あの街の素顔

欧州定番のリゾート、バルト海に面するポーランド北部グダニスクで夏を満喫

  • 文・写真 カスプシュイック綾香
  • 2017年8月9日

 ポーランドには東西南北と見どころが点在しており、中でも旅行者に人気の都市が首都ワルシャワと古都クラクフである。しかし夏にぜひ訪れたいのが、今回紹介するポーランド北部の港町グダニスク。バルト海に面する琥珀(こはく)の名産地であり、ヨーロッパ各国からの観光客でにぎわうリゾート地として知られている。ワルシャワからは高速鉄道で2時間50分の距離だ。

 グダニスクは他のポーランドの街と比べてやや特異な歴史を持ち、港町だけあって旧市街のつくりも興味深い。中世には北海、バルト海沿岸の商業圏を支配したハンザ同盟の加盟都市となり、交易の中心地として非常に豊かな時代を築いてきた。最も繁栄を極めたのは16世紀と17世紀であり、この頃はさまざまな国から多様な民族と宗教を受け入れている。

 その当時からグダニスクの街並みは色鮮やかで美しく、それはコペンハーゲンやアムステルダムなど他のヨーロッパの代表的な港町と少し似ているかもしれない。

旧市街の西にある「黄金の門」

 グダニスク旧市街への入り口は、17世紀前半に建設された「黄金の門」。

 この門から東へ伸びるドゥーガ通りをまっすぐ進んでいくと、やがて運河に面する「緑の門」に突きあたる。ちなみに黄金の門は黄金色ではないし、緑の門は緑色ではない。二つの門の間には数多くのアトラクションがあり、それらを巡っているだけで半日が過ぎてしまいそうだ。

ドゥーガ通りのドゥーガは「細長い」を意味する

 13世紀からあるこの通りには、グダニスクの文化と経済を支えてきた主要な建築物が並び、その色とりどりの風景には思わず目が釘付けになるだろう。グダニスクはかつてドイツ騎士団の支配下であったため、ドイツ語で“自由都市ダンツィヒ”と呼ばれていた。ポーランドと西欧の建築様式が見事に融合し、他の街にはないような独特な雰囲気が感じられる。

 少し歩いた先の右手に、ウプハーゲン邸というロココ様式の博物館がある。ここでは18世紀の商人の家にあった調度品や絵画、豪商の豊かな暮らしぶりを展示しているが、こういった博物館はヨーロッパの中でも珍しい。他にもついのぞいてみたくなる小さな博物館、凝った装飾が施された建物、ひと休みにぴったりなカフェが多く立ち並ぶ。

これまでに何度も修復されている旧市庁舎(右)だが、14世紀の部分もまだ残っている

 この通りで最も存在感を放つのは、旧市街で2番目に背が高い建物である旧市庁舎。

 1556年に大火事に遭ったが、そのときはグダニスクの全盛期であったため、内装を一層豪華に建て直された。

 第2次世界大戦で旧市庁舎のほとんどが破壊されたため、現在見ることのできる多くは戦後に一から作り直されたものだ。しかし、その完成度からポーランドの再現技術がいかに高いものであるかを感じとることができるだろう。

旧市庁舎の展望台から眺めるドゥーギ・マーケット

北に見えるのは、世界一大きいレンガ造りのゴシック建築教会である聖マリア教会

 旧市庁舎の中は歴史博物館となっており、83メートルの高さを持つ塔からは美しい旧市街を一望できる。西から東にかけて伸びるメインストリートのドゥーガ通りは「王の道」とも呼ばれ、かつて国王が数千人もの参加者を引き連れてパレードを行った。グダニスク市民の熱い歓迎もあり、当時は全長550メートルのこの通りを渡りきるのに8時間もかかったという。

 この塔に上ったのがちょうど14時だったので、時報の美しい鐘のメロディーを聴くことができた。

 テンポよく上れば、博物館にある塔の入り口からてっぺんまで7分ほどで到着するだろう。ところどころ休憩用ベンチが設けられており、休みながらゆっくり上ることもできる。

旧市庁舎のすぐ隣にあるネプチューンの像は街のシンボル

 さて、旧市庁舎を後にして運河のほうへ向かっていく。この辺りから通りの幅が広くなり、お土産屋さんやパフォーマンスを楽しむ人々でにぎわってきた。ここでまず目を引くのはグダニスクのシンボル、ネプチューンの像だ。かつてポーランド国王がグダニスクを訪れたとき、国王はネプチューンの顔が向けられている方向の建物に宿泊したと言われる。

 しかし、現地の人々がグダニスクのシンボルと言われて真っ先に思い浮かべるのは、勇ましいライオンの姿だ。15世紀から現在まで使われるグダニスクの紋章は2匹のライオンによって掲げられている。旧市街の至るところにある門、建物の外面、噴水などにも見られるこのライオンは、中世からグダニスクの平和を守り続けてきた。

時代によって商工会議所、裁判所として使われていたアルトゥール館

 ネプチューン像の真後ろにある白色の建物は、イギリスの伝説の君主、アーサー王に由来して名付けられたアルトゥール館。ポーランド語でアーサーはアルトゥールというのだが、アーサー王のことだと気付くのに少し時間がかかった。

 建物内にある二つのホールは荘厳で美しく、中央の天井からつり下げられたいくつもの大きな船につい目を奪われてしまう。

 さらに、ホールをよく見渡せば、周りの絵画もふつうではないことに気付くだろう。ところどころ鹿がいるのだが、なんとその鹿が飛び出しているのだ。擬人化された鹿もいて、周りにいた子どもたちも夢中になって色んな角度から眺めていた。

運河沿いに伸びるドゥギェ・ポブジェジェ通り

 マーケットの奥にある「緑の門」を越えて左に曲がると、ここがメインストリートではないかと思うほど観光客や地元の人々で溢れかえっていた。琥珀を売るお土産屋さんや、港町だけにシーフードレストランが軒を連ねる。

 運河には小型や中型の客船が停泊し、クルーズや水上トラムを楽しもうと長蛇の列が出来ていた。この運河はバルト海へと続いており、夏季限定の水上トラムには主に二つのルートがある。運河の真ん中を走って倉庫群や造船所跡を見ることができるので、歩き疲れたら乗ってみるのもいいかもしれない。

中でも海賊船のような船が観光客に一番人気

 今回は4日間の滞在でほぼすべての見どころを押さえることができたが、グダニスクを思う存分楽しみたいなら2泊はしたい。

 グダニスクは第2次世界大戦で大きな破壊を受けたため復元された街となるが、例外的に世界遺産暫定リストにも登録されている。今年7月にポーランドのクラクフで行われた世界遺産委員会では承認されなかったが、グダニスクが世界遺産の街となる日も近いかもしれない。

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PROFILE

カスプシュイック綾香 (カスプシュイック・あやか )

カスプシュイック・あやか

 2014年9月、23歳で結婚を機にポーランド南部の街グリヴィツェに移住。学生時代に一人で35カ国以上を旅し、ポーランドは移住前に3回訪れるほどお気に入りの国だった。移住2年目にポーランドの魅力や文化、歴史などを知ってもらうべくブログ「ポーランドなび」を立ち上げ、現在はクラクフとヴロツワフで観光ガイドをしている。ポーランドはマイナーな国というイメージを払拭することが目標。

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