にっぽんの逸品を訪ねて

上杉の城下町で“米沢らーめん”と“米沢牛”の二大名物を味わう

  • 山形県米沢市
  • 2017年8月8日

あっさりとして食べやすい米沢らーめん(東部食堂にて)

 鶏ガラと煮干しをベースにした品のよいスープと、手揉(も)み縮(ちぢ)れ細麺のぷるぷるの食感。その絶妙の組み合わせから、毎日食べても飽きないと評されるのが山形県米沢市の“米沢らーめん”だ。

 約100年の歴史があり、市内に店は100軒以上。全国にご当地ラーメンは数々あるが、ラーメンで地域団体商標登録されているのは和歌山と米沢だけだという。

 「米沢の人は、旅行から帰ったらまずラーメンを食べる」「お客さんが来たら、ラーメンの出前をとってふるまうのが普通」と聞く。地元で愛される米沢らーめんの故郷を訪ねた。

歴史ファンの訪れも多い上杉氏の城下町

 山形県最南部の米沢市は、奥羽山脈や吾妻連峰など2000m級の山々に囲まれた盆地に広がる。

 江戸時代の約270年間は、上杉氏の城下町として発展。市中央部の米沢城本丸跡には、米沢上杉家の藩祖である上杉謙信をまつった上杉神社がたたずみ、約1㎞北西には、歴代藩主の廟(びょう)屋が立ち並ぶ国指定史跡「上杉家廟所」がある。

荘厳な趣の上杉家廟所

 この日、案内役をかってでてくださったのが、市内にある製麺4社のうちの1社、岸製麺の社長、牧野元さんだ。

 米沢らーめんの麺には大きな二つの特徴があるという。一つは、全国でもめずらしい手揉み縮れ細麺という形状。もう一つは“米沢の黒中華”とよばれる麺の色だ。

 「説明はあとにして、まずは味わってみましょう」ということで向かったのが、米沢駅から徒歩5分の東部食堂。ご夫婦で約35年営むお店だ。

黄金色の澄んだスープと色も形も独特の麺

 厨房(ちゅうぼう)では大鍋で麺をゆで、あらかじめ醤油(しょうゆ)を入れたどんぶりに煮干しと鶏ガラをベースにした澄んだスープを注ぐ。

麺のゆで時間は気温や湿度で異なる。タイマーは使わず、自分の感覚で調整する

 開店以来、研究し続けてきたというスープは、煮干しが効いて、うまみが強いのにあっさりとしておいしい。麺はコシがあり、ぷるぷるとくちびるではねる感触がある。

 「米沢らーめんの麺の最大の魅力が、この“くちびるざわり”なんです」と牧野社長。のど越しでもなく、舌ざわりでもなく、くちびるざわりとは?

 米沢らーめんは、水分を多く含んだ「多加水(たかすい)」といわれる麺を手揉みし、熟成させることで独特の食感が生まれる。スープを含んだこの縮れ細麵をすすると、なんとも心地よくくちびるにあたり、これを米沢の人たちは“くちびるざわり”とよんでこよなく愛する。「ラーメンはこうでなくては」という人が多いそうだ。

縮れた細麺にスープが絡む

 多加水麺は、麺に含まれる水分量が多いので、のびにくくするために太麺にすることが多く、スープもそれに合わせた濃い味やこってり系になることが多い。

 けれど、米沢らーめんは、多加水麺ながら細い。のびにくくするために、他の地方ではあまり使わないパン用の粉を使う。そのために少しくすんだ色になり、“米沢の黒中華”といわれる色になるそうだ。

東部食堂を営む酒井孝悦(たかよし)さんと幸子(ゆきこ)さんご夫妻

“手揉み”でなければ米沢らーめんではない

 特別に岸製麺の工場内を見学させてもらった。

 米沢らーめんを名乗るには、いくつかの条件があり、その一つが、職人が一玉一玉、手もみをかけて縮れをつけた細麺であること、だという。

 縮れがあるからこそ、細くてもスープが絡み、独特のくちびるざわりが生まれる。

岸製麺の社長、牧野元さん。工場では麺は最初、ストレートに切り出される

 麺は、切り出されたときはストレートだが、職人の手にかかるとみごとな縮れ麺に変わる。両手で一玉ずつ持って持ち上げ、空気を入れてほぐし、次にテーブルの上でよく揉む。それをリズミカルに繰り返す。

ほぐして揉んでを繰り返す手揉みの工程

 手揉みを体験させてもらったのだが、簡単そうに見えて、とても難しい。「小指のほうから絞るように。もっと強くて大丈夫」とコツを教えてもらうのだが、思うようにいかず、ほとんど縮れなかった。熟練がいる作業だと実感した。

手揉みの工程の前後では縮れ具合がこんなにも違う

 「スープがあっさりしていたから細麺になったのか、細麺だったからこのスープになったのかは分かりませんが、長い年月をかけ、多くの人の工夫と努力が積み重なって、現在の米沢らーめんになったのだと思います」と牧野社長。

 100年の歴史が、絶妙のコラボレーションを生み出したのだ。

甘い脂がふわっととける米沢牛のすき焼き

すき焼き用の米沢牛のモモとリブロース

 米沢名物といえば、忘れてはならないのが“米沢牛”だ。神戸牛や松阪牛と並ぶ全国屈指のブランド牛で、霜降りのきめ細やかさは芸術品と賞される。

 上質な肉を良心的な価格で食べられる、と教えてもらったのが「米沢牛亭ぐっど」。これぞ米沢牛といえる牛肉を厳選し、格安で提供しているという。

おいしい食べ方を説明してくれる

 「特選米沢牛すき焼き」のモモとリブロースを注文すると、女将さんが食べ方を説明してくれる。

 「鍋に野菜を入れ、割り下を注ぎましたら、しゃぶしゃぶのように肉を数回くぐらせて召し上がってください」とのこと。

 溶き玉子につけて口に入れると……、やわらかい。脂が甘く、とろけるようであることは言うまでもない。

 昼はラーメン、夜は牛肉。グルメな旅が楽しみたい方は、ぜひ米沢へ。

交通・問い合わせ

・東部食堂 0238-23-25222
11:00~18:00/月曜(祝日の場合翌日)休/米沢駅から徒歩5分

・岸製麺 0238-23-1162
http://kishiseimen.com/

・米沢牛亭ぐっど 0238-22-6729
http://yonezawagyutei.com/

・米沢観光コンベンション協会 0238-21-6226
http://yonezawa.info/

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PROFILE

中元千恵子(なかもと・ちえこ)フリーライター

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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