城旅へようこそ

名勝・後楽園から天守をのぞむ 岡山城(3)

  • 文・写真 萩原さちこ
  • 2016年9月12日

特別名勝・後楽園からのぞむ、岡山城の天守

  • 天然の堀として岡山城を守る旭川

  • 城の北東側から見上げる天守

  • 宇喜多秀家により流れが変えられた

  • 後楽園は2代藩主・池田綱政によりつくられた回遊式庭園

  • 後楽園は兼六園、偕楽園と並び日本三名園に数えられる

  • Cafe & Restaurant & Boating 碧水園は絶景スポットのひとつ

  • 解体された舟の材木が再利用されている

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 岡山城の撮影スポットはいくつかある。天守入口のある本段から真正面のアングルもいいし、不等辺多角形がよくわかる本段東側から見上げるのもいい。しかし、もっとも岡山城らしい景観は、旭川にかかる月見橋からだろう。一級河川の旭川が天守を取り巻くように蛇行し、なんともいえない雄大な景色だ。

 旭川は、岡山城を防御する天然の堀でもある。うまい具合に川が天守を取り巻いているものだと感心してしまうのだが、実はこの流れは築城時に人工的につけかえられたものだ。河川をも味方につけ、自然の利点を引き出し弱点を補っていくのが、築城の基本理念。城づくりと土木工事は切っても切り離せない。

 しかし、宇喜多秀家の行った工事により旭川上流の流路は不自然になり、江戸初期には甚大な水害をたびたび引き起こす一因になった。備前岡山藩の2代藩主・池田綱政が1868(貞享3)年に百間川を開削したのも、旭川の氾濫(はんらん)から岡山城下を守る洪水対策だったと考えられる。ちなみに百間川と呼ばれるのは、3カ所設けられた越流堤(えつりゅうてい)のうちのひとつ、二の荒手の幅が約百間(180メートル)だったからという。

 秀家は同時に城下町の整備も進め、二の丸の西・南側に三の曲輪を設けて町屋とし、父・直家が石山城の南に沿って通していた山陽道(西国街道)の道筋を城下町の中を通るよう変更した。山陽道沿いに国内の有力商人を呼び寄せた商人町が、現在の表町商店街のはじまりだ。

 旭川を隔てて岡山城と対面にあるのが、特別名勝・後楽園だ。1700(元禄3)年に池田綱政がつくり、子の継政が改築した大名庭園で、兼六園(石川県金沢市)、偕楽園(茨城県水戸市)と並ぶ日本三名園のひとつとされる。

 岡山城天守を借景としているのが、なんとも粋だ。歴代藩主もこの場所に佇み、この景色を眺めることがあったのだろうか。殺伐とした情勢下で築かれた岡山城の天守が、この頃には平和のシンボルになっていたのかと思うと感慨深い。

 休憩には、岡山城と後楽園の間にある「Cafe & Restaurant & Boating 碧水園」がおすすめ。岡山産食材を使った料理やスイーツ、地ビールなどがいただける開放的なカフェテラスだ。旭川に面した全面がガラス張りで、窓枠がちょうど額縁のようになり、旭川越しの岡山城天守がぴったりと収まって見える。

 店内で足元に目をやると、なにやら木材に傷のようなものがある。聞けば、かつてこの店は後楽園と岡山城を往来した渡瀬船の船着き場にあり、役目を終え解体された舟の材木を利用しているそうだ。

 岡山城を訪れたら、備前ばら寿司(ずし)も味わいたい。魚のつけ酢と具をご飯に混ぜ込み、別々に味付けした具材を華やかに飾る料理だ。ちらし寿司を連想してしまうが、味もルーツも違う。「食膳は一汁一菜とする」という初代藩主の池田光政による倹約令に反発した庶民が「いろいろな具が乗せてあっても一菜だ」としたのが由来とされ、隠し寿司やまつり寿司とも呼ばれる。

(岡山城の回・おわり)

交通・問い合わせ

■岡山城
路面電車(東山行き)で「岡山駅前」から「城下」下車、徒歩10分
086・225・2096(岡山城事務所)
http://okayama-kanko.net/ujo/

■Cafe & Restaurant & Boating 碧水園
後楽園からすぐ
086・272・1605
http://hekisuien.jp

PROFILE

Hagiwara

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)

城郭ライター、編集者。小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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