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石垣が語る城の変遷 岡山城(2)

  • 文・写真 萩原さちこ
  • 2016年9月5日

宇喜多秀家が築いた岡山城。天守は空襲で焼失後、1966(昭和41)年に再建された

  • かつては壁面に黒漆が塗られ、屋根には金箔(きんぱく)瓦がふかれていたという

  • 現存する西の丸西手櫓。ビルが撤去され西側からよく見えるようになった

  • 現存の月見櫓。御殿建築に準じた構造ながら、石落としなど防御装置も備える

  • 月見櫓の瓦には池田家の家紋が

  • 月見櫓脇にある石狭間。石狭間の現存例は全国的にも貴重

  • 本段東側にある、継ぎ足しがわかる石垣。中央に斜めのラインが見られる

  • 宇喜多時代の野面積みの石垣

  • 月見櫓下の石垣。池田時代の石垣は打ち込み接(は)ぎになる

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 1597年(慶長2)年に岡山城を完成させた宇喜多秀家の人生は、1600(慶長5)年の関ケ原合戦を境に暗転する。副大将となり西軍の主力として関ケ原に出陣したため、合戦後は流罪の身となったのだ。死罪は免れたものの、83歳で没するまで、八丈島で49年もの流刑生活を送った。8年の歳月をかけて築かれた岡山城だったが、秀家の在城期間は短いものだった。

 秀家が去った後の岡山城へは、小早川秀秋が入った。秀秋は秀家が進めていた城下づくりを引き継ぎ、城を整備・拡張。本丸中の段を拡幅し、城の西側には城域を広げて寺町を置いた。ところがわずか1年10カ月後に急死し、小早川家は断絶した。

 その後、備前28万石で岡山城主となったのが、姫路城主・池田輝政の次男、池田忠継だ。1615(慶長20)年に忠継が没すると、弟の池田忠雄が31万5200石で入城。この忠雄が、実質的に岡山城を完成させた人物となる。1632(寛永9)年には池田光仲(忠雄の子)との国替えで池田光政が入城。以後、岡山城は幕末まで池田家の居城となった。

 現在、岡山城内には二つの現存建造物がある。いずれも国指定の重要文化財だ。そのひとつが、西の丸西手櫓(やぐら)。幼少の忠継に代わり国政を執った兄・利隆が築いたものといわれる。旧内山下小学校の敷地一帯が西の丸で、西手櫓はその西端にある。一昨年、電車通り沿いの高層ビルが撤去され、西側からよく見えるようになった。

 もうひとつの現存建造物が、忠雄が築いた月見櫓だ。城外側から見ると二重の望楼型だが、城内側は三重の層塔型になる珍しい構造。城外側には防御装置を設けてあるが、2階の東西面には雨戸が設けられるなど、御殿のつくりだ。表書院での政務の一環としての小宴の場だったようで、その名の通り月見も行われた。

 忠雄は、二の丸に通じていた大手門を枡形門に改修し、本丸中の段を北側に大拡張。城門や櫓、御殿などの建造物を多く新築した。さらに、河川の改修や侍屋敷の拡張などの城下町整備を行うとともに、新田開発にも力を尽くした。

 城内に残る石垣は、ほとんどが宇喜多時代ではなく小早川もしくは池田時代に築かれたものだ。たとえば、大納戸櫓台の石垣は小早川秀秋が築き池田忠継(利隆)が改修したもので、小納戸櫓下の石垣は忠雄が1620年代に築いたものだ。内下馬門跡や六十一雁木門横石垣は、関ケ原合戦後の池田氏による築造とされる。

 宇喜多時代の石垣が残存するのも、岡山城の大きな魅力だ。本丸中の段に2カ所地下展示されている石垣、本丸本段南東の野面積みの石垣などが、秀家時代の遺構だ。とくに本丸本段南東の石垣は15.6メートルもあり、関ケ原合戦以前の石垣としては全国屈指の高さがあり必見。現在は3メートル埋まっている。さすがは秀吉プロデュースのもとに築かれた宇喜多秀家の城だと感心してしまう。

 小早川・池田時代は平面を平らに加工した打込接(うちこみはぎ)で、宇喜多時代はほぼ加工しないまま積み上げた荒々しい野面積(のづらづみ)の石垣だ。本段東側には、秀家が築いた石垣の隅部に秀秋が継ぎ足した跡が残る。秀家は安定性の高い大きく角張った石材を積んでいるのに対し、秀秋は丸みのある石材を粗雑に積んでいるのが特長。こんなふうに、表情を見比べながら歩くのも楽しいものだ。

(つづく。次回は9月12日に掲載予定です)

アクセス・問い合わせ・参考サイト

■岡山城
路面電車(東山行き)で「岡山駅前」から「城下」下車、徒歩10分
086・225・2096(岡山城事務所)
http://okayama-kanko.net/ujo/

PROFILE

Hagiwara

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)

城郭ライター、編集者。小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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