絵本のぼうけん

雨からはじまる旅、川へ

  • 文・長嶺今日子
  • 2017年6月20日

  

  • 『あめ』作:イブ・スパング・オルセン 訳:ひだにれいこ(亜紀書房)

  • 『かわ』作:加古里子(福音館書店)

  • 『日本の川 あらかわ・すみだがわ』作:村松昭(偕成社)

  • 『かわ』作:鈴木のりたけ(幻冬舎)

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 雨の季節は、外遊びの時間もぐんと減り、子どもも大人も退屈になりがちです。でも、そんな梅雨時こそ絵本の出番。ふだんは寝る前に絵本を読み聞かせている家庭が多いようですが、仕事と家事に追われた一日の終わりに絵本を読むのは、睡魔との闘いだというお母さんや、早く寝てほしいとひそかに思いながら読んでしまうという声も。

 雨降りの日には、ぜひお昼間の時間にゆったりと絵本の時間を過ごしてみてください。お布団の中での読み聞かせよりも、アクティブな子どもたちからは、楽しいひらめきや素朴な疑問が出てきますし、大人もじっくり耳をかたむけることができます。今回は、雨から広がる絵本の世界をご紹介します。どの絵本も小学校入学前後の子どもから大人まで楽しめる内容ですが、小さな子でもその絵から、自然の大きな営みを感じることができるでしょう。

雨つぶのふしぎな冒険

 「雨はどこから降ってくるの?」「集まった雨はどうなるの?」という子どもたちの質問に、絵本好きの方なら、ロングセラー『しずくのぼうけん』(福音館書店)の表紙がすぐに浮かぶかもしれません。ここにもう一冊、1963年にコペンハーゲンで出版された『あめ』が、日本・デンマーク国交樹立150周年を迎えた今年、日本で翻訳出版されました。デンマークの子どもなら誰もが知っていると言われる絵本作家、イブ・スパング・オルセンの作品です。雨つぶの男の子2人「ボトボト」と「バラバラ」が、どんな時に、どうやって空の雲から落ちてくるのかをわかりやすく教えてくれる物語。雨が人間に嫌われる時や、喜ばれる時など、雨つぶの視点から私たち人間の営みをユーモアたっぷりに観察しています。

雨から川へ、そして海へ

 山に降った雨は、次第に小さな流れを作って、谷川になり、やがて大きな川になり、広い海へとつながっていきます。加古里子(かこさとし)さんの『かわ』(福音館書店)では、一つの川をめぐる自然と人間の営みがページいっぱいに広がります。実は、この絵本の出版当時(1966年)には、急速な開発による水質汚染などの状況を記した一文がありました。しかし長年の環境保護の結果、川が本来の姿に戻ったという著者の思いから、2016年の83刷からはその記述は削除されています。この絵本は、「こどものとも」創刊60周年を記念して、広げると7メートルにもなる絵巻じたての読み物としても出版されました。

もっと知りたい、身近な川

 日本の川を空から見ていく鳥瞰(ちょうかん)地図絵本「日本の川」シリーズ(偕成社)は、日本各地の川の源流から河口までを、詳細に描いた作品です。『日本の川 すみだがわ・あらかわ』では、秩父の山奥から流れ出し、埼玉県と東京都を抜けて、東京湾にそそぐ全長173キロの荒川と途中でわかれる隅田川を、奥秩父の神さまとお使いの女の子が案内します。オオカミが守り神の三峯神社、浦山ダムや河岸段丘(いずれも秩父市)、荒川の名前の由来や、元荒川だけにすむめずらしい魚、ムサシトミヨも登場します。ページごとに、川の全体のどの部分を見ているのかがわかるように小さな地図もあり、空を旅するパイロット気分になれる絵本です。シリーズ全6巻で、多摩川、筑後川、千曲川・信濃川、吉野川、石狩川、淀川、それぞれの川の冒険を楽しむことができます。

魚になって川にもぐってみよう

 空から見た川には、どんな生き物がすんでいるのでしょうか。『かわ』(幻冬舎)は、最初のページから子どもたちがぐっと引き寄せられるダイナミックな絵本。源流から渓流、上流から里川へ、そして湖、沼、田んぼ、河口まで、それぞれの場所にすむ生き物145種類が、まるで読んでいる自分が魚になったかのような視線で、リアルに勢いよく描かれています。残念ながら、都会に育つ子どもたちにとっては、絵本のページのようなアングルで、川にもぐり、水中を観察する機会は減ってしまいました。でもこの絵本を通してすばらしい川の世界に触れていたら、いつかそのチャンスが来た時には、小さな冒険がきっとはじまるでしょう。

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PROFILE

長嶺今日子(ながみね・きょうこ)

子ども一人ひとりの個性に合わせて絵本を選び届ける「ブッククラブえほんだな!」主宰。子育て支援のイベントやライブラリーの選書も手がける。また、多言語による読み聞かせ活動にも長年携わっている。「ブッククラブえほんだな!」

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