絵本のぼうけん

世界文化遺産「富士山」を知る絵本

  • 文・長嶺今日子
  • 2017年8月1日

  

  • 『富士山に のぼる』 作:石川直樹 (教育画劇)

  • 『富士山大ばくはつ』 作:かこさとし (小峰書店)

  • 『こうさぎとほしのどうくつ』 作:わたりむつこ 絵:でくねいく (のら書店)

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 8月11日は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とし、2016年に施行された新しい祝日、山の日です。日本で一番高い山は?と聞けば、富士山!と、小さな子も、自信を持って答えてくれます。世界文化遺産にも登録され、日本中の子どもたちだけでなく、海外の子どもたちも知っている富士山。今回は、そんな富士山にまつわる絵本を紹介します。

富士山はなぜ美しい?

 『富士山大ばくはつ』(小峰書店)は、富士山の成り立ちから、長い歴史における人々との関わり、そして植物や昆虫などの自然まで、富士山をまるごと紹介する絵本。数十万年の時をさかのぼり、今の美しい姿ができるまでの大地の活動を解き明かしてくれます。また江戸時代にブームとなった「富士講」とよばれる信仰のこと、「宝永の噴火」(1707年)の後は噴火がなかったため、広重や北斎の浮世絵でも美しい雄大な山の姿が描かれていることなど、富士山が生み出した多様な文化についてもわかりやすく解説。最後のページにある著者・かこさとしさんからのメッセージからは、富士山への思いが伝わってきます。「富士山が、長いあいだわたしたちをなぐさめ、はげましてくれたように、こんどは私たちが富士山のことをよくしらべ、大自然のふしぎをしっかり勉強するばんです」(本文より)

いつかのぼってみたい富士山

 夏休みに入って、すでに夏山登山やハイキングに挑戦した子もいるかもしれません。富士山には吉田(山梨県側)、須走、御殿場、富士宮(いずれも静岡県側)の四つの登山ルートがあり、いずれも9月10日まで開山しています。夏休みには子どもが登る姿も見られますが、登山ツアーなどでは小学4年生以上に限るケースが多いようです。また最近は、十分な装備や休息をともなわない「弾丸登山」が増えており、事故や高山病のリスクが高まることから、地元自治体が自粛を求めています。子どもと一緒に富士登山をする際には、十分な計画と準備が欠かせません。

 『富士山に のぼる』(教育画劇)は、雄大な富士山を感じることのできる写真絵本です。著者は、2001年に七大陸最高峰登頂を達成した探検家であり、写真家の石川直樹さん。冬と夏、まるで違うそれぞれの富士山の表情を、子どもにもわかりやすいことばと臨場感たっぷりの写真で伝えてくれます。さらに、青木ヶ原の樹海、氷穴、溶岩層からの湧き水など、富士山を取り巻くさまざまな景色がおさめられ、壮大な自然の営みを知ることができる一冊になっています。巻末で紹介される冬の富士登山のための石川さんの装備一式は、子どもの冒険心をくすぐるでしょう。

夏の洞窟を探検してみよう

 2013年に登録されたユネスコ世界文化遺産「富士山」は、山岳単体ではなく、周辺にある25カ所の構成資産を含んでいます。西湖、本栖湖、河口湖、山中湖、精進湖の富士五湖もその一部。なかでも、かつて「西ノ海」とよばれていた西湖周辺には、富士山噴火の時に形成された溶岩洞窟があり、鳴沢氷穴、富岳風穴は観光スポットとしても人気です。ひんやり涼しく暗い洞窟探検は、子どもたちにとってはとびきりの夏の体験になるでしょう。

 絵本『こうさぎとほしのどうくつ』(のら書店)のページを初めてめくった時、筆者の頭の中には、すぐに西湖の風景が浮かびました。夏の湖で楽しくのんびり遊ぶ子うさぎたち。突然の雷雨に、急いで逃げ込んだ岩穴は長い洞窟の入り口。奥に進むにつれ、天井がだんだん低くなって、出口があるのか心配になり、さらに持っていたランタンを落としてしまって真っ暗に……。次の瞬間、子うさぎたちは夜空の星のように、またたく光に出会います。

 この物語に出てくる湖や洞窟は架空の場所とのことですが、描かれている水と緑の風景、その静かなたたずまいは、まるで富士山麓(さんろく)とつながっているかのようです。

<旅のメモ帳>

(1) 富士登山についてのあらゆる情報は、富士登山オフィシャルサイトで確認することができます。また世界文化遺産「富士山」についてもっと知りたくなったら、富士山世界遺産センター(富士河口湖町)、ふじさんミュージアム(富士吉田市)などがおすすめです。

(2) 『こうさぎとほしのどうくつ』の原画展が、銀座の教文館ナルニア国にて開催中です。8月29日(火)まで。詳しくはのら書店HPにて。

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PROFILE

長嶺今日子(ながみね・きょうこ)

子ども一人ひとりの個性に合わせて絵本を選び届ける「ブッククラブえほんだな!」主宰。子育て支援のイベントやライブラリーの選書も手がける。また、多言語による読み聞かせ活動にも長年携わっている。「ブッククラブえほんだな!」

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