あの街の素顔

ポーリッシュポタリーのふるさと ボレスワヴィエツで人気の陶器選び

  • 文・写真 カスプシュイック綾香
  • 2017年3月7日

ボレスワヴィエツの街並

 前回紹介したポーランド南西部のこびとたちの街、ヴロツワフからさらに西へ約120キロ行った場所にボレスワヴィエツという小さな街がある。ヴロツワフ中央駅からローカル列車で約1時間30分の距離だ。列車の本数も平均して1時間に1本あり、ヴロツワフから気軽に行けるおすすめの日帰り旅行先である。

 さて、読者の皆さんの中には、「ボレスワヴィエツ」という名前に聞き覚えがある方がいるかもしれない。ボレスワヴィエツは陶器作りが盛んな街であり、ポーリッシュポタリー(ポーランド陶器)の代表的存在「ボレスワヴィエツ陶器」のふるさとだ。ぽってりとした丸みのある可愛らしい絵柄と丈夫で扱いやすいという利便性が受け入れられ、近年多くの日本人女性から人気を集めている。

 今回は、ボレスワヴィエツの美しい街並や観光地としての魅力を紹介すると同時に、現地に行ったからこそ感じることのできたボレスワヴィエツ陶器の魅力も紹介していこう。

陶器博物館

 ボレスワヴィエツ駅正面の道路を挟んだところにプラツ・ボルノシチという芝生の広場がある。その真ん中にある道を5分ほど進み、突き当たり右を行けばボレスワヴィエツの中央広場が見えるだろう。

 中央広場へ向かう途中には "Muzeum Ceramiki"(ムゼウム・ツェラミキ)という小さな陶器博物館がある。時間があればぜひ寄ってみてほしい。私が訪れた時は他に見学者はいなかったが、係員の女性が「夏になるとツアーバスが前に停まって、大勢の日本人がここに来るんですよ」と笑顔で教えてくれた。

 館内は陶器の展示が中心で、説明も簡易的なので20分もあれば十分に見てまわることができる。ボレスワヴィエツで発掘された中世の陶器や記念品として捧げられた20世紀前半の立派な作品もあり、陶器の街としての伝統や誇りを感じることができた。最初の方の展示では、私たちが想像するボレスワヴィエツ陶器のかわいらしい絵柄とは似ても似つかない芸術的なものだが、近世の作品になるにつれて馴染みのあるデザインに変化していくのが興味深い。

ナポレオンが訪れたレストラン

バルシチとクロケットのセット

 陶器の買い物を楽しむ前に、中央広場にある "Pod Złotym Aniołem"(ポド・ズウォテム・アニョウェム)というポーランド料理レストランで昼食を取ることにした。このレストランはあのナポレオンが二度訪れたという逸話を持ち、観光客のみならず地元の人々にも人気がある。ナポレオンが二度目に訪れた時はお金を持っておらず、代わりにスプーンとボウル、馬具などの所有品を置いていったそうだ。しかし第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、財政的に苦しんでいたレストランはそれらを売ってしまった。

 それでも、レストランのメニューを見ると「1812年12月12日、当レストランにて……」という記述のあるナポレオンが描かれた絵を見ることができる。このレストランにナポレオンが来たのは確かなようだ。その絵の隣には "Miska Napoleona"(ミスカ・ナポレオナ)というナポレオンが実際に食べた料理の名前がある。私が訪れた時は残念ながらすでに売れ切れてしまっていたが、こちらのレストランで食事をするのであればぜひ試していただきたい。

教会から見る中央広場

 昼食後は中央広場周辺を散策した。訪れるのは四度目だが、初めて訪れた時は陶器の街というイメージしかなかったためか、これほどまでに色鮮やかで特徴的な中央広場を持っていたことに驚いてしまった。東側は少し小高くなっており、そこには大きな教会が広場を見守るようにして建っている。そこから見る広場の景色も非常に美しく、パステルカラーの建物を見るだけで心がとても晴れやかになる。

 教会の側にあるコシチェルナ通りから南へ、ザチシェ通りに入ると中世の市壁も見ることができる。この街の起源はポーランドが建国された10世紀にまで遡ることができ、13世紀初頭にはボレスワヴィエツという城が建設され正式に街として認められた。14世紀から第二次世界大戦が終結するまではチェコ、ハプスブルグ、プロイセンに支配されていたが、その中でもボレスワヴィエツはヨーロッパ有数の陶器の街として著しく発展していったのだ。

 陶器の製造が始まったのは13世紀の終わり頃だと言われている。中世から良質な粘土層があることで知られ、今やボレスワヴィエツ陶器の形状デザインは2000種を超える勢いだ。毎年8月になると大規模な陶器祭りが開催され、年々多くの観光客が足を運ぶようになった。もちろん、日本人も家族連れやツアーでやってくる。少しおかしな話だが、この時ばかりは首都ワルシャワや第二都市のクラクフよりもボレスワヴィエツで日本人を見かける割合の方が高い。

アトラクションと化した陶器

 ボレスワヴィエツに訪れる観光客は、陶器の買い物に半日以上かそれ以上の時間を費やする。ヨーロッパ方面からは自家用車で陶器店巡りをする人が多いが、ボレスワヴィエツ駅周辺には徒歩圏内で訪れることができる店も豊富にある。

 駅の裏側にあるコシチューシュキ通りには工場直営店やプライベートで陶器を販売している店が5店舗以上とあるので、ぜひ歩いてみてほしい。道を真っ直ぐ進んでいくと、陶器の写真や看板、アトラクションと化した陶器そのものをあちこちで見かけるだろう。土曜日は営業時間が平日より短くなり、日曜日では営業していない店もあるため平日に訪れるとゆっくり買い物を楽しむことができる。

おすすめの陶器店CER-FER

 こちらの "CER-FAR" という店では、様々な陶器工場の陶器を取り扱っている。広い店内には所狭しと床にまで商品が置かれてあり、じっくり見ていると1時間はすぐに過ぎてしまうかもしれない。店員も親切で、気になる陶器が見つからない場合は写真を見せると、商品があるかどうか、ない場合はどこの店にあるかまで素早く教えてくれた。基本的にどの店でも並んであるものしか在庫はないのだが、「この柄のこういった形を探している」と伝えると快く対応してもらえることが多い。しかし、できれば自分でよく探してから尋ねるようにしたい。

今回購入したボレスワヴィエツ陶器

UNIKATのマグカップ

 こちらは今回のボレスワヴィエツ訪問で私が購入した商品だ。一部は熟練の職人が絵付けした陶器で裏には職人のサインと "UNIKAT" というスタンプが押してある。こういったものは日本では現地の3~4倍以上の値段で売られることも少なくないが、現地では驚くほど手頃な値段になる。値段は柄によって幅があり、スタンプのみのシンプルなデザインであればあるほど安い。一般的には花や複雑な模様が描かれていると高くなるのだが、一見シンプルでも小さなスタンプが全面に押されているものだと値段は上がる。それぞれが個性のある美しいデザインのため、同じ形でもつい色んな絵柄を集めたくなるのがボレスワヴィエツ陶器の魅力のひとつかもしれない。

 陶器の形も平皿や角皿、ボウル型などスタンダードなものはサイズが豊富にあり、他にもフチの部分が波形になっているものや魚の形になっているもの、ポットやバター、卵を入れる容器、スプーンやフォーク、調理器具までもが揃っている。見ているだけでも楽しいのだが、この品揃えの良さからもボレスワヴィエツ陶器がどれほど人気であるかお分かりいただけるだろう。

最近人気があるオーバル型

 ボレスワヴィエツ陶器の人気の理由はデザインだけではない。オーブンや電子レンジ、食器洗浄機にも対応しているという丈夫さと機能性、しかもひとつひとつが職人によるハンドメイドだからこそ愛着を持って使うことができる。その利便性と様々なデザインは多くの人を魅了し、現在では日本や韓国をはじめ、欧米各地から毎日この小さな街まで人々が買い付けに来る。日常的に使う食器にはこだわりを持ちたいというのは女性や主婦ならではの願望だ。ポーランド南西部に訪れるのであれば、ボレスワヴィエツの綺麗な街並に癒されつつ陶器選びも心ゆくまで楽しんでみてはいかがだろうか。

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(文・写真 カスプシュイック綾香)

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