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信長と加賀一向一揆の最後の激戦跡へ 鳥越城(1)

  • 文・写真 萩原さちこ
  • 2017年5月15日

加賀一向一揆の最後の砦(とりで)、鳥越城

 金沢市街地から、手取川を横目に車を走らせること約50分。静かな山あいの白山市三坂町(旧鳥越村)に、鳥越城はある。小松方面へ通じる国道360号線が県道44号線に合流する地点から、北側に突き出す山がそれだ。手取川とその支流である大日川が合流する、標高312メートルの鳥越山の丘陵先端部に築かれている。ふもとから見上げると高い山だが、案内板のある登城口から山頂までは車道が整備されており、城内の駐車場まで一気に登れて苦労はない。

西側から見た鳥越城の遠景。手取川と大日川に挟まれた標高312メートルの鳥越山に築かれている

 鳥越城は、織田信長に最後まで抵抗した加賀一向一揆の最後の砦(とりで)として知られる。室町時代後期から戦国時代後期までの約100年間、「百姓の持ちたる国」といわれる自治体制を打ち立てた一向一揆が、終焉(しゅうえん)を迎えた地である。その歴史的価値と遺構の残存度などから、大日川対岸の二曲(ふとげ)城とともに、「鳥越城跡附二曲城跡」として国の史跡に指定されている。

鳥越城からのぞむ二曲城。中央の山、左側の頂上にある平坦面が主郭にあたる一の曲輪(くるわ)

 城を訪れる前に、まずは白山市立鳥越一向一揆歴史館を訪れるのがおすすめだ。一向一揆の歴史や時代背景がよくわかる映像シアターもあり、予習になる。歴史的な舞台となった城を訪れるときは、事前に少し知識を入れておくと、実際に歩いたときにイメージを膨らませやすく、臨場感が増すものだ。

白山市立鳥越一向一揆歴史館。加賀一向一揆の歴史についてもわかりやすく学べる

 一向一揆とは、応仁の乱後の15世紀末から16世紀末に、近畿、東海、北陸で浄土真宗本願寺派の武士や百姓が起こした領主への反乱である。宗教指導者が戦国大名の覇権争いに介入した結果、多数の門徒が犠牲となった、というネガティブなイメージを持ちがちだが、実際には厳しい環境下で生き抜くために領主に対抗せざるを得なかった人々の物語がある。

 15世紀末、加賀では浄土真宗本願寺の8代法主・蓮如上人の布教活動により急速に門徒が増えた。「百姓の持ちたる国」が出現したのは、1474(文明6)年の「文明一揆」、それを発端とする1488(長享2)年の「長享一揆」がきっかけだ。文明一揆の際、蓮如はあくまで信仰は政治と結びついてはならないと説き武力介入を制し続けたが、信仰心によって結束しなければ生き延びられない事情がこの地にはあったようだ。

 長享一揆の後、本願寺門徒衆は組織体制を確立し、加賀における支配力を強めていった。1546(天文15)年には本願寺の加賀別院として金沢御堂が建てられ、門徒衆の勢力は、織田、上杉、朝倉氏などの戦国大名と肩を並べるほどに強まった。天下統一を目指す信長はそれを許さず両者は激突し、1570(元亀元)年から石山合戦が始まる。当初は信長に対抗できた門徒衆だが、上杉謙信、武田信玄という有力武将の死によって信長の力は強まり、本格的に門徒衆制圧に乗り出すと、苦戦を強いられるようになる。

中の丸から見た本丸方面。復元された本丸門が見える

 鳥越城は、1570年の石山合戦の開戦に際し、白山麓本願寺門徒「山内衆」の拠点として築城されたと考えられている。1580(天正8)年に顕如が信長に屈服し、石山合戦は信長の勝利で終結するのだが、信長配下の柴田勝家により鳥越城が落城した後も、山内衆を束ねていた鳥越城主の鈴木出羽守は織田勢に抵抗を続けた。

 やがて、佐久間盛政軍と山内衆との間で三度にわたって激戦が行われることとなる。山内衆は一度は奪われた鳥越城を奪還するなど孤軍奮闘を続けたが、1582(天正10)年3月、ついに力尽きた。生け捕りとなった300人ほどが手取川の河原で磔(はりつけ)にされ、以後、数百年間は周辺の村々から人の姿が途絶えたと伝えられている。

本丸虎口と中の丸。中の丸の南には二の丸がある

 鳥越城は、山頂の本丸を中心として、中の丸、二の丸、後二の丸、三の丸、後三の丸が尾根筋に配置された山城だ。曲輪間は空堀で分断され、西側には腰曲輪が置かれている。南方の鳥越坂方面に向かうと2000平方メートルの平坦地に至り、ここまでが城域に指定されている。

二の丸と三の丸を隔てる堀切と土橋。城域はさらに南に続く

(つづく。次回は5月22日に掲載予定です)

交通・問い合わせ・参考サイト

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鳥越城(白山市立鳥越一向一揆歴史館)

北陸鉄道「鶴来」駅から加賀白山バスで約30分 ほか
076-254-8020(白山市立鳥越一向一揆歴史館)

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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