あの街の素顔

世界で最も低い大地、死海沿岸はじりじりと暑い イスラエル(3)

  • 2017年4月18日

エルサレムから車で15分ほど走ると、見渡す限りの砂漠だ。ベドウィン族の少年が観光客向けにらくだを連れていた

 地中海沿いのテルアビブから東に車を走らせ、小高い山の頂にあるエルサレムを過ぎると、急に見渡す限りの砂漠が広がる。標高約700メートルの古都から東へとただひたすら下ると、車の外では気温がぐんぐんと上がっていく。途中、乾いた大地にしがみつくように粗末なトタンの小屋がぽつりぽつりと並び、目を凝らすと、羊の群れやロバに乗った人がうごめいているのが見える。ベドウィン族だ。

 海抜マイナス400メートル付近まで下るとゴツゴツとした平地が開け、照りつける太陽に遠くの山々が霞む。車から降りると熱気に押し付けられているようだ。振り返ると、赤茶色に切り立つ崖が壁のように立ちはだかっていた。ついさっきまでいたエルサレムとは別世界の、違う惑星にきたような光景だ。

砂漠のオアシス、ジェリコの街を支えるわき水。奥に見えるのは紀元前8000年の遺跡

一面緑が広がるジェリコの街

 ここから、世界一標高の低い街、そして世界一古い街だとされるジェリコへと向かう。左に折れて北へ走ると、カラカラの大地には異様なほど、街が青々とした茂みに包まれている。澄んだ湧水の恩恵を受けて古くから農業が盛んな地域で、まさに砂漠のオアシスだ。街の外れには約一万年前の遺跡、テル・アッスルターンがあるが、この辺りの鬱蒼とした緑は、砂漠を歩き続けた人達にとって、さぞ感動的な光景だったろう。「野菜ならトマトでもキュウリでも、何でも沢山とれるよ」と、遺跡を案内してくれた男性は胸を張った。

ジェリコの街角でのんびりとゆらめく土産物屋のスカーフ。興味を示すと、露天商のオジさんがめくるめく営業トークを展開する

ねっとりとした触感と甘さの新鮮なデーツは、後を引く美味しさ

 訪れた時期(9月初旬)はデーツ(ナツメヤシ)のシーズンで、ジェリコ周辺のヤシの木にたわわに実っていた。枝から摘みとった薄茶色の実は日を浴びて暖かく、ねっとりと甘い安納芋のようで、あと引く美味しさだ。ついつい、3つ、4つと摘んでしまう。ジェリコの土産物屋の軒先では、年配の男性が慣れた手つきで収穫したデーツを選り分けていた。自分の背丈よりも高いこのヤシの葉で器用に駐車場の掃き掃除をしている男性の姿に、人々の暮らしに根ざした木であることがしのばれる。

コバルトブルーの死海。民営のビーチはリゾートさながら

 すこし南に走ると、コバルトブルーの死海が広がる。向こう岸は隣の国、ヨルダンだ。死海の水は、塩分濃度が海水より10倍ほど高いために浮力が強く、足が底につかないほど深い場所でもふわふわと立っていられる不思議な湖である。(次ページへつづく)

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