世界美食紀行

やっぱりすごいぞ、カリスマ“タイ料理研究家” タイ(4)

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2017年3月21日

タイの寺院をモチーフにした「ナーム」のダイニング。この夜は「アジアのベストレストラン50」授賞式直後だったため、各国のシェフや評議員も来店していました。バースデーを祝うファミリーやハネムーンのカップルも多く華やいだ雰囲気です

 その人がせかせかと足早に姿を現した瞬間、静寂が訪れました。それまで笑いさざめいていた着飾った男女の視線を一身に集めているのは、無精ひげにジーンズというこの場でもっともカジュアルな服装の男性。デイヴィッド・トンプソンさんです。

現在はオーストラリアとタイの架け橋となるべく両国を拠点として活躍するデイヴィッド・トンプソンさん。タイ全土を回りタイ人シェフだけでなく、地方の村の料理上手なお母さんやおばあちゃんといった人とも親交を深め、タイ料理を系統立てて研究しています

 彼が手がけるバンコクのタイ料理レストラン「ナーム(nahm)」は、今年の「アジアのベストレストラン50」(「アジアのベストレストラン50」授賞式はお祭り騒ぎ タイ(1))で5位にランクイン。この賞が始まって以来変わることなく上位に入賞し続けている世界的な有名店です。この夜も入れ替え制で2回転してどちらも満席。万が一のキャンセルを求めてロビーで待つカップルが2組いましたが、残念ながら空席は出ませんでした。

デイヴィッド・トンプソンさんが復活させたといわれるシグネチャーディッシュのひとつマーホー。おもてなしとして最初に出される指でつまむおつまみです。いまではあちこちのレストランで見かけるようになり、進化系(バンコクで次にくるレストランは? タイ(2))も登場しています

 そんな貴重なテーブルで2度めに味わう(“アジアで最高”のレストランへ行ってみた タイ(3))「ナーム」の料理はといえば。レモングラスやカフィアライム(コブミカンの葉)、ガランガル(ショウガっぽい根茎)、ホーリーバジルといったタイらしい香りがふんだんに使われています。一般的な食堂で味わうタイ料理は、さまざまな食材や調味料を混ぜ合わせ、幾重にも重なった味や香りがいちどきに押し寄せるような存在感がありますが、「ナーム」の味や香りはひとつひとつが磨き上げられ、ときに調和し、ときに個々それぞれが鋭く迫ってくる感じ。調味料の配合は伝統料理を継承しているだけあって、特に南部からインスパイアされた辛い料理はきっぱりと辛い。そしてココナツミルクやクリームなどを使ったこってりした料理でさえ、後味は「透明感がある」と言いたいほどすっきりしています。そう、これこれ。これが食べたかったんだ。

「ナーム」の前菜4種類。ひとつひとつが完成された料理でありながら、シェフおすすめの順番で味わうと、後味に次の料理が重なってさらに奥行きを増していきます。アラカルトではこういったしかけを楽しめないので、タイ料理初心者という人ならセットメニュー(コース料理)がよさそうです

 「タイ料理界に革命を起こした」と言われるほど、かつてはイノベーティブなスタイルに見えた「ナーム」の料理。ですが数種類のおかずが一度に運ばれ、銘々皿にご飯をよそってそこにおかずを取り分けるファミリースタイルや奇をてらわない盛り付けなど、いまではむしろオーセンティックに感じられます。世界のガストロノミーの進化といったら、ほんとに目をみはるほど早いのですね。

デイヴィッド・トンプソンさんも、今年「アジアのベストレストラン50」を三連覇したインド人のガガン・アナンドさん(「アジアのベストレストラン50」授賞式はお祭り騒ぎ タイ(1))も口をそろえていわく「屋台料理なくしてタイ料理は語れない」。高級レストランだけでなく地元の人たちに混ざっての屋台体験は外せません

 さて、いきなり話は飛びますが、友人と海外旅行に出かけるという古い女友だちから、こんな指摘を受けました。いわく「行きたいレストランの予約が取れた日に合わせて海外旅行を計画するのは、ごく一部の人だと思う。普通の人たちはまず自分の仕事を調整して友だちと休みを合わせ、それからレストランや観光を手配するはず。とはいえ1度くらい有名なお店にも行ってみたい。そんな私たちでも行けるお店はないの」。

「都会のウェルネスリゾート」がコンセプトの「コモ メトロポリタン バンコク」のプール。右手の水盤の奥が「ナーム」のテラス席で、その先がダイニングになっています。館内にはジェットバスやサウナ、フィットネス施設が完備され、ヨガや太極拳など無料の日替わりクラスもあります

 そんな彼女たちにおすすめしたのが、「ナーム」が店を構えるホテル「コモ メトロポリタン バンコク」の宿泊パッケージ。「バンコクのレストラン文化を牽引(けんいん)してきた先駆者として、より多くの人にタイ料理の魅力を伝えたい」というデイヴィッド・トンプソンさんのリクエストを受け、「バンコクやナームを初めて訪れる方でも、予約のストレスなくお料理を楽しんでいただきたい」と、「ナーム」のシグネチャーメニューを中心に構成されたコース料理がつく宿泊パッケージをつくったのです。

朝食はサラダやフルーツといった冷たいものはブッフェから、温かいメニューは注文式です。タイ料理やアメリカンブレックファーストのほか「スパメニュー」には「エッグホワイトのオムレツ」や「そば粉のパンケーキ」「アボカドときゅうりとトマトのライ麦トースト」などヘルシーメニューがずらり

このプランの何がすごいって、「ナーム」の予約が希望日に取れること。さらにこのホテルはウェルネスに力を入れていて、技術力の高さで有名な「コモ シャンバラ スパ」はあるし、朝食はヘルシーなスパメニューも用意されているし、何かと女子旅向けなのです。ちなみにお隣は絶景ルーフトップバーで有名な「バンヤンツリー バンコク」で、夜景を眺めつつ夜遊びしても、歩いて帰って来られるというわけ。

タイに来て「コモ メトロポリタン バンコク」に泊まったら、絶対欠かせないのがボディーマッサージ。世界共通の「コモ シャンバラ」ブランドのオリジナルのアロマオイルなどを使ったマッサージは極楽のひとこと。施術前後にサウナなどで身体を温めるのがおすすめだそうで、時間に余裕を持って訪れたるのがよさそうです

 「シェフと知り合いのようなツテやコネがない一般人は、有名店で食事をするなんて無理」とちょっぴりすねていた彼女たちが、「ナーム」の料理にどれほど感動したか。写真つきでリアルタイムに送られてくるリポート(WiFi無料特典があるため)が、あまりにも楽しげで、それを受け取った私まで幸せな気持ちになりました。

「コモ メトロポリタン バンコク」の「ナーム」ディナー付きプランの客室。女子旅ならツインルームも選択できます。私はバッグ置きにしてしまいましたが、実は手前にあるのはメディテーション(瞑想)用スペース。全室にヨガマットも備えつけられ、早起きしてメディテーションやヨガをするライフスタイルがおすすめだそう

■MEMO:旅と予約

 文中でご紹介した「ナーム」の予約が必ず確保される宿泊プランが「ナーム エクスペリエンス」です。「コモ メトロポリタン バンコク」の宿泊に代表的なメニューを含む「ナーム」のディナーコース(ドリンク別)と朝食、WiFi、ウェルカムティが付いて2名で9770バーツ(約3万7100円)〜、シングルユースは7270(約2万7600円)バーツ〜。バンコクの物価を考えるとけして安くはありませんが、ふたりで行けばひとりあたり約1万8550円。たまの贅沢として許容範囲ではないでしょうか。

■取材協力:

タイ国政府観光庁

エアアジア

シークレット・リトリーツ(英語)

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PROFILE

江藤詩文(えとう・しふみ)トラベルジャーナリスト

江藤詩文

トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」シリーズ3巻。「江藤詩文の世界鉄道旅」を産経ニュースほかで連載中。

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