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近江町市場と前田家の建築デザイン 金沢城(2)

  • 文・写真 萩原さちこ
  • 2017年2月6日

1858(安政5)年に建造された三十間長屋。国の重要文化財に指定されている

  • 近江町市場。1690(元禄3)年に袋町の魚市場が、さらに1721(享保6)年に犀川口の市場が近江町に移り、統合されて原型となった

  • 三十間長屋の海鼠(なまこ)壁。漆喰と瓦のコントラストが印象的だ

  • 鉛瓦も寒冷対策とみられる

  • 石川櫓にも唐破風付きの出格子窓がある

  • 現存する石川門。城の搦手(からめめて)門にあたる

  • 幕末に建てられた鶴丸倉庫。重要文化財に指定されている

  • 復元された橋爪門と、橋爪門続櫓

  • 建物の平面が菱形の菱櫓は、通し柱ほか100本の柱も菱形をしている

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<金沢城(1)からつづく>

 金沢の味覚といえば、海鮮だ。冬が旬ののどぐろは、幻の魚と呼ばれる高級魚だ。そのほか、加能ガニはもちろん、脂がのり身が引き締まった寒ブリも。甘エビは、口の中に絡みつくような濃厚な甘さがたまらない。金沢の正月に欠かせない「かぶら寿司」も味わいたいところだ。

 金沢で旬の海鮮が味わえるスポットといえば、金沢の台所・近江町市場だ。加賀の地にありながら「近江」の名がつく理由は、諸説あるが、金沢城の原型である尾山御坊が一向宗により建立された1546(天文15)年にさかのぼるという。金沢御坊が完成して寺内町が形成され、南町・西町・安江町などとともに近江町が成立したらしい。1580(天正8)年に佐久間盛政が居城とすると、尾山八町(西町・南町・金屋町・松原町・材木町・近江町・安江町・堤町)が栄えた。近江町市場の先駆けとなる朝市は、前田利家が金沢城主となった1583(天正11)年以前からはじまっていたようだ。

 さて、腹ごしらえをしたら、金沢城へ。金沢城の見どころといえば石垣の美なのだが、建造物も個性に満ち、前田家の美意識の高さを感じさせる独創性がある。

 まず目につくのが、壁面の海鼠(なまこ)壁だ。海鼠壁とは、土蔵などによく使用される、白と黒の格子模様の壁のこと。壁面に平瓦を貼り付けて、つなぎ目を白い漆喰(しっくい)で板かまぼこのように盛り上げて塗り固めてある。こうすることで、下見板張りよりも耐久性と耐水性が上がるのだ。金沢は寒さが厳しいため、海鼠壁が採用されていると考えられる。

 屋根瓦にも特徴があり、よく見ると一般的な土瓦ではなく、鉛瓦が葺(ふ)かれている。太陽の光を受けると白くキラキラ輝いて、グラデーションがかかったやさしい風合いになる。これが、なんともいえず美しい。鉛製の瓦ではなく、木製の下地に鉛板を貼りつけてある。合戦時には鉛瓦を溶かして弾薬にするという説もあるが、純度から考えると固まらないため、あくまで美観と耐久性のためだろう。

 唐破風付きの出格子窓も、金沢城のシンボルだ。石垣や櫓(やぐら)の壁面に設けられた大きな出窓で、床面の石落としから石垣をよじ登る敵を攻撃できるだけでなく、壁の左右の小窓から側面攻撃もできるようにできている。格式の高い唐破風をつけているところに、前田家の美意識の高さを感じずにいられない。

 これらはいずれも、現存する石川門と三十間長屋で見ることができる。美観と実用を兼ね備えた寒冷地ならでは知恵に、誰もが感服してしまうはずだ。ちなみに天守は1607(慶長7)年に落雷により焼失し、その後は再建されていない。

 石川門は金沢城の搦手(からめて)門(裏門)で、高麗門、櫓門、二重二階の石川櫓、続櫓、南北の太鼓塀で構成された貴重な現存桝形門だ。城内のほとんどが焼失した1759(宝暦9)年の宝暦大火の後、1788(天明8)年に再建された。

 三十間長屋は2階建ての土蔵。建物の長さは50間ではなく、26間半(約48メートル)だ。南面は入母屋造りで、北面は土台の石組よりも外壁が下がった切妻造り。西側(背面)は千鳥破風と左右に唐破風付きの出格子窓がある。1858(安政5)年に建造され現在に至る。

 現在、金沢城のメインビジュアルとなっているのは、一直線に並ぶ菱櫓・五十間長屋、橋爪門続櫓だ。史料に基づいて、位置や構造はもちろん鉛瓦や海鼠壁、出し(出窓)も忠実に再現されている。櫓内部で、その工法が映像や模型を使い親切に解説されているのがうれしい。

(つづく。次回は2月13日に掲載予定です)

交通・問い合わせ・参考サイト

金沢城

JR「金沢」駅より路線バス ほか

076・234・3800(石川県金沢城・兼六園管理事務所)

石川県金沢城・兼六園管理事務所のページはこちら

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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