーラ)風のテーブルに、カラフルなかわいい三角クッションがゴロゴロ置かれて、足をのばして妙にくつろげます

■MEMO:旅の言葉
 よその国にお邪魔するときは、「こんにちは」「ありがとう」「ビールをください」「おいしい」の4つだけは現地のことばで伝えられるように事前に調べてノートに書き留めておきます。タイ語では「こんにちは」から順に「サワディーカー」「コップンカー」「コーォビールカー」(女性が話す場合。男性は末尾の「カー」を「クラップ」に)、「おいしい」は男女どちらも「アローイ」。屋台などで試しに使ってみてください。発音が悪くてもタイらしいおおらかな笑顔を返してくれるはずです。

こちらはパブリックプール。子ども用の浅めのプールのほか、大人のための半円型のパブリックプールもあり、ゾーンによって雰囲気が異なります

■トラベルデータ
 日本からタイのバンコクへは、羽田・成田・中部・関西・福岡など日本各地から、LCCを含め多数の航空会社が直行便を飛ばしている。今回の旅先サムイ島へは、バンコク・エアウェイズの国内線を利用した。飛行時間は約1時間5分。公用語はタイ語。観光地では英語もよく通じる。時差はマイナス2時間。通過はタイバーツで、1バーツ=約3.6円。
*データは2016年5月取材時のもの

■取材協力
タイ国政府観光庁ザ・トンサイベイバンコク・エアウェイズ

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PROFILE

江藤詩文""

江藤詩文(えとう・しふみ)

トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道〜乗っ旅、食べ旅〜」シリーズ3巻。「江藤詩文の世界鉄道旅」を産経ニュースほかで連載中。

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